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誌上個展

隼1型 (LS 1/75)

by 田口博通 Hiromichi Taguchi




 今月はB級キットというには惜しいと各自で思う秀作キットをA級と呼ぼうと、”思い出のA級プラモデル”が特集されています。
 筆者の思い出のA級プラモデルというと どうしても LSの日本機シリーズとなってしまいます。
隼、零戦、彗星、飛龍と機種数は少ないのですが、どれも 思い出に残る秀作プラモデルでした。

 この隼1型は初出の1960年代の流行を反映してキャノピーと エルロン、エレベーター、ラダー動翼オール可動です。そうです、これだけプラスチックの成形技術が進歩した現代で 逆に「オール可動」というのが懐かしい響きとなってしまったのは、少し逆行に感じませんか? 
 この隼、当初は脚も引き込み可動式で 真のオール可動でした。
  表面モールドが美しく、スタイルもよかったのですが、コクピットは床が無く、簡略化されていて脚庫まで素通し、今の目で見ると、脚やエンジンなどに多少 荒い部分もありました。 それでも 心の中では本当はA級どころか「名作」と呼んでやりたい気持ちで溢れています。このLSの隼は全体のイメージがいかにも隼らしいのです。
 後年、ハセガワとフジミから1/72の良いキットが発売されましたが、一長一短あり、いまだにこのLSの隼のポジションは崩れないと思います。
 
 この特集に合わせて、もう一度 新たに作り LS隼を堪能してみました。



 今年、中国青島から帰任後、久しぶりに棚を整理していましたら、昔の塗料ピラーがいくつか出てきました。まー、お懐かしいこと。蓋を開けてみると、なんと約50年をビンの中で生き抜いていて 使えそうです。
 このピラーは レベルカラー(今のMrカラー)が登場する前、マルサンカラーと並んで、1960年代の国産主力塗料でした。艶消しが強く、塗膜が少し弱かった記憶がありますが、ハンブロールには無い日本機色や、戦車用のオリーブドラブなど色調も良く、中高校生時代、大変よくお世話になっていました。 50年の時をせっかく生き抜いてきたのに、このまま 使わずにいるのは可哀そうでもあり、昔を思い出して使ってみることにしました。
 

 塗装は、エアロのミリタリーコレクションNo6日本陸軍戦闘機の中に 有名な飛行第64戦隊 加藤建夫中佐機の塗装図がありますので、それを参考に 筆塗で行ってみることにしました。
というのはピラーは艶消し剤の粒子が荒く、今のエアブラシのノズルでは詰まってしまうからです。
(昔は エアブラシでなく、手押しのハンドスプレーやレベルのビンから吸い出すスプレーを使っていましたので、粒子の荒さは問題にならなかったのでした。)
 




 下面はMrカラーの銀で塗り、上面は 先述のピラーの陸軍機色を使ってみました。戦隊マークの矢印と主翼帯、胴体帯はマスキングテープを細切りにして、手書きしました。
 この塗装図では加藤機は胴体の日の丸がありません。スピナー、プロペラとも シルバーです。
主翼前縁の味方識別黄色帯は平面図を採用して無しとしました。
脚庫はふさぎませんでしたが、アンテナ支柱とピトー管はシンチュウで自作し、動翼ヒンジ部の尾翼盛り上がりは削り落としました。ヒンジの代わりに動翼には ガンダム用の細スプリングをニュートラル復帰用に仕込みました。エレベーターが重さで下がるようなこともなく、快適です。

 

 艶けしが非常に強く、乾燥後も触ったところの塗料の艶が変わってしまうのは、ピラーの塗膜が弱いからで、いたし方ない所です。
 塗りあがりの雰囲気まで60年代、70年代の懐かしさを再現したような作品になりましたが、現代のMrカラーでは得られない素材感触が逆に新鮮に感じられます。
 完成の姿を見て、「そうか、こんなんだったんだな」と、改めて記憶を思い返し、感慨深いものがありました。




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