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連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第44回)

 Ju-87A (MPM 1/72)

by 鳥巣 Torisu



 

<実機解説>

 WW2開戦時のドイツの電撃戦の先鋒としてその名を轟かせたJu-87は1933年年9月にアメリカで行われた複用機での急降下爆撃のデモンストレーションを見てその魅力に取りつかれた当時ベルサイユ条約化の下で密かに再建を図っていたドイツ空軍技術局最高責任者エルンスト・ウーデッドのゲーリング空軍大臣への進言によって生まれた。
このJu-87の誕生に向けては2つの流れがあった。
一つは先ず急降下爆撃機としてすぐに間に合う機体として空冷エンジン搭載の全金属製の複用機でフイゼラー社とヘンシェル社が当局から競争試作の指示を受けた。
この競作は近代的なフオルムを持つたヘンシェル社のHs123が採用され1936年に部隊配備が進められスペイン内戦やWW2開戦時のポーランド侵攻まで地上部隊への協力作戦で大いに活躍したが所詮複葉機で最高速度が320キロの堅実が売り物の機体では第一戦の敵戦闘機に対抗できるわけでもなくJu-87の配備が進むと第一戦から退けられた。
二つ目は取りあえずの急降下爆撃機としてHs123の開発試作と並行して本格的な急降下爆撃機としてはハインケル・アラド・ユンカース社に試作機の契約が当局と交わされた。
「取りあえず直ぐに使用できる機体」の計画に沿って堅実な仕上がりの機体となったHs-123に比べてその後継機にはダイブブレーキを装備し複座で当時の各国の戦闘機と同等の性能等高度な要求が盛り込まれた。
ハインケル・アラド・ユンカース各社は様々な仕様の機体を開発しトライアルに挑んだが先ず脱落したのが複葉機で堅実性をアピールしたアラド社が脱落し、続いて引き込み脚で空理気的に優れていたハインケル社のHa112は急降下試験中に操縦不能を起しパイロットは脱出したが機体は失われた。結局垂直効果と安全な引き起こしを見せつけたユンカース社のJu-87V2(試作2号機)に採用の軍配が上がった。
こうしてJu-87は1936年にJu-87A-0として部隊配備が進められA-1・A-2合わせて260機生産された後更に改良型のB型が実戦部隊に配備されると訓練部隊の機体として使用された。
諸元
全長10.7m
全幅13.8m
全高 3.8m
全備重量3.4t
エンジン ユモ210・600Hp
最大速度 320km
航続距離 1000km(非武装時)
爆弾 250~500kg
火器 MG17×1
   MG15×1
搭乗員 2名



<キット解説>

 今では簡易インジエクションキットメーカーとして確たる地位を築いたMPM社が20年以上前に発売したキットです。
同社の黎明期の製品であり硬い材質・眠たげなモールドと全体に温いフオルムそしてバキューム製のキャノピー。
「簡易インジエクションキットはこう言う物だ」と教えてくれた有る意味勉強になったキットです。
平均キット価格が2000円と72の単発機クラスとしては高値では有りましたが当時国内メーカーが出していない烈風や清嵐(青島の物は当時絶版状態)やMe262のサブタイプ等大戦機マニアを喜ばせてくれました。
さすがに今となっては上記の機体の物は良質のインジエクションキット内外メーカーから発売されましたが本来の簡易インジクションキットの有るべき姿を思い起させてくれるキットです。

胴体部品
主翼部品


箱絵


デカールとキャノピー

製作

<コクピット及び胴体の組み立て>

 コクピットフロアー・主計器盤・座席・パイロットと銃手を隔てる板・機銃・操縦かんの6点で構成されています。
操縦かんはA型用の輪っかタイプの物が準備されており射手用の座席と共にA型専用の物がしっかりと入れられておりメーカーの拘りを感じられます。
通常にインジェクションとは違う簡易インジェクションなので各パーツの合いが悪かったり取り付け位置が不明瞭な物が多く現物パーツを所定の位置に合わせるために削る等をして調整しながら組み立てを進めます。
先ずは機首部のラジエターの取り付けから始めます
ラジエターは前後2枚の板状のパーツで再現されていますがそのままでは胴体に収まらないので棒ヤスリで削り合わせました。ここは目立つ所なので腕のある方はエッチングパーツで再現すると良いアクセントになると思います。

