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  P‐51D ムスタング
タイガー・モスキトン機 <実機考証塗装> 
 ( ハセガワ 1/72 )

by 加藤 寛之

 ちばてつや氏が描いた『紫電改のタカ』に「タイガー・モスキトン」と呼称されるムスタングが登場する。それは「黄色い機体に黒のしまもよう」の機体とされている。 登場するムスタングの画はまさにその通りだが、そのまま再現してはレーサー機みたいで実物感がない。そこで実戦機に即して考証し、より実機を感じる塗装で再現してみた。



まず「黄色」の理由である。物語ではタイガー・モスキトンは味方からも見離されているかのようだが、それは正しくない。なぜならば秘密基地にちゃんと燃料が補給されているではないか。独立した分遣隊とみるべきだ。そこに「黄色」の理由があるとみた。調べてみると、第15戦闘大隊第462戦闘中隊が尾部を黄色く塗っている。この塗装を保持して全面を塗ったのではないか。機首の防眩塗装だが、画では描きこまれていない。実機であれば塗り残す方が妥当であろう。中隊マークなどは威圧のためには邪魔で、黄色で塗りつぶしたということになる。スピンナーは何か別の暗い色らしい。 赤では正面から見ると日の丸に見えるので、タイガー・モスキトンが好むはずがない。ここは米国の国籍マークを感じさせる紺が妥当だろう。キャノピーはダラス工場製の低いタイプを使ってみた。これは画が風防を小さめに描いていることと、こっちの方が怪しい雰囲気が出そうだという私の好みからである。風防枠には縞もようがないので、ここは無塗装銀のほうがムスタングっぽいと思う。アンテナ柱は地色と同じなので、黄色である。 



キットはハセガワの1/72を使った。古いキットなのだが、少ない部品でうまく全体を再現している。各翼の後縁を薄く仕上げる分割や、垂直尾翼から前方に伸びるドーサルフィンの理解、上反角を決める構造、ランナーからのゲート位置など、工夫にあふれている。 主輪、主脚、尾輪は簡単なつくりでしっかり固定できる。パネルラインが凸線であるからと敬遠するのはもったいない、良質なキットである。



 塗装で工夫したことは、尾部の黄色と全体の黄色を変えたこと。これは上述の考証を分かりやすく表現にするため。機首の防眩塗装はオリーブドラブが適切だが、明るい色にした。これは「航空ファン」1972年2月増刊号『P-51ムスタング写真集』p174に、戦時中にP-51を見た小橋良夫氏が「グルーンに近いオリーブドラブ」と記しているからである。縞模様は場面ごとに違うので、自分で好きなように塗った。 ところで飛行中のタイガー・モスキトン機は下面が黒いが、これは黒塗装でなくて影の表現である。それは墜落場面の画をみれば判る。一通り塗った後に凸線部分を2000番のサンドペーパーで軽く擦り、凸線をパーツ成形色にして浮き出させてある。これは凹線の墨入れに代わる凸線の活かし方で、私がよく使う手法である。仕上げに「トップコート」を噴けばすりキズは見えなくなる。



さて、いまさらのようだが、“タイガー・モスキトンは全面黄色で黒のシマじゃなくちゃ!”と言いたい方もおいでかと思う。私だって、半分くらいはそう思っている。ぜひ、お作りください。私も見たいです。  



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Vol 43 2012 July.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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