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 Northrop F-20 Tigershark
(Hasegawa 1/72)

By Kiyoshi Iwama



ノースロップF-20タイガーシャークのキットとしては、モノグラムの1/48と今回製作したハセガワの1/72くらいしか思い出せません。実機が3機の試作で終わってしまったのも影響しているのでしょうか。ハセガワのこのキットは1985年くらいに発売させたもので、グレー塗装のデカールしか入っていませんでした。その後デカール替えで白と赤に塗り分けられた美しいマーキングのキットも発売されています。この当時のハセガワのキットは繊細な凹の筋彫りが施されており、しかも500円程度の価格で手に入ったのですから、今昔の感があります。部品点数もそれほど多くなく、未完成の多い私の様なモデラーには、リハビリ用の貴重なキットと言えます。しかも完成すると小粒ながらピリッとしており、ハセガワ流のテイストがするキットでした。

実機紹介

F-20は当初F-5Gと呼称され、F-5EタイガーIIの後継機としてノースロップ社が自己資金で開発した制空戦闘機です。特にノースロップ社は国際戦闘機として米空軍がFMSで世界中に売り込んだF-5系列機を生産しており、その後継機として採用されることを狙っていました。1980年代初め、米軍はソ連の最新鋭機に対抗できる新たな国際戦闘機、FXプロジェクトを立ち上げます。当然これに対しノースロップ社はF-5Gで、そしてジェネラル・ダイナミックス社(GD)はF-16/79で応えました。

1982年8月30日、エンジンをF/A-18Aと同じジェネラルエレクトリック社製のF404-GE-100に換装したF-5Gの試作1号機(82-0062)が初飛行に成功します。この時点ではコクピットから先の前胴部はF-5Eのままという状態でした。それでも40分間の飛行で最高速度は音速を突破し、マッハ1.04に達しています。この年の末にノースロップ社は、F-5GのF-20への呼称変更を米空軍に要請し、1983年3月にそれが認められ、F-20 Tigersharkへと変更されます。そして、アビオニクスを完全装備したF-20の試作2号機(82-0063)が、1983年8月26日に、3号機(82-0064)が1984年5月12日に初飛行に成功します。その後これらの試作機を使用して各種の飛行試験やウェポンの発射試験が重ねられ、各国への売り込みも始まり、バーレーンや韓国がカスタマーとして名乗りを上げますが、1984年10月10日、韓国で試作1号機が墜落するという事故に見舞われます。原因は高Gでパイロットがブラック・アウトになったためです。一方、1981年のソ連のアフガニスタン侵攻を受け、FXプログラムも「低価格戦闘機」から「最良の戦闘機」へと政策変更がなされ、各国でF-16の採用が相次ぎ、1986年にノースロップは遂にF-20のプロジェクトをキャンセルすることになりました。

最後にF-20の性能をF-5と比べてみます。換装したF404エンジンは単発でありながら、F-5Eに比べると60%以上の推力増を生み、最大速度はマッハ2を越えるものとなりました。またGE社のマルチモードレーダAN/APG-67を搭載し、多彩な搭載ウェポンと組み合わせ、空対空、空対地の広範囲な戦闘に対応できる能力を有していました。F-20のような低コスト/高性能な戦闘機は今の時代にも適用可能だと思えるのですが、時代の狭間に消えてしまったのは残念な気がします。


編隊で飛行するF-20の試作1号機(手前)と試作2号機(Photo USAF)

製作

今回の製作にあたっては、アフターパーツは使用せず、キットをできるだけ素直に組み立てました。

1.コクピット

最初にコクピットの製作ですが、今回はキットのデカールを使って簡素に仕上げました。バスタブ型のコクピットをインスト指定のグレー(FS36375)に塗装し、主計器盤とサイドコンソールのデカールを貼りました。25年以上前に購入したもので、デカールが生きているかが一番の心配でしたが、一応クリアーしました。デカール貼ったままだと少し光るため、フラット・クリアーを薄くかけてみました。写真1の状態です。やはり凹凸がないとのっぺりした感じです。


写真1 胴体内に組み込んだ、デカール仕上げのコクピット

 キットではHUDの突起がメインパネルの上方に飛びだしていましたが、これは削り取り、後にHUDのハーフミラー部を取り付けることにしました。


2.胴体・翼

最初に各パーツの合いをチェックしましたが、胴体部品の合いはまずまずです。それでも僅かながら各所に段差が生じますので、若干のパテで修正しました。インテーク部は最初に内面塗装をしたうえで胴体に接着します。胴体とはぴったりフィットします。(写真2) また垂直尾翼付け根にあるエンジン冷却用空気口は結構目立ちますので、開口しています。(写真3)


写真2 インテーク部の組み立て


写真3 エンジン冷却用空気インレット部の開口


そして別パーツとなっている機関砲部の上部パネルを接着整形し、砲口も開口しました。また機関砲がパネルと一体成型されているため、正面から見ると逆U字断面となるため、できるだけΩ断面となるように整形しました。(写真4)


写真4 機関砲部の加工

主翼は片側一体成型で出来上がっており、大型のリーディングエッジ・エクステンションの微妙な形状も正確に再現され、胴体ともうまくフィットします。水平尾翼も片側一体成型品ですが、こちらは単純な形状です。翼と胴体との結合ですが、いろいろ工程を考えてみると下面色のライトグレー(FS36495)を胴体、主翼、水平尾翼の下面に塗装し、その後主翼まで組み立て、上面のグレー(FS36375)を塗り、水平尾翼は最後に結合するのがよさそうだとの結論に達しました。

