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デハビランド DH.88 コメット
(エアフィックス 1/72)

by 加藤 寛之




 なんと美しい姿をした飛行機だろうか。実機は1934年のロンドン~メルボルン間レースのために開発された木製の長距離競争機。
赤のG-ACSS機、黒のG-ACSP機、緑のG-ACSR機が出場し、赤のG-ACSS機が米国のダグラス機、ボーイング機を破り第1位となった。




 キットはエアフィックス製品のなかでも極初期のもので、近年の怒涛の再販のなかで生産されたものを組んでみた。この製品のキット評が『プラモ・ガイド』1971年版にある。抜粋すると「フロッグの方が、モールドや仕上げはすぐれているものの、全体のイメージの表現は、エアフィックスの方がずっとすぐれており、軍配は後者にあげたい。ただし、エ社のキットは同社の初期のものなので、工作にはかなりガタガタの所が多く、各部にヤスリやパテが必要なことは覚悟しておくこと」とある。 私は、これまでに3回このキットを購入し、2回捨てた。極初期の製品なので出来そのものが拙いうえに金型劣化も加わったことで、プラキットとプラ屑の間のやや向こう側という状態なのだ。部品数は僅か24個、それなのに2回も完成できなかった。今回、3度めにしてようやくその流麗な姿をみることができた。




まず左右とも1枚部品の主翼から。輪郭は歪み、表面もうねっている。翼断面形はまったく再現されていない。溶けて流れて固まったプラ材よりもやや上等といった程度である。ウソじゃなくて、本当なのだ。上面のみ翼のように整形、下面は見えないので真ん中にある押し出しピン跡を削り軽く整形した程度でOKとする。 胴体との取付け部分はグチャグチャなので、その崩れた部分は上反角がつくよう角度をつけて切り落とした。多少翼幅が短くなったのかもしれないが、どこまでがパーツか分からない状態だから気にしなくてよいと思う。




エンジンナセルは左右割り。ただし湯流れしていない欠損があり、主翼との取付け部分は歪んで崩れている。これをプラバンやパテで埋めておく。主翼とはまったく合わないが、適当にくっ付けてそれなりの整形をしておく。左ナセルが正面から見てやや外開きなのには気付いていたが、それを直そうとすると3回目の廃棄に突進しそうなので承知の上でくっ付けた。垂直尾翼は歪み落としを兼ねて外側から思い切って削った。水平尾翼はほぼそのまま使えた。
胴体はというと、コックピットに胸像が2つ並んでいる。切り落として開口し、プラバンをL字に組んで角を丸めただけの座席を2つ入れた。
風防の透明パーツは磨き直されていて、とてもきれい。ただしワクのモールドはほぼ消失、胴体と風防背部には断面形の違いと大きな隙間が生じる。断面形まで修正しようとすると3度めの廃棄に突進するので、ここは適当にごまかした。胴体先端にある着陸燈(?)は、胴体にある凸線にそって塗装して済ませることにした。スピンナーとプロペラは、バリと金型のズレを丁寧に落としただけでOKとした。車輪はなぜか両面のモールドに大差がある。そこで「良い」方を左側に向け、「いけない」方は右側にして塗装でごまかした。各方向で揃っているので、言わなければ気付かない(だろう)。



 塗装は黒1色、簡単で嬉しい。冬場なので換気に気を使わなくて済む水性塗料を使っている。GSIクレオスMr.カラーの水性2番「黒」は茶色っぽいので、紺を加えてある。デカールは垂直尾翼の国旗がだいぶオーバースケールだが、英国にとっては大きいほうがイメージに合うのだろう。だが困ったことに「つや消し」なのだ。最後の「トップコート」である程度は改善したが、念願かなってキットが組めただけにもったいない感じだ。 まあ、出来上がった姿を見られたことに満足するべきなのだろう。ところで、冒頭で紹介した“全体のイメージの表現は優れている”とは、正確だとか精密だとかを言っているのではない。このキット、実機よりもカッコ良くて優美である。その形は、心象に一致しているのだ。


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