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特集 レベルのプラモデル

X-15 (レベル 1/64)

by  田口博通 Hiromichi Taguchi




 遠い1960年代の頃の記憶ですが、月刊のマンガ本(日の丸)に横山光輝の作画でX-15が登場しました。サブマリン707と同じようなSF戦闘もので、X-15が自衛隊の空母を発着艦する艦上ロケット戦闘機となり、お決まりの主人公の少年パイロットが搭乗するという 今から思えば はちゃめちゃな設定でしたが、小学生の私は 毎号の展開を楽しく読んでいました。
 なぜ 良く覚えているかというと、付録でX-15のペーパーソリッドモデルがついており、組み立てた記憶が鮮明にあるのです。胴体下面の垂直尾翼がとにかくかっこよく感じたものです。マンガでは胴体下面の垂直尾翼は空母着艦時には折りたたんだように思います。
 少年にはロケット機とジェット機の区別もわからなかったので、何の不思議もなくX-15はただかっこいい戦闘機だと思っていました。それ以来、X-15は憧れの飛行機でした。
 このレベル X-15 懐かしくご覧になるモデラーも多い事でしょう。良く知られているように1/64というハンパスケールのプラモデル黎明期 1959年初出のいにしえのキットです。
 グンゼからX-15が国内版として発売されたのは1964年だそうですが、当時は四国高松に住んでいたこともあり、近隣の模型店で見かけたのは一度きりです。「欲しいと思った時には既に無し」そういう時代でした。

 幸運にも入手することができたのはごく最近のことで、それもグンゼ版ではなく、後年ブラジルレベルから発売されたキットです。全く読めないポルトガル語の説明書がついていました。
 今回 デスクトップモデルとして組んでみましたが、少年時代を思い出しつつ、感動の製作となりました。

ブラジルレベル版のX-15

製作 

 部品点数は少なく、胴体は上下分割で、主翼は上胴体と一体に成型されています。  しかし、オールフライングテールの水平尾翼は可動式で、垂直尾翼も組み方によっては実機通りに可動も可能という 押さえるところはしっかりと押さえられたキットでした。

胴体部品と 水平垂直尾翼部品


 残念なことに、事後変形で上胴体が少し開いており、そのため、主翼に上半角がついてしまっていました。いい大人となった今は ここは少しもあわてず、一度主翼を切り離し、接合用の金属ピンを2本打っておきます。

 
 また、人類最速のロケット機ですから、翼は前後縁をしっかりと薄く削ります。削る際に 貴重な1959年製の刻印が消えるともったいないので、アルミテープでしっかりとマスキングして整形しました。

 貴重な主翼下面つけねの 1959の文字


 胴体を上下で接着し、主翼を再接合すると見事に形に。資料では主翼上半角はゼロとありますが、NB-52に吊り下げられた記録写真を見ると、少し 下半角がついているように見えます。それで気持ち程度 下半角をつけました。 また、各部のヒケも瞬間接着剤をパテ代わりに使い、綺麗に埋めて整形しておきます。




 実機は全面グロスブラックですが、当時のカラー写真では高空の蒼を機体が反射して若干青みがかって見えます。それが長く抱いてきたX-15のイメージでした。
 それでブラックではなく、Mrカラー71 ミッドナイトブルーを吹き付けました。いい感じになりました。
 航フ世傑No.67X-プレーンズを見ながらデカールを貼り、デカール保護を兼ねてMrカラーのクリアを吹いてテカテカの艶にしました。これぞデスクトップモデルという感じの仕上がりです。



 簡単ながら ロケットエンジンを内蔵しており、取り外して見ることができます。
 コクピットも 座席と一体成型のパイロットを乗せるのみの簡単なものですが、ほとんど見えないので これで充分です。航フ世傑によるとパイロットは新しく開発された高高度飛行用の与圧スーツA/P22S-Sの試作品を着ています。キャノピーは取り外し式です。

完成

 キットの簡単さもありましたが、見事1週間で大満足でイメージ優先の完成となりました。 
 1980年代にモノグラムから真正1/72の決定版X-15キットが発売され、それも素晴らしいものでしたが、このレベルの古のキットもなかなかに素晴らしいスタイルです。
「青は藍より出でて藍より青し」という言葉がありますが、ミッドナイトブルーの機体は「黒は正藍より出でて正藍より黒し」という感じでしょうか。
 

 





(余談)
 X-15の機体材料には高速度時の高温対策のため、インコネルXというチタン合金の新素材が使われました。最高で1300度に達すると予想されたそうです。
 余談ですが、1980年代のこと、電子部品の製造時にビードガラスをガスバーナーで高熱で炙る装置があり、そのビードガラスの金属土台にインコネルXが使われていました。この金属土台は長さ10cmくらいの直方体にビードガラス吸着用の孔がいくつか開いたものですが、インコネルXはチタン合金なので固く、切削加工は極めて大変だったろうと思います。 
 しかし、このインコネルX材を使用した金属土台は極めて丈夫で、高温のガスバーナーでビードガラスごと炙られて赤熱し、高温への温度変化を繰り返すのですが、1万回以上使っても ガラスに焼き付きもせず、金属酸化でボロボロにもならず、形状も全く変化することがありませんでした。ワイヤブラシで少し磨くと金属光沢肌を取り戻します。 
「これがX-15に使われたインコネルXの性能か」と その耐久性に関心した記憶があります。NASAで開発された宇宙軍事技術が市井の民生で使われた典型で、その技術の恩恵を受けました。ありがたいことです。 


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