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懐かしのB級キット(第8回)
B‐29A (サニー 1/100)

by 加藤 寛之

  玩具から始まったプラモデルが ギミック路線か、それとも 全く動かないけれども精密なモデルの方向に行くか メーカーによって多様性に溢れていたのが 1960年台でした。
 当時から、精密というには?がつくけれども ギミックが面白いプラモデルを日本メーカーが多く発売していました。エルロン、方向舵可動は当たり前、というか それが当たり前のトレンドの時代だったともいえます。
 学校前の文具店でプラモデルが売られていることも多く、箱絵が魅力的でショーウインドーに釘付けになり、学校帰りに店の前の道路で座り込んで、プラモを作った経験のある読者も多いはず。小学生の遊びの一部として当たり前にプラモデルがあり、今からは想像も出来ないプラモ黄金時代だったと思います。

 
 金型精度が追いつかず、可動部がガタガタで、細かいディテールは?が二つくらいつくが、デッサンはなんとなく実機の雰囲気を再現しているという今でも捨てがたいキットが多くありました。既に絶版になっているものが多いのですが、幸い、その中には今でも生き残って現役のプラモキットもあります。

 このシリーズは そんな 懐かしいB級キットを取り上げて行こうという連載です。形状とか デイテールを求めるならば、後発の決定版を購入すればいいわけで、ディテールの修正などをせず、オリジナルの雰囲気を壊さず、完成を目指そうという目論見です。

 
 さて、今回は 加藤寛之さんから サニー(マルサン)の往年のB-29をご寄稿いただきました。
ご堪能ください。
(編集部)



 サニーのB‐29と言われてもよく分からない人も多いだろうが、昭和43年12月に倒産したマルサンの金型で打たれたキット、つまりマルサン1/100シリーズの一つである。サニーのこの製品は、同じくマルサン1/100屠龍と組み合わせたセットで販売する予定が屠龍の金型を損傷、やむなく1/100飛燕とセットで販売されたという珍しい経緯をもった商品で、これはそのうちのB‐29を組んだもの。なにしろ、もとはマルサンである。今さら精巧に手を加える意味はなく、なるべく時代の味をいかして、かつ今日的に組み上げた。





可動であるエルロン、エレベーター、ラダーは整形して固定した。整形、といってもハンパではない。表面はヘナヘナで周りはバリだらけ。金型のズレはひどく、表面には堂々と押し出しピンの跡がある。当然、寸法も甘い。これを何とか整形する。接着して固定した後、そこに瞬間接着剤を流し込んで隙間の充填も兼ねて強固に接着する。さらに念のため溶きパテを流して、主翼との一体感を作り出す。
機首の透明パーツと胴体は、大まかには凸凹が揃ってはいるが「合う」などという水準ではない。大きな隙間ではない、くらいでOKとする。4基の機銃塔は胴体側にある窪みに入れる方式なのだが、仮組みしてみると直径が大きすぎて入らない。これは機銃塔の直径を縮める以外になく、やむなく一体成型の機銃を切断してグルリと削った。機銃は真鍮線に置き換えた。



 カウリングの後端やエンジンナセル前端には金型のめくれや反りがある。これは削り落とす。この整形は出来上がりに大きく影響するので、重要である。似たような状態は胴体左右の接着面にも生じる。これらは本来的な金型の甘さもあろうが、おそらく大量にキットを打ったことで生じた金型のヘタリであろう。これらはご奉公の結果であるから、もちろん不備や欠点などではない。プロペラは笹カマボコが伸びたような形だったので、それらしく形を整えた。もう少し細い方が良いのだが、この程度でOKとした。



 水平尾翼は左右一体のものを胴体に開いた穴に差し込む古来の方式なので、微妙なフィレットなどは省略されている。それはそれでOKとし、きれいに接着することを重点を置いた。ここも瞬間接着剤と溶きパテで溝を埋めている。尾部銃座の窓は胴体とまったく合っていない。これは味わいとして、特別な整形はせずにおいた。前脚は実機とはだいぶ違う形だったので、特徴ある構造に見せるために前部へ短い丸棒を付けておいた。
塗装は下面黒のタイプとした。これは私が所属する模型サークルSLBの次年度テーマの一つ、“夜間飛行”にあわせるため。実機がどうであるかにこだわらず適当に塗ったので、当然のことながら垂直尾翼のマークとは一致しない。下面の黒はタイヤブラックを地色として、薄く溶いた艶消し黒を上塗りして斑をつくり、単調さをなくした。



 完成してみれば、見事なB‐29のプラモデルである。高精度化とは別の迫り方の模型であるといえよう。40数年も前からあるキットなのだから、当時これを作り上げていたモデラーがいたということである。その感じの良さにちょっと嫉妬した。


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Vol31 2011July.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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