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 列強8ヵ国の準ド級戦艦 (その1)

by:衛

前ド級戦艦からド級戦艦に移り変わる過渡期に極短い期間登場した準ド級戦艦というものに、艦船モデラーとして以前から興味を持っていました。
ド級戦艦という方向性に固まる前の、ある意味歪な進化を遂げたと言える準ド級戦艦に強い魅力を感じていたからです。
そして昨年、20世紀初頭の列強8ヵ国から準ド級戦艦を一隻づつ作るという連作をやってみました。
8ヵ国の選抜基準は、自国で戦艦を建造していることです。
時代の徒花とも言える二巨砲混載艦ですが、それだけに各国の建艦思想の違いなどが垣間見えて、なかなかおもしろい連作になったと思っています。

※準ド級戦艦とは
「前ド級戦艦が大型化・発展していく過程で、主砲と副砲以外に、17-25.4cmの中間砲(装甲巡洋艦の主砲クラス)を搭載するか、副砲自体が発展したもの」(wikipediaより)


イギリス戦艦キング・エドワードⅦ世(コンブリック 1/700)

準ド級戦艦の草分け的存在で、従来の前ド級戦艦の面影を色濃く残しています。
主砲は30.5センチ砲を前後に2門づつと標準的な編成ですが、中間砲は23.4センチ砲を片舷2門づつと、口径はともかく門数的にはいささか物足りない編成となっています。
しかし、これは最初期の準ド級戦艦であるがゆえで、後のロード・ネルソン級ではかなりの火力強化が見られます。
本当はイギリス代表はロード・ネルソン級にしたかったのですが、キット化されていなかったので本艦をエントリーしました。
しかし、準ド級戦艦を初期から後期まで体系的に見る上では、最初期の本艦を作ったのは良かったかも知れません。
キットはコンブリック中期の製品で、最近の製品のような精密感はありませんが、そこそこ組立てやすく、スタイルも良好な好キットです。
例によって、主砲身やマストは換装していますが、中間砲は特に変形もみられなかったので、そのままレジンパーツを使用しました。




ドイツ戦艦ブラウンシュヴァイク(HPモデル 1/700)

 本艦を準ド級戦艦として扱うことには、異論のある方も多いと思います。
もともとドイツは二巨砲混載には懐疑的で、ドイツには準ド級戦艦は存在しないという見方の方が大勢を占めます。
しかし、この連作からドイツを外すというのもなんですし、前述のwikipediaの説明にもギリギリ合致することから、本艦をエントリーすることにしました。
本艦の主砲は前後に2門づつという点は標準的ですが、口径が28センチと他国の艦に比べるといささか小さくなっています。
これは、ドイツ海軍が口径の大きさよりも速射性を重視していたことによります。
中間砲は装備しておらず、副砲は17センチ砲が片舷7門(計14門)です。
確かに二巨砲混載というには小さい砲ですが、副砲としては大型で、一般的な前ド級戦艦の副砲よりも強化されています。
キットはHPモデル製で、このメーカーのキット全般に言えることですが、全体的に細部のモールドが甘く、他社のキットと並べると若干見劣りがします。しかし、スタイルそのものは悪くなく、このメーカーでしかキット化されていないものも多いので、海外レジンキットを作る上では欠かせないメーカーでもあります。




アメリカ戦艦ヴァージニア(NIKOモデル 1/700)

世界的にも珍しい、二階建て砲塔を装備した戦艦です。
主砲は30.5センチ、中間砲は20.3センチと口径は標準的ですが、その配置は極めて特異です。
中間砲の片舷砲力6門を要求されたものの、片舷6門づつ計12門装備すると艦形が過大になるため、舷側に連装砲塔を1基(2門)づつ、首尾線上に2門づつ配置することにより、片舷砲力6門を実現しました。
特異なのは首尾線上の2門づつの配置方法で、主砲塔の上に背負い式配置にでもすれば良いものを、なぜか主砲塔そのものを二階建てにしてしまいました。
どうやら船体が前後に長くなることを嫌ったようですが、この方式は揚弾機構等に問題が多く、決して成功したものとは言えませんでした。
他国にこのような配置の例はありませんが、アメリカでは本艦以前にもキアサージ級戦艦で二階建て砲塔を採用しており、なにがしかの拘りがあったものと思われます。
キットはNIKOモデル製で、このメーカーでは、この時代のアメリカ戦艦が精力的にキット化されています。
エッチングパーツなども付属した非常に精密なキットで、それでいて組立て上のストレスが少ないかなりの好キットです。
なにより説明書が丁寧で判りやすいのがありがたかったです。
上部構造物は辛子色に近い色なのですが、調色に失敗してただのオレンジ色のようになってしまったことが心残りです。




イタリア戦艦ナポリ(デルフィスモデル 1/700)

レジナ・エレナ級戦艦の3番艦ですが、1、2番艦とは若干仕様が異なっており、改レジナ・エレナ級もしくはナポリ級と呼ばれることもあります。
主砲は30.5センチと口径は標準的ですが、前後に1門づつ(計2門)しかありません。
対して中間砲は20.3センチ砲が片舷6門づつ(計12門)とかなり充実しています。
中間砲は連装砲塔に収められ、舷側にピラミッド型に配置されており、これは真ん中の砲塔を高く配置することにより広い射界を確保するためと思われます。
また、中間砲の前方射界を得るために、艦首の舷側は抉れたような独特の形状をしており、明らかに中間砲を主体とした構成になっています。
戦艦としてはかなりスマートな艦形で、一見すると巡洋艦のようです。
キットはデルフィスモデル製で、イタリアのメーカーだけにイタリア艦のラインナップは豊富です。
キットの出来そのものはかなり上位なのですが、このメーカーの場合、それ以外に問題があります。
製品の扱いが雑なのか、細かいパーツはかなり破損しています。それだけならまだしも、パーツが足りなかったり、他キットのパーツが入っていたり、説明書が他キットのものだったりということが割と頻繁にあります。
私は普段は買ったばかりのキットを細かくチェックするようなことはしないのですが、このメーカーのキットだけは入手後すぐに細かくチェックします。




(その2)に 続く

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