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特集 NAVY

Vought F-8E ”Crusader” 製作記(Hasegawa 1/48)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


F-8E Crusader (1/48) Hasegawa Box Art より


 1月号の特集テーマ、”NAVY”と合致する作品が完成しましたので、紹介します。作品は、ハセガワのVought F-8E “Crusader”、1/48スケールです。E型に続いてJ型が発売されたときには、このキットがシリーズ化してくれるものと思い込み、後続キットの発売を大いに期待したものです。残念ながらその思いは、期待外れに終わってしまいました。偵察型のRF-8や試作で終わりましたが、複座のTF-8A等は魅力的なバリエーションで、キット化されれば多くの飛行機モデラーを喜ばせてくれたに違いありません。 クルーセイダーの1/48スケールキットは意外に少なく、過去にはオーロラやリンドバーグ、そしてエッシーのキットがありましたが、現在手に入るのはモノグラム(現レベル)とハセガワのキットぐらいしか思いつきません。ハセガワがリリースするまではモノグラウのキットがベストキットでしたが、現在はハセガワのキットがその座を奪ったように思います。勿論このキットにもいくつか不満はありますが、まずは許される範囲で、あとはモデラーの努力次第といったところでしょうか。私もいくつか失敗を重ねながらやっと完成させた次第です。ではまず実機の概要を紹介し、製作過程の説明に移ります。


Vought F-8E Crusader (Hasegawa 1/48)

実機紹介

 F-8クルーセイダーの誕生は、米空軍がセンチュリー・シリーズの開発に乗り出した時期と重なります。この時期、米空海軍ともに、超音速戦闘機の実現に躍起となっていました。1952年9月に海軍は、艦上戦闘機としては初の超音速昼間戦闘機の要求書を発行しました。これに8社が応じましたが、グラマン社のF11Fタイガーとヴォート社のXF8U-1クルーセイダーに絞り込まれたのです。最終的にはクルーセイダーが選ばれ、各種審査を経て、試作作業に入りました。 1955年3月、完成したXF8U-1の試作初号機が、ヴォート社のあるテキサス州ダラスから試験評価が行われるカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地に運ばれ、3月25日には初飛行に成功します。しかも初飛行でレベルフライトでの音速突破に成功し、海軍の関係者を大いに喜ばせました。このときのエンジンは空軍のF-100と同じ、推力4,636kg(アフターバーナー使用時6,000kg)のP&W J57-P4でした。


 1955年の9月30日には早くも量産初号機のF8U-1(後のF-8A)がダラスでロールアウトしています。このときエンジンは、推力アップしたP&W J57-P-4Aに換装されており、これによって高度50,000ftで速度マッハ1.5が可能になりました。 そして空母フォレスタルでの空母適合性試験の後、1957年3月には大西洋艦隊所属のVF-32への配備が始まっています。試作機の初飛行から2年後の部隊配備は、今では考えられない速さです。


 F-8の最大の特徴は、主翼の取り付け角度を可変できる構造で、これによって着艦時の機首上げが不要になりました。このメリットは大きく、着艦時のパイロットの視界を良好にし、事故の減少にもつながっています。主翼は、外翼が折りたためる構造で、内翼には2分割のフラップ、外翼、内翼の前縁にもフラップが付いており、離着艦性能に優れていることが分かります。また当初はなかった空中給油の受油装置が、F-8Aの量産50号機より取り付けられ、コクピット後方の左胴体側面にその収容部の膨らみができました。その後も近代化されるごとに少しづく形態に変化が生じ、C型では機体の安定強化のため2枚のベントラルフィンが追加されています。  またD型ではレーダ火器管制装置のAPQ-83への更新で制限付き全天候戦闘機ともなり、武装も、Mk.12 20mm機関砲4門は変わらないものの、胴体下のロケット弾パックを外し、代わりにサイドワインダーAAMが4発装備可能となりました。
 最後に量産されたのがE型です。E型では全天候戦闘機化するため、火器管制装置がAPQ-94に更新され、これによりレーダアンテナが大きくなり、機首レドームも大型化しています。またレドームの上方には赤外線探知装置が追加された他、主翼にはパイロンが装着可能となり、AGM-12ブルパップASMや爆弾など対地兵器の搭載も可能となりました。またエンジンは、推力5,170kg(アフターバーナー使用時8,160kg)のP&W -57-P-20Aに換装され、最大速度も高度45,000ftでマッハ1.97にまで達しています。


Vought F-8E Crusader (Hasegawa 1/48)

 試作機の2機を含めると、戦闘機型のクルーセイダーは、米海軍と海兵隊向けにA型からE型まで、1075機が生産されました。加えてE型をベースにしたフランス海軍向けのF-8E(FN)が42機生産されています。生産終了後もクルーセイダーの改良は続き、1968年以降にはE型の136機をJ型にアップデートし、構造強度の増強や着艦性能の向上が図られました。 またB、C、D型もそれぞれ、L、K、H型にアップデートされています。一方で偵察型のRF-8Aも143機生産されています。外観上の違いは、機首左右、及び下面にカメラ窓が追加されている点、ベントラルフィンと空中受油装置を持たない点です。このRF-8Aも53機がベントラルフィンの追加などの改修を受け、RF-8Gにアップデートされています。


 ヴェトナム戦争では、能力の大きなF-4ファントムに徐々に主力戦闘機の座を奪われていきましたが、その小回りの良さから小型のウェセックス級空母では使用され続けました。2 0mm機関砲によるミグ機撃墜も記録し、米海軍最後のガンファイターとなっています。

