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 懐かしのB級キット(第12回)
烈風(アオシマ 1/72)

by 田口博通

  玩具から始まったプラモデルが ギミック路線か、それとも 全く動かないけれども精密なモデルの方向に行くか メーカーによって多様性に溢れていたのが 1960年台でした。
 当時から、精密というには?がつくけれども ギミックが面白いプラモデルを日本メーカーが多く発売していました。エルロン、方向舵可動は当たり前、というか それが当たり前のトレンドの時代だったともいえます。
 学校前の文具店でプラモデルが売られていることも多く、箱絵が魅力的でショーウインドーに釘付けになり、学校帰りに店の前の道路で座り込んで、プラモを作った経験のある読者も多いはず。小学生の遊びの一部として当たり前にプラモデルがあり、今からは想像も出来ないプラモ黄金時代だったと思います。

 
 金型精度が追いつかず、可動部がガタガタで、細かいディテールは?が二つくらいつくが、デッサンはなんとなく実機の雰囲気を再現しているという今でも捨てがたいキットが多くありました。既に絶版になっているものが多いのですが、幸い、その中には今でも生き残って現役のプラモキットもあります。

 このシリーズは そんな 懐かしいB級キットを取り上げて行こうという連載です。形状とか デイテールを求めるならば、後発の決定版を購入すればいいわけで、ディテールの修正などをせず、オリジナルの雰囲気を壊さず、完成を目指したいと思います。




 「懐かしのB級キット」の連載を再開で 今回、取り上げるのは 青島の烈風です。
 オール可動で、主翼が折りたため、主脚、尾脚が引き込み式となっています。
このキットと最初に遭遇したのが1960年代初頭 小学生高学年でした。青島でキットが設計されたのは日本でプラモデルが初めて発売されたすぐ後、今から50年近く前の昭和30年代のはずです。
 当時、小学校の校門近くに必ずといっていいほどあった文房具の店先で タミヤのメッキ零戦でプラモに開眼した少年たちは より強い戦闘機に憧れ、当時 少年キングなど漫画週刊誌の挿絵グラビアの強い影響を受け、紫電改、烈風に走りました。
 紫電改はもちろん「紫電改の鷹」の影響です。一方、烈風は 挿絵によると、680km/hの快速を誇り、20㎜4門の重武装で、ヘルキャット、ムスタングを倒せる夢の局地戦闘機だったのです。

 青島のプラモデル烈風は お約束のオール可動で、文具店の店先の歩道を滑走路として 折りたたんだ主翼を展開すると すぐに主脚を引き込みながら、ブーンと上昇し、敵ムスタングを迎撃する といった遊びをしたものです。
時には 迎撃時間を短縮する前に主翼を畳んだまま 飛び上がったりしたりして、、 現実にはありえないことでしょうが、子供心にはそれが楽しかったものです。

主脚と尾脚が引き込み可動式。脚カバーは動かないが 子供心には問題なかった。



  さて、手元にあります1968年の航空情報プラモガイド(特集第2次大戦 日本戦闘機)をひも解いてみますと、青島文化教材社の1/72精密プロペラ機シリーズの広告があり、45年前のこの時に既に零戦21型から烈風までの日本機7機が掲載されています。
 当時の有名他メーカーではリンドバーグなどの外国製品を参考にまんまコピーのプラモデルを発売していた模倣の時代にあったにかかわらず、青島のこのシリーズは 全て孤軍奮闘 オリジナル設計でしたので たいしたものです。
このシリーズは瑞雲、晴嵐、紫雲、5式戦、彩雲、烈風と機種選定がマイナーで 参考にしようにも 他からは発売されていませんでした。 烈風は 最近になってファインモールドから発売されるまで、唯一ものであり続けました。
 当時の青島の設計陣には敬意を表するばかりであります。
 それから 45年の時間を経て 箱絵とデカールが今風にリニューアルされ 絶版との話を聞かないので、現在でも発売され続けていると思われます。



最近(といっても1990年代)のキットの箱絵とデカールでニューアルされている。
胴体部品はカウリングと一体で、ディテールとモールドは見てのとおりラフです。

箱絵


デカール
胴体と主翼部品

1970年代当時のキット評 と 当時の作り方

  前述のプラモガイド1972年度版22Pに 青島の烈風の批評がありますが、スケールモデルとしての評価は非常に厳しいものがありました。
1970年代当時の時代背景が 初期の楽しさを追うプラモ作りから一変して 正確さと精密さを重視するスケールモデル追及に変貌していたこともその理由でしょう。
 当時のプラモデルガイドは、学生になったプラモかぶれの私にはバイブルであり、評価記事を見ながら、おおがかりな修正を伴う製作にチャレンジしたものです。今考えれば 「若気のいたり」と いうだけではあります。

