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誌上個展

  General Atomics RQ-1A Predator & Northrop Grumman RQ-4B Global Hawk (PLATZ 1/72)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


 MQ-1A Predator Photo by USAF


RQ-4B Global Hawk Photo by USAF



 最近は開発コストの高騰もあり、軍用機の開発は中国を除くと世界中で減少傾向にあります。これに替わって開発が加速されているのが無人機で、その影響もあってか、プラモの世界でも無人機のキットが販売されるようになってきました。懐かしのレベルのキットの中には、引っ込み脚付の レギュラスII 巡航ミサイルのようなキットがありましたが、これは無人機のようですがミサイルに分類されます。

無人機にもミサイル同様、自律航法する機体もありますが、ラジコンの高級品といったイメージの方が分かり易いかもしれません。それでは作例紹介の前に、無人機の歴史について簡単に述べておきます。


 空飛ぶロボット兵器とも言われる無人機が、この世に産声を上げたのは意外と古く、1917年12月に、米海軍がカーチスN-9練習機を無線操縦機に改造し、飛ばせたという記録が残っています。その後第二次大戦では、欧州戦線と太平洋戦線で、同様な無線操縦機が実戦に投入されたこともありましたが、あくまで実験の域を出ませんでした。
しかし1960年代に入ると、ベトナム戦争では標的機を改造した無人偵察機や電子戦機が本格的に投入されるとともに本格的な長距離偵察機も開発され、
現在の無人機の基礎技術や運用技術が確立し、本稿でも取り上げるRQ-1 プリデターやRQ-4 グローバルホークなどに繋がって来るのです。

こうして無人機を実戦で使用する経験を最も積んだのが米国でしたが、その一方でイスラエルが1970年代の中東戦争で、ラジコン機を連想させる小型無人機を開発し、写真偵察機や囮機に使用し、この分野で世界をリードするようになりました。


 しかし、無人機の存在が一般に知られるようになるまでには、さらに20年近くの月日が流れます。1995年に無人偵察機RQ-1 プリデターがボスニア戦線に実験配備され、その後アフガニスタンでは本格運用され、その経済性と有効性により、装備品としての地位を確立していったのです。エレクトロニクスの進歩が無人機技術の拡散を加速したと言っても過言ではありませんが、今では手のひらに乗るマイクロ無人機からグローバルホークのような大型無人機まで、さまざまな無人機が、世界中で使用されるまでになりました。 最近ではイスラム過激派をミサイルで攻撃するMQ-1などの無人攻撃機による誤爆の問題がニュースメディアでクローズアップされていますが、自軍の被害を最小限に食い止めることのできる兵器としての無人機の開発には加速がかかるばかりです。
専用の無人攻撃兵器として開発されているUCAV(Unmanned Combat Air Vehicle)の中には米海軍のXB-47Bのような空母からの離着艦が可能な機体も現れ、今後の軍用機のあり方が大きく変化していく可能性をも示唆しています。


  さて少し前置きが長くなりましたが、こうした無人機の歴史背景を頭に置いて、改めてキットの話に移りたいと思います。 今回ご紹介するのは、2008年にプラッツから発売された1/72スケールの中型無人偵察機RQ-1A プリデターと、その翌年に発売となった大型滞空型無人偵察機RQ-4B グローバルホークです。


RQ-1A Predator (1/72)  & RQ-4 Global Hawk (1/72) Platz Box Art より

1.     RQ-1A プリデター





 部品点数も少なく、短時間の作業で、衛星通信用アンテナを収納したオタマジャクシのような頭と細長い主翼、そして垂れ下がった尾翼を持つ、プリデター独特のシルエットのモデルが目の前に現れます。その意味で、このキットは昔のプラモデルの感触を思い起こさせてくれます。

 機首の下にはセンサーターレットが付いていますが、小粒ながらよくできており、上下、左右に回転が可能です。特に塗装の指示はありませんが、センサー窓にクリアーのレンズパーツを着色して付けてみました。また機首のAOAセンサー付きのピトー管はプラ部品が華奢なため、ステンレス棒で作り替えましたが、AOAセンサーは省略しました。

このキットの問題点はテイルヘビーなことです。キットの説明書には錘の指示がありません。組み立ててから気づいたのですが手遅れでした。地面近くまで垂れ下がった尾翼が、支持棒の代わりになりそうですが、やはり事前に機首部に錘を入れておくべきでした。作例では仕方なく、鉛の小径棒を黒く塗り、前脚の収納口に後付けしています。こだわらなければ、これでも問題ありません。



 キットの塗装は、第11偵察飛行隊(11RS)所属のRQ-1L(97-3034)に仕上げました。この機体は後にヘルファイヤー・ミサイルを搭載するMQ-1Lに改修されています。 RQ-1Lは寒冷地でも使用できるよう、エンジンやアビオニクスをA型から改良、さらに防氷装置が追加されていますが、外観上はほとんどA型と区別できません。




キットには美しく印刷されたカルトグラフ製のデカールが付属し、7種類の機体に対応しています。しかしながら、実際キットのままストレートで製作できるのは4種類のみで、NASAのATLAS UAVは機首やエンジン周りが異なるRQ-1の原型となったGNAT UAVで、また残る2種類の機体は、背面に通信用アンテナの大きなレドームが付いた機体で、キットには対応する部品が入っていません。