次にコクピットです。
コクピット部分では先に計器盤を胴体に合うように調整してから接着しその次に胴体内部にコクピットフロアーの土台となる角棒を取り付けた上にフロアー部分を乗せました。
コクピットの接着固定が済んだら胴体の左右を貼り合わせます。
胴体には取り付けピンとダボ穴が無いイモ着けとなりますので組み立てる前に左右胴体のすり合わせを必ず行いましょう。
左右胴体の貼り合わせを終えたらコクピット内部をMrカラーのRLM65グレーで塗装します。
グレーが乾いた後に主計器盤と操縦かんをジャーマングレーで塗り分け銀色で塗った座席をフロアーに取り付けて胴体とコクピットの組み立ては終わりです。



<翼と組み立てと取り付け>

主翼と水平尾翼を組み立てます。
主翼もイモ着けです。
上下パーツのすり合わせを十分に行えば大きな隙間や段ズレを防げます。
意外とこのキットの主翼上下の合わせは良かったので僅かなすり合わせを行うだけで済みました。
主翼上下貼り合わせの次は水平尾翼の取り付けです。
水平尾翼には取り付け用のピンが無くイモ着けになってしまうので真鍮線を通して胴体に取り付けました。この作業の時水平尾翼の取り付け角度が尾翼に対し水平になるようにインストや実機資料等で確認しながら作業しましょう。
水平尾翼を取りつけたら最後に胴体と主翼を合わせます。
胴体後部の下面と主翼下面が干渉するので具合を見ながら削り合わせました。
胴体と主翼付け根のフィレット部分に隙間が生じたのでタミヤのポリパテを盛り着けました。



<スパッツの組み立て>

胴体の基本工作が済んだらスパッツ(主脚覆い)を組みます。
いかにも肉厚でゴッついパーツなのでそのままでは車輪が入りません。中をリューターで薄くなるまで削り車輪も平らヤスリで薄く削り無理やり押し込めました(苦笑)
スパッツもイモ着けなので真鍮線を差し込んで主翼に取り付け舞した。

<パテ盛りと整形>

簡易キットなのでパーツの整合性も悪くアチコチに隙間と段ズレが生じたのでポリパテを盛り付けて乾燥後に紙ヤスリの#240・400.800・100・1200と番数を上げて削りました。

仕上げに#1500・2000番で全体を滑らかになるように削り上げ缶サフ#1200で整えました。
サフが乾燥したらサフ吹きで埋もれたり消えてしまったパネルラインをP-カッタとテンプレートで彫り直します。
72サイズのWW2機なので大まかなパネルラインを彫り直せば十分でしょう。


<塗装>

整形とスジ彫り作業の次は塗装です。
今回は手元の資料で見つけた銀色のままの原型機を模して塗装しました。
機体全体にMrカラーNo2「ブラック」を塗ります、その次にNo8「銀」を塗り更にガイアカラーの「ブライトシルバー」を塗り光沢の強いシルバー塗装に仕上げました。
単色ではメリハリが無いのでエンジン回りとフラップには別の色調の違う銀を塗り分けアクセントを着けました。




<デカール貼り>

発売されてから20年経っての経年劣化か元々の品質が悪いのかデカールの糊が硬くてぬるま湯に浸しても台紙から剥がれずやっと剥がれたと思いきやバラバラに粉砕するアクシデントに見舞われました。そのため国籍マークはジャンクデカールを流用し機体番号と尾翼の赤い箇所はスーパースケールのデカール保護材を塗りつけてかろうじて使用しました。 尾翼の赤も塗った方が良かったかもしれません。
海外メーカーではご法度のスワチカが入っていないので昔トライマスター社が販売していたスワチカのデカールセットから流用しました。
細かい注意書きは無視して貼りませんでした。


<小物部品とキャノピーの取り付け>

塗装が済んだらピトー管と水平尾翼及びスパッツの補強板を取り付けます。取り付け位置が不明瞭なので実機写真を見ながら取り付けました。
それとこのキットでは投弾アームと爆弾が無いのでアームは丸いプラ棒でそれらしく(爆弾で隠れて見えません)作り爆弾はジャンクから拾って来た物を着けました。
キャノピーはバキューム製です。
余分な部分を大まかにカットした次に機体に合わせて調整しながら更に細かく切って合わせます。
細かい切り取りが出来るタミヤのデカール鋏を使用してカットしました。
切り出したキャノピーを機体に取り付け窓枠を機体色で塗り分けます。塗り分けたキャノピーに無線アンテナを取り付けて完成です。



今ではこの機体のキットもリメイク板が発売されて作りやすくなりましたが簡易キットと言う物を作る上での良い教材になりました。 今回MPM社の簡易インジェクションキットを作る機会を下さった編集部に感謝です。


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Vol.63 2014 January   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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