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プラモデルの製作

三菱式雁型通信機 朝風 (マニア 1/72)

  by 加藤 寛之

 「神風」号の姉妹機。三菱式雁(かりがね)型通信機とは、軍が買えば97式司令部偵察機となる飛行機を民間に販売するときの名前で、それを買った朝日新聞社がその1機を「朝風」と名づけた、ということ。軍用機といっても民間会社の商品だから、理屈のうえでは民間人が買える。「愛国」号や「報国」号といった献納機もその仕組みを使っているわけで、民間がお金を出して買ったことにして軍に寄付する、という考え方なわけだ。 軍だって、まず民間会社の商品を買ってから自分で機銃や装備品を付けるのであって、最初から軍用機のわけではない。書くと何だか良く分からないので、これでオシマイにする。




 マニアは、かなりマニア好みの日本機を商品化したメーカーで、その金型はハセガワの手に渡っていることはご存知のとおり。ハセガワはマニアのキットを自社商品として発売する前に、はめ合わせの凹凸を追加したらしいが未確認。今回作ったものはマニア製品。 行きつけのワールドホビーショップはせがわの店主が融通してくれて、ごく最近に入手した。所属サークルSLBの来年5月の展示会テーマが偵察とか哨戒とからしいので、嬉しかった。




 良く出来たキットである。コックピットは床板に計器盤、隔壁、椅子といった内容で、当時としては充分な再現だ。側壁のモールドはないが、側面の窓の部分は田型に薄くしてあり、機体に応じて自分で開口できるようになっている。エンジンとカウリングは絶妙な大きさで造ってあり、カウリングを組んで後ろからエンジンを挿入できて、しかもガタがない。難点は止める位置が定まらないことで、これは側面から見てスピンナーからの整形部分が少し見えるくらいに接着すればよい。ガタがないので、流し込み接着剤を2、3か所に入れれば固定できる。 胴体と主翼、水平尾翼の取り付けは多少の食い違いや隙間はあるものの、特に指摘するほどのものではない。風防はワクの線位置がマズく、作例は側面のワク線をすべて削り落とした。上部左右を前後に走るワクの位置も高すぎでマズいのだが、これはそのまま使った。おかげで側面の窓がやけに大きく見える。風防の透明パーツは、胴体との合いの調整も必要だ。それなり程度に削り合わせても残った隙間には水性ボンドを流し込んで膜を作り、乾いてから色を塗って目立たなくしておいた。




 朝風のことはよく分からないので神風で説明すると、機体全体はパネル接合部分をパテで均してあるのでプラモデルならばツルツルでよく、スミ入れなど大間違いになる。当然、塗装による銀色だから、全面が同じ銀色である。模型的には、楽というのか、単調だというのか、とりあえず私は前者支持である。青はGSIクレオスMr.カラーの322番で、ブルーインパルスの青を使ってみた。この色、私的にはいい感じの色なのだが、なにしろ隠ぺい力が低い。作例の写真をみると、背景から反射した光が窓ワクを透かしているのが分かる。置いてあるのを見る限り窓ワクが透けはしないので、まあイイや、である。青の塗りわけ位置は、朝風と神風では微妙に異なる。当然、そんなことは全く気にしないで塗り分けておいた。だいたいそんな感じならばOKなのだ。プロペラ裏面はこげ茶色にしてみたが、確証はない。 困ったことは、朝風の場合のデカール貼り位置が大雑把にしか書いていないこと。ここは調べもせずにテキトウに貼る。朝風はこの塗りわけのほかに、青を風防前だけにしてしまい、風防ワクは銀色にしたときがある。青の透けが気になるときは、こっちの塗装にする方法もある。ただ、神風と同じ塗装にしておけば、デカール貼りで失敗したときに便利である。こんな発想も、模型作りの裏技だと思う。キットの造形でひとつ書くと、実機の主翼フィレット後端は胴体とスッキリした曲線でつながっておらず、横にはみ出しているかのような形が正しい。一般的にプラモデルでは主翼フィレットの形が曖昧なものが多く、特に後端はテキトウだ。だれも気にしないから、私は気付いても許容範囲にしている。





 最後に実機について書いておく。『日本民間飛行機全輯』昭和15年版(「空」臨時増刊、工人社)の三菱式雁型新聞輸送機の要目に、上反角左7度・右6度30分、前縁後退角左9度・右8度50分とある。左右で異なる理由は書いていないが、そう指摘されているのだ。 長谷川一郎氏は『航空ファン』1984年8月号でこの左右非対象を「製作誤差ともみられる」としているが、その根拠は不明だ。もう一つ、この飛行機には翼端灯が見当たらない。


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