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グロスター グラディエーター Mk.1
(エアフィックス 1/72)

by 田口 博通 Hiromichi Taguchi



 エアフィックスのリニューアル新製品攻勢が続くが、話題の GLOSTER GLADIATOR Mk.1を作ってみたので 紹介しよう。
 初代のGLOSTER GLADIATOR Mk.1は50年前の1960年代初頭に発売されたもので、羽根張りの感じなどもそれらしく仕上がっていて悪いキットではなかった。しかし、古いキットゆえ 全体のモールドが甘く、パネルラインや部品分割、部品精度など旧式で、組み立てるだけでも手がかかった。
 今回リニューアルされたGLADIATORを組み立てた感想は、一言でいえば 「進化している」。これで初代とほぼ同じ1,000円以下の価格とは、コストパフォーマンスは最高だった。
 実は7月の所属クラブの例会の際、 横浜若葉台に昨年新規開店した模型工房ブリッツの自称営業部長ヤマバンさん(HJ誌で毎号スケールの作例を作っておられ、つい最近号でもエアフィックスタイフーンの素晴らしい作品を発表した方)から、 「エアフィックスからすごいキットが出ましたよ。とにかく凄いから 一度作ってみてください。感動するほどの出来です。」と強く勧められたのが、これ。GLOSTER GLADIATOR Mk.1であった。



実機について

 GLOSTER GLADIATORは 1936年 英空軍に就役した機体で、それは ハリケーンやスピットファイアが就役するほんの数年前の出来事だった。
設計は1930年代であり、古き良き複葉機時代の英国の最後の戦闘機といってもよいだろう。
同時代の日本の戦闘機には複葉の95戦がある。
登場したのは 96艦戦、97戦へと移りつつあった時代だった。
第2次大戦前の最新鋭機であり、英国だけでなく、中国空軍にも送られ、支那事変では 南昌基地に展開して、日本軍と死闘を繰り広げた。海軍戦闘隊の至宝とうたわれた南郷少佐が南昌で本機との空戦で戦死している。
 複葉機であるので、格闘戦に優れ、最大速度は96艦戦なみで、機銃は0.3インチブローニングを4丁装備していた。
第2次大戦開始時には旧式になってしまっていたが、マルタ島攻防戦をめぐる「誠実」、「希望」、「愛」と名づけられた3機の活躍の物語が有名である。


キットについて

 キットの側面にはMade in Indiaとあり、生産されたのはインドのようだ。 主翼、胴体とも金属パネル部と羽布部のファブリックの質感の違いが明確にモールド表現されている。
 なによりも良かったのは設計時に部品分割がよく練られており、コクピットだけでなく、主翼支柱、カウリングと排気管など至るところに一体化と分割の工夫の後が見られる。3日で複葉機を完成させることができ、久々にプラモデルの組み立ての楽しさを味わうことができた。

 カウリングは3分割になっていて合いを心配したが、問題がなく組み上がった。エンジンも1/72では実感たっぷりな出来となった。
 プラスチックは柔らかめで、確かに一つ一つ部品をよくみればモールドに甘い部分もあるが、それでも後加工を ほとんどせずとも合った。モールドに古いエアフィックスの雰囲気も残しながら、CAD設計の利点を取り入れて 新時代のエアフィックスキットになっているには感心した。
  また、リニューアルされたエアフィックスキットはサービス精神が旺盛で、複葉機でありながら密閉キャノピーなのだが、キットは開状態のキャノピーも付属し選択できるようになっている。主車輪も変形タイヤがサービスされているが、主脚穴が四角となっていて ビタッと地面に接地するように角度が決まる。
 また、 8ページからなるカラー塗装図つきの詳しい説明書で できるだけ プラモ作りを楽しめるようにと この1000円以内の価格に盛り込まれているのが凄い。
 これがいわばエアフィックスのリニューアルスタンダードといわれるものなのだろう。



 主翼部品   機体部品
 デカールと透明部品
  8ページからなる説明書にはカラー塗装図も。

製作

 コクピット

 コクピットは 下の写真のような感じだ。
側面の機銃が別部品になっている。

操縦席は右のように床部品の設計が独特のまとめ方で、設計者は楽しんで設計したことだろう。よくこんな形の一体化部品を考えたものだ。
 バックレストとシート、操縦環(イギリス機は持ち手が環になっている。)、コンパス を機内色で塗り分け、ウエザリングすれば コクピットが完成する。




