Home >今月のハイライト>列強8ヵ国の準ド級戦艦 (その2)

 列強8ヵ国の準ド級戦艦 (その2)

by:衛

前ド級戦艦からド級戦艦に移り変わる過渡期に極短い期間登場した準ド級戦艦というものに、艦船モデラーとして以前から興味を持っていました。
ド級戦艦という方向性に固まる前の、ある意味歪な進化を遂げたと言える準ド級戦艦に強い魅力を感じていたからです。
そして昨年、20世紀初頭の列強8ヵ国から準ド級戦艦を一隻づつ作るという連作をやってみました。
8ヵ国の選抜基準は、自国で戦艦を建造していることです。
時代の徒花とも言える二巨砲混載艦ですが、それだけに各国の建艦思想の違いなどが垣間見えて、なかなかおもしろい連作になったと思っています。

※準ド級戦艦とは
「前ド級戦艦が大型化・発展していく過程で、主砲と副砲以外に、17-25.4cmの中間砲(装甲巡洋艦の主砲クラス)を搭載するか、副砲自体が発展したもの」(wikipediaより)



ロシア戦艦インペラトール・パウエルⅠ世(コンブリック 1/700)

日露戦争で壊滅的な打撃を受けたロシア海軍が、バルト海艦隊増強のために建造した戦艦です。
アメリカ艦以外では見掛けない籠マストをロシア艦としては唯一採用していますが、振動が激しく、後年棒マストに改装されています。
主砲は30.5センチ砲を前後に2門づつと、標準的な配置です。
中間砲は20.3センチ砲で、一見すると連装砲塔が片舷に2基づつ(計8門)に見えますが、砲郭にも単装砲が片舷3門づつ(計6門)装備されており、合計14門とかなり強力です。
日露戦争で自国の戦艦が次々と沈められてしまったことがトラウマとなっているようで、防御上の観点から舷窓をすべて廃止した無舷窓艦となっています。
キットはコンブリックとしては標準的な製品ですが、籠マスト用に付属しているエッチングパーツの材質が堅く、筒状に加工するのにかなり苦労しました。




オーストリア・ハンガリー戦艦ラデツキー(WSW 1/700)

 今は海岸線を持たない内陸国家となってしまったオーストリアがアドリア海まで版図を拡げていた、オーストリア・ハンガリー二重帝国時代の戦艦です。
非常に手堅くまとめられた戦艦で、準ド級戦艦の御手本のような艦です。
主砲は30.5センチ砲を前後に2門づつ、中間砲は24センチ砲を連装砲塔片舷2基ずつ(計8門)と、突出したところはありませんが狭間のない構成となっています。
キットはWSW製で、よくまとめられた好キットです。
あまり精密感はありませんが、メリハリのきいたディティールで、無骨な戦艦らしさを良く表しています。




フランス戦艦ダントン(コンブリック 1/700)

英国と並ぶ造船大国フランスが、満を持して建造した準ド級戦艦です。
主砲は30.5センチ砲を前後に2門づつ、中間砲は装備せず、副砲を中間砲なみの24センチ砲に強化した上で連装砲塔片舷3基づつ(計12門)と、各国準ド級戦艦の中でもトップクラスの火力を持っています。
しかし、先にドレッドノートが登場してしまったため、完成前から旧式艦となってしまいました。
キットはコンブリックの割と新しい製品で、細かいパーツ構成とエッチングパーツ付属により、そこそこ手間の掛かるキットになっています。
エッチング等による精密感も一応ありますが、もともとの実艦が割とシンプルな艦形をしているので、効果が出づらいように感じます。
この時期のフランス艦は木甲板かどうかがハッキリとしません。キットも物によって木甲板表現がされているものと、いないものがあります。
本キットは木甲板表現がされておらず、資料的にも判然としなかったので、そのまま鉄甲板として作成しました。




日本戦艦 安芸(工房飛竜 1/700)

日本が初めて自国建造した戦艦:薩摩級の2番艦です。
1番艦薩摩とは相違点が多く、タービン機関を搭載するなど、より強力な艦として仕上がっています。
主砲は30.5センチ砲を前後に2門づつ、中間砲は驚愕の25.4センチ砲を連装砲塔片舷3基づつ(計12門)と、準ド級戦艦の中では文句なく最強火力です。しかも本艦はタービン機関により装甲巡洋艦なみの速力を確保していました。
イギリスのロード・ネルソン級、フランスのダントン級を凌ぐ世界最強の戦艦を目指して建造されましたが、ドレッドノート・ショックが吹き荒れた後に竣工したため、世界最強戦艦への野望は夢と消えました。
キットは工房飛竜製で、最初にパーツを見た時にはバリ等も多く、あまり良い印象を持たなかったのですが、いざ作り始めてみると非常に作りやすく、スタイルも良好で、印象が180度変わりました。
国内メーカーなので、比較的キットも入手しやすく、お勧めです。





   Home >今月のハイライト>列強8ヵ国の準ド級戦艦 (その2)

Vol.26 2011 February     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
  無断転載を禁ず  リンクフリー
「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

製作記事

TOTAL PAGE