以下に1972年プラモガイドの「評価と作り方の注意」を引用転載します。

 『キットはアオシマから1/72が出ているだけ。戦歴がないので、メーカーもPRのポイントに乏しくて作りにくいのだろうが、同じカテゴリーに入る連山や震電がかなり入念に作られているのだから、もう少しまともなのをモノにしてくれるところが出てきて欲しい気がする。
 アオシマ製はスケールの方はキチンと出ているが、エンジン上部のキャブレターや下部のオイルクーラーの開口部がない。また単排気管の描写も甘く、プロペラもスピナキャップも快速戦闘機のイメージとは まるでウラハラである。遠くから見た感じは烈風そのものであるが、細部の表現は極めてラフである。
考えようによっては、スケールがチャンと出ているから手を加えれば加えただけの効果がある。
[作り方の注意]
脚の引き込みと 主翼翼端の折りたたみが可動になっているが、どれも無視して固定してしまう。
主翼は上下貼り合わす前に、翼端の折りたたみ部を接着し、十分乾燥したところで、大げさなリベットや筋彫りの突起などを水ペーパーで削り落とし、各翼の後縁を薄く直線的に仕上げる、主翼翼端の折りたたみのヒンジの部分に出来るすき間は、パテで埋め平滑に修正する。
スジ彫りはエルロン、フラップ、ラダー、エレベーター程度にして、あまり細かい筋彫りは省略すること。スケールが1/72であることと、塗装がダークグリーンであるため、この方がスッキリする。
エンジンのフロントグリルは図を参考にして、可能な限りリアルに工作する。
A7M3にするなら13㎜機銃の穴(キットは左翼に穴がない)から20㎜砲の銃口を出し、さらに外側約4㎜の位置にも20㎜砲の銃口をつけて、合計6門になるようにする。
またA7M3-Jへの改造は、主翼はそのままにして胴体を前に約9.3㎜強、後へ3.3㎜強延長し、主翼の下を3.2㎜ふくらませて整形し、水平尾翼の取り付け位置を尾端から5.5㎜前進させる。さらに細かいことをいうなら、水平尾翼を0.8㎜ほど上にあげてやらなければならない。』

製作について

  しかし、この時代のB級キットには スケールモデルとは違ったプラモデル作りの楽しみがあります。
ですから、それを捨てるには勿体ない。「懐かしのB級キット」の趣旨としては、できるだけオリジナルで作り、プラモデルの作る楽しさ、遊ぶ楽しさを満喫したいと思います。
 烈風のキットは最近 市場ではあまりみかけなくなり、今回は 2年ほど前に WEBMODELRSの読者の方から譲っていただいた貴重なキットを使わせていただきました。 ありがとうございました。
 
 主翼は、可動部そのまま作ります。可動翼と固定主翼部を上半角6度50分に作るには、端面のやすり掛けがキモで、相当の技術が必要なことがわかります。
可動の主脚を組み込むこともお忘れなく。
結果、少し 垂れ下がってしまいました。プラモ作りウン十年経験でも、そこまでの工作技術が無かったことを、残念ながら 思い知りました。


尾脚も可動です。ピンは少しきつめにしておくとよいでしょう。


胴体左右を接着し、翼を取り付けると形になります。

翼と胴体の接合部には当然すきまが出来たりしますが、内翼の上半角はゼロですから それを優先に組み立てます。すきまはパテで埋めると割り切った方が結果が良いようです。
エルロン、フラップ、ラダー、エレベーターに筋彫りを入れるもよし、オリジナルを尊重して何もせずもよし。現在は ファインモールドの決定版キットが売られているのですから、正確さはそちらにまかせて 楽しんで作りましょう。
 ただし、翼後縁は厚めなので、外部上下から金属やすりで削り、薄くしておくと飛行機らしくできます。
 エンジン上部のキャブレターと下部のオイルクーラーの開口部ですが、面一というのもあまりに芸がないのでナイフの先で少し彫りこむといいでしょう。
これで、かなり 烈風らしくなりました。

塗装


下面は グンゼカラーNo35明灰白色を,上面はNp16濃緑色を細筆で塗りましたが、塗重ねの時間もかかり、結果的には吹き付けの方が作業時間自体は短いようでした。
操縦席内部は ご覧のようにピンが出ているのみ。好みにより、60年代雰囲気では青竹色で、90年代雰囲気では グンゼ特色 コクピット内部色で塗装するという方法もあります。

 主翼前縁の黄桃色警戒帯はテープでマスキングして塗装しました。
プロペラは特色131 赤褐色、
脚柱は黒 としました。

デカールは、コ-A 7-3 のみ キット付属のものを使い、日の丸は 他キットの余りデカールを流用しています。

風防の透明度はあまりよくないので、キズ隠しに内外にクリアカラーを塗装してみました。

機銃はお約束のシンチュウパイプで追加しておきました。ピトー管はシンチュウパイプと0.3mm洋白線の組み合わせ。アンテナ柱は金属線で自作しました。
一段とカッコよくなった気がしました。B級キットの楽しみ方には こういう自己満足もあってもいいと思います。

完成





確かに デイテールはかなりラフですが、遠目に見ると烈風です。小さい風防がチョコンと乗り、丁寧に作ると 完成を楽しめます。
主脚の折り畳みロックが甘いので、補強のために 高校生の時と同じく、キットの底箱の厚紙を細く切り、斜め支柱にしてみました。真ん中で2つおりにするとおりたたみリンクのようにできます。お試しください。
主翼端の上半角が下がり気味ですが、ご愛嬌ということでお許し下さい。
オリジナルの雰囲気を大切にするため、翼後縁を薄くしたのみで外形には手を加えていませんが、なかなかのスタイルだと思いませんか。
 また B級コレクションに一機加わりました。
 おつきあいいただき ありがとうございました。



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Vol.51 2013 March.      www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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