 胴体接着後に機首部品を接着する。
支柱と一体になった計器盤を機首部品に接着するというアイデアも秀逸で、懸案の計器盤の組み立てにくさが解消されている。


 複葉翼の組み立て

 上翼の支柱は 前後がX型のランナーで一体になったままとして先に下翼に接着するように説明書で指示されているので その通りに組み立ててみた。確かに簡便である。


 上翼に支柱を接着した後、尾翼を接着し、ひっくり返して主脚をとりつける。

 主車輪は自重変形タイプも選択できる。作例は後日 スタンドに飾るつもりなので、通常のタイヤを選択した。タイヤを主脚に接着すると右のように基本形は完成。

一日おいて支柱がしっかりと接着されたら、X型のランナーを切り取り、塗装を開始する。



 塗装

 塗装は 派手なシルバー塗装を選んだ。
羽布張り部分を艶を落としたシルバーで塗装した。
 また金属パネル部分はアルミ磨きだし調で光沢を出して塗装をするために、あらかじめ黒銀で下塗りをしておき、シルバーを上に塗装してみた。
金属パネル部は単なるスジ彫りモールドでなく、パネル周囲が微妙に盛り上がってモールドされていて、一枚一枚のパネルらしさを醸し出しているので、それをぜひ生かしたい。 

エンジンとカウリング

 説明書とは違う順序だが先にエンジンを組み上げ、艶あり黒で塗り、プッシュロッド類をシルバーにしてみた。
カウリングの前面リングはご存じのように排気集合管を兼ねているのだが、各エンジンヘッドとの接続パイプが裏面にモールドされていて、凝っている。
カウリング下パネルは排気管と一体成形になっているのは楽チンだ。
カウリングの内面はあらかじめ黒に塗装しておき組み立てに備えよう。


 エンジンを機体に取り付ける際にはスラストラインに注意のこと(左写真)。
3分割のカウリングを下部品、前面リング、上パネルの順序で組んでいく。(右写真) 幸い、ピタッと合う。
組み立てたカウリング。上パネルを一部開けた状態にするのもおもしろいだろう。カウリングは前面と排気管を焼け鉄色に、パネル類をシルバーで塗装する。


塗装完了

タイヤを白の混じったタイヤ色で、車輪ハブをスカーレット(赤)で塗装すれば あらかた塗装は完了。


 デカールは印刷もはっきりとした色透けの無い良質なものだ。
 張り線は説明書には張り線図も詳細なものが掲載されている。また、キットにも張り線の孔ガイドが貫通ではないが窪みとしてモールドされている。張り線をされる方はそれらを参考にトライしてみて下さい。
 実は筆者は72の小型機ではいつも張り線を省略している。その理由は1/72模型としては張り線がなくても成立すると感じていることもあるが、複葉機の製作のハードルを自分の中で下げるためでもある。 「複葉機は必ず張り線をしなければならない」としてしまうと、どうしても複葉機の製作がおっくうで、敷居が高いものになる。また、完成そのものがおぼつかなくなる。 
 今回も張り線は省略した。しかし、それで 見事に完成してプラモデルを楽しめるのであれば、それで良しとするのも 一つの方向性だろう。



感想

 初版を30年くらい前に作ったことがあるが、今回リニューアル版を組みながら、エアフィックスの進化に感慨深かった。
 部品分割や一体化など随所に工夫がみられ、ユーザーに楽しんで確実に完成してもらおうという気配りが直に感じられるのがうれしい。
 プラスチックが柔らかいために、部品モールドのシャープさには若干欠けるが、組み立てには影響も無い。 完成度のとらえ方が大変うまいと思った。
 もちろんグラジエーターというマイナーな機体を組みのは初心者や子供ではなく ある程度 経験を積んだ大人だろうから、それを意識したプラモデルでもある。 全てメーカーからのお仕着せでなく、自分なりのプラモデルの組み立てを楽しみたいという層にもそれなりの余地を残しているのだろう。
 

 国産のプラモデルメーカーはここまで進化しただろうか? 表面のパネルスジ彫りだけにとらわれ、金属パネルとしての実物実感が感じられない、金属部と羽布部の差も無い、そんな実物の航空機とは実感がかけはなれたプラモデルになってしまっていないだろうか。

 そんなことを深く考えさせるキットだった。
1/72で手軽で価格も安いので 皆様にもぜひ一作をお勧めしたい。
 その際には ぜひ 張り線を省略して短期間で完成させてみてはいかが。久々の完成の喜びを味わえるはずである。



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Vol 59 2013 September.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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