そこでまず胴体部ですが、既に塗装したインテーク内をマスキングし、レドームを指定のグレー(FS36270)に塗装。またウィンドシールド内の主計器盤の上面を艶消しの黒で塗装。そして塗装したレドーム部をマスキングし、フレーム以外の透明部をマスキングしたウィンドシールドとキャノピーを両面テープで仮付け、そして下面色を塗装しました。主翼と水平尾翼についても同様に先に下面色を塗装、そして前胴部下面の前脚収納部、中胴部のエアーブレーキ収納部、主翼下面の脚収納部を銀塗装しました。この後、主翼と胴体を接合します。水平尾翼は先にも書いたように、エンジン部の塗装を考え、最後に取り付けることにします。主翼ががっしり接着できたことを確認した後、胴体及び主翼の下面部分をマスキングし、機体上面色のグレー(FS36375)を一気に吹き付けました。同時に水平尾翼の上面も塗装しておきます。

レドームと下面のマスキングテープを外すと、機体下面は写真5の様な状態に仕上がります。


写真5 機体下面の仕上がり状況

次に機首上面のアンチグレア部にダーク・グレイッシュ・ブルー(FS35237)を、また垂直尾翼先端のアンテナ部を艶消しの黒に、そして胴体後端のエンジン・ハウジング部をメタル色に塗ります。エンジン・ハウジング部のメタル色にはMr.カラーのスーパー・シルバーを使用しました。No.8の銀も綺麗ですが、スーパー・シルバーは銀粉がより細かく、一層のメタルタッチに仕上がります。ウィンドシールドとキャノピーのマスキングテープが汚らしく残っていますが、胴体と主翼の塗装を終えた状態が写真6です。これで胴体の塗装はほぼ完了です。


写真6 胴体塗装完了状態

3.車輪、脚柱などの小物部品

大物の、胴体と主翼部分がほぼ完成しましたので、次に小物部品の工作と塗装です。まずは主車輪と主脚柱です。ランナーについた状態で主脚柱の整形をし、銀塗装をします。次に艶消しの黒で全体を塗装した車輪のタイヤ部をマスキングし、車輪ハブ部をエナメルのクロームシルバーでドライブラシをかけました。こうすると下地の黒が残って、汚れた感じが出ます。両者を接着した状態が写真7です。また前脚ですが、こちらは車輪と脚柱、そして前脚扉が一体成型されています。主脚と同じ手法で塗装しますが、前脚扉の表面を先に胴体下面色に塗装しておきます。そしてマスキングし脚柱を銀塗装、車輪を艶消しの黒で塗った後、ハブと脚柱の一部をクロームシルバーでドライブラッシングします。(写真8) 大きさを比較するため、横に10円玉を置いてみました。

次にエンジンノズルです。胴体後端部との段差が出ないように胴体接合部とのすり合わせを行います。段差のないことが確認できれば、ノズル内部も含め全体を艶消しの黒で塗装します。その後ノズル内面をマスキングし、外面を焼き鉄色に塗装します。その後アイリス部のみに銀色を薄く吹き付けました。下地の艶消し黒の感じが残り、しっとり感のある仕上がりとなりましたがメタルの輝きはなくなりました。失敗かなー。(写真9)


写真7 主車輪と主脚柱


写真8 前脚柱


写真9 エンジンノズル

4.アクセサリー

キットにはウェポンなどのアクセサリーとして、主翼端に搭載するAIM-9Pサイドワインダー・ミサイル×2、275ガロン・センターライン・タンク×1、主翼に取り付ける180ガロン・タンク×2、そしてキャノピー開状態使用するラダーが入っています。まずはAIM-9Pですが、形状もよく出来ていますので整形だけして、塗装で仕上げました。(写真10)


写真10 AIM-9Pサイドワインダー・ミサイル

ラダーは少しモールドが太めですが、この大きさでは仕方ありません。整形して組み立て指定のグレーに塗装し、ステップの滑り止めに耐水ペーパーを貼り付けてみました。らしくは見えますが・・・。(写真11)


写真11 ラダー

5.デカールの貼り付けとオーバーコーティング

小部品もほぼ出来上がり、機体にデカールを貼りつけます。気になるのは購入して時間が経つため、うまく貼れるかどうかです。計器盤やコンソールは何とかうまくいったのですが・・・。考えても仕方がないので、作業に着手。マークフィッターなどを使用しながら、貼り進めましたが、乾燥してくるとシルバリングが目立ち始めました。しかし、ここで慌ててはいけません。とにかく前マークをしっかりと所定の位置に貼り付け、後はオーバーコーティング時にフラット・クリアーを吹き付け、シルバリングを目立たなくしていきます。また表面がざらざらにならないよう、少しリターダーを入れてみました。仕上がり状態は完成品写真を参照ください。

6.最後の仕上げ

仕上げには、エナメル塗料のフラットブラックとフラットブラウンをシンナーで薄めたもので、排気やオイル漏れなどの汚しを軽く付けました。(写真で見るとあまりよく分からないようです。)そして水平尾翼、主脚と前脚、ウェポンやタンクなどを接着し、その後コクピット内の操縦桿、HUD、そしてエジェクション・シートを追加しました。キットは、キャノピーを開状態とすることにしましたので、最後にマスキングを外したウィンドシールドと、キャノピーを接着し、コクピット横にラダーを吊り下げました。写真12にコクピットに取り付けたHUD、写真13にエジェクション・シートの載ったコクピットを示します。エジェクション・シートのシートベルトはプラシートを適当な大きさに切り貼り、塗装で仕上げています。これでF-20が完成です。


写真12 HUDを取り付けたコクピット


写真13 エジェクション・シートが載ったコクピット


写真14 完成後のF-20(その1)


写真15 完成後のF-20(その2)


写真16 完成後のF-20(その3)


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Vol46 2012 October    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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