説明書の3ページ目の下に「塗装図ではキットの形状と異なるタイプの機体も掲載しています。上級モデラーの皆様は、お手元の資料等を参考に改造をお楽しみください。指示の無いデカールはご自由にお使いください。」と、小さな文字で注記されてはいるのですが、少し不親切にも思いました。しかし、デカールがおまけだと思えば、何となく納得。出来上がった姿を見ていると、そうした不満も忘れてしまいました。無人機の入門キットとしては、うってつけのものかもしれません。


完成機全景。アスペクト比の大きな長い翼が滞空型無人機の特徴でもあります。


2.  RQ-4B グローバルホーク




完成すると、全長は20㎝足らずですが、全福が55㎝ほどにもなり、1/72スケールの機体としては大きな機体となります。表面はプリデターと同様に若干の梨地仕上げですが、それほど気にはなりません。このキットも大きな割に部品点数は少なく、シンプルなように見えます。しかし組み立ててみるといくつかの問題点が浮かび上がってきます。まず組立に当たってはエンジンインテーク内側、エンジンファンと排気口は先に塗装して胴体に組み込んでおかなければなりません。

またこの機体もテイルヘビーのため、機首に錘を取り付けます。このキットの説明書には10gの錘が必要と記載されているので助かりました。胴体は下面と上面左右の3部品で構成されますが、後部胴体の上下面の接続部に若干の隙間が生じました。また、V字型の尾翼を支えるパーツが胴体と別部品になっていますが、この部品と胴体の接合部にかなりの隙間が生じたため、パテで埋め、修正しました。(写真1)その後各部を整形すれば胴体の工作は終了です。



次に2枚の尾翼を胴体に取り付けますが、取り付け角度をきっちり決めるため、インターネットで探しだした図面から尾翼の傾き角を図り、写真2のような治具を作りました。尾翼にはピトー管が成形されていますが、繊細な太さです。工作中に破損させないよう、ストローを使って保護キャップを作りました。

(写真3の白いチューブがそれです。)そして尾翼の後縁上部に真鍮線で作った放電策を瞬着で取り付けた後(写真3)、治具を使って尾翼を胴体に取り付けます。写真4がその状況です。こうして尾翼が取り付くと、残るは主翼です。



写真1 グリーンの部分がパテで埋めた箇所です

写真2 尾翼の簡易取付治具



写真3 尾翼に取り付けた放電策

写真4 治具を使って尾翼の位置決めをしているところ

主翼は、最初に胴体内へ組み込む主翼固定パーツによって、着脱が可能な形で組み立てることができるのですが、やはり角度が安定しないこともあり、本作品では接着して固定してしまいました。実機の左右の主翼は、翼端で少し沈む程度に湾曲します。この主翼の撓みが左右で同じようになる様、注意が必要です。

作品のキットでは左右で若干の違いがあったため、垂れ下がり具合を矯正し、ほぼ同程度の撓みとなる様に調整しました。なお主翼端の後縁側には、尾翼と同様に放電策を取り付けました。また機首には赤外線センサーの光学窓がモールドされていますが、クリアレンズに置き換えるため、削り取っておきます。


 ここまで組み立てた状態で塗装にかかります。長い主翼が少し邪魔になりますが、この状態で塗装にかかります。エンジンインテークと排気口をマスキングし、主翼上面と脚収納口、そしてインテーク上面にあるGPSアンテナの付近を白色(FS17925)で吹き付け、乾燥後、主翼上面とGPSアンテナをマスキングし、残りの部分をガンシップグレイ(FS36118)で塗装します。脚扉も同様に内側を白、外側をガンシップグレイで塗っておき、脚を付けた後接着です。脚は機体の大きさからして少し華奢な感じがしますが、スケール通りになっています。

特に主脚の取り付けに置いては脚が地面に対し直角になる様、注意が必要です。その他にもアンテナやピトー管などの小物の接着作業がありますが、最後にデカールを貼り、クリアーフラットでオーバーコートして完成です。デカールはカルトグラフ製の良質なものが付属しており、ガンシップグレイを基調とした米空軍9RW/12RSのグローバルホークとドイツ空軍のユーロホーク、そして白を基調とした米空軍412TWとNASAの所属機を作ることができます。作例では9RW/12RSの機体としました。完成品の写真を写真5~8に示します。何となくのっぺりした感じですが、実機もこんなものなので、特徴をよくつかんだキットだと言えます。


写真5 主翼の長いのが良く分かる写真です。
片持ちで形態をしっかり保持できる設計はなかなかのものです。



写真6 この角度から見るとインテーク内のエンジンファンを見ることができます。



写真7 主翼上面の白色塗装が唯一のアクセントです



写真8 ひっくり返して下面の様子を撮ってみました。機体の大きさに比べ、脚が華奢な様子が分かります。



以上、プラッツのRQ-1AプリデターとRQ-4Bグローバルホークの作例についてご紹介しました。これ等の無人機を製作して最も感じたことは、コクピットもなく、塗装の塗り分けも少なく、手間をかけずに形にできるというストレスフリーのモデリング感でした。

厄介な有人機の製作の合間にこうしたキットを製作してみるのも、模型を作る楽しみ方の一つかもしれません。みなさんも試して見られては如何でしょうか?



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Vol.70 2014 June.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
           editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

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