製作

 クルーセイダーはハイビジ華やかりし頃の機体のため、派手なマーキングの機体が数多くあります。ハセガワのキットにもVF-191とVF-194のCAG機と飛行隊長機の大判デカールが入っており、派手なマーキングを楽しめます。しかし今回はスーパースケール・デカールのNo.48-865を使用し、空母ハンコックに搭載されていたVF-53のCAG機に仕上げました。
ハセガワのデカールも良質で、スーパースケール・デカールに無い細かなステンシルは、キットのデカールを使用しました。その他、コクピット内の計器盤にはエデュアルド製のエッチングパーツを、アフターバーナー部冷却空気エアースクープにクイックブーストのレジンパーツを使用しています。


Vought F-8E Crusader (Hasegawa 1/48)

 箱を開け、ビニール袋を開封すると綺麗に彫刻されたパネルラインが目に入ります。しかし胴体の上下部は消えかかった場所もあり、予めPカッターなどで彫り込んでおく必要があるようです。部品はどれも良くできています。目についたのはポリキャップが入っていたことです。インストを見ると脚や水平尾翼、それに主翼の取り付けにこのポリキャップを使うようです。最初は少し不安もありましたが、結果的には使い易く、グッドアイデアだと思いました。脚の位置や尾翼の角度もピタッと決まり組み立てもしやすいという優れモノです。 部品はそれほど多くなく組み立てやすい構造です。しかし胴体を左右接合する前に、穴あけをしたり、コクピット、主脚収納功部、エアーインテイクなど、先に組み込んでおかなければならない部品があり、その辺はよく注意して組み立てていく必要があります。では、製作の過程について順を追って紹介していきます。まずは胴体へ詰め込むものから始まります。


1.コクピット
 コクピットはシンプルなバスタブ式のもので、コクピットに計器盤とコントロール・スティック、そして座席を取り付けるだけです。計器盤は細かく彫刻されており、上からデカールを貼ればそれらしく仕上がります。組み込めばこれで十分だと思いますが、今回はエデュアルドのエッチングパーツでディテールアップしてみました。 (写真1)が主計器盤で、(写真2)がサイドコンソールとペダルを貼り付けたバスタブ式のコクピットです。コントロール・スティックを取り付けて胴体に仮組したのが(写真3)です。

(写真1) 主計器盤 
(写真2) コクピット


(写真3) 胴体に仮組したコクピット


2.インテイクダクト
 次にインテイクダクトです。インテイクダクトは上下2分割されており、下のパーツには前脚収納部もモールドされています。ダクト部分は、エンジンの圧縮機ファンまではモールドされていませんが、前方からは見えないところまで作りこまれています。塗装を考えると上下パーツ別々に白色塗装し、接着して胴体に組み込むというのが最も簡単な方法なのですが、やはり継ぎ目が目立つ可能性があります。作品では、閉じているエンジン側のダクト部を開口し、上下接着してから接合部を整形し、その後前後から塗料を吹き付ける方法でダクト内部全体を塗装しました。 開口した穴は塗装後プラ板で塞いでいます。インテイクダクト内の整形では、上下接合部にMr.ベースホワイトを塗りこみ、乾燥後、時間をかけてサンドペーパーで整形ていきました。(サンドペーパを細い丸棒に貼り付けて使用しました)しかし整形はこれで終わりません。胴体に組み込んだ後、胴体のリップ部とのすり合わせが残っています。
(写真4)が整形、塗装後のインテイクダクト部です。

(写真4) エアーインテイクダクト



3.主翼取り付け部構造と主脚収納部
 主翼取り付け角度をアップした状態で組み立てる場合には、機体の内部構造が覗くため、キットにはこの部分のパーツが入っている。ワンピースで、塗装後、主翼を支えるシリンダー部の取り付け部にポリキャップを取り付けるだけです。塗装色はインテリアグリーンです。(写真5)がこの部分です。 また丁度この下に来る主脚収納部は4つの部品から構成されており塗装後、主脚柱を取り付けるポリキャップを付けておきます。塗装色はMr.カラーの316番のインシグニアホワイト( FS17875)です。油圧配管なども細かくモールドされているので、墨入れをしたり、塗分けると実感が出ます。(写真6)


(写真5) 主翼下機体構造部 
(写真6) 主脚収納部



4.胴体
 これまでのサブアセンブリーが完成すれば、胴体に組み込みます。写真7が左側胴体パーツにこれらを取り付けた形態です。上述のサブアセンブリーの他に着艦フックの収納部も取り付けます。 なお、インストでは指示がありませんが、念のため錘をノーズコーンの中に入れています。(写真では見えません)

(写真7) サブアセンブリーを取り付けた左側胴体パーツ



 またこの時点で、アフターバーナーの冷却空気用エアースクープを後部ノズル部へ取り付けます。キットのこの部品はインレット部が開口されてないため、前述のクイックブーストのレジンパーツを使用しました。(写真8)のように、開口されているのが分かります。 (写真8) アフターバーナー用冷却空気用エアースクープ

 その後左右胴体パーツを接合し、接合部を整形していきます。機首のインテイクリップ部は、インテイクダクトの塗装済みの部分をマスキングしてサンドペーパーで整形してい きました。(写真9)
また垂直尾翼にあるECMアンテナの膨らみを取り除き、航法灯のクリアパーツを入れる部分を丸くくり貫きました。(写真10)
この整形が終わり、ベントラルフィンを取り付けると、胴体部の工作はほぼ完了です。


(写真9)インテイクリップ部の整形右胴体内側
(写真10) 垂直尾翼の追加加工




 次に胴体の塗装ですが、下面とラダーがインシグニアホワイト(FS17875)、上面がライトガルグレイ(FS16440)の米海軍標準塗装ですが、エンジンノズルのアフターバーナー部分と水平尾翼の可動部分は、金属色で垂直尾翼前縁が、腐食防止のアルミコーティングとなっています。また作例のVF-53の機体はノーズレドームが黄色に塗られているため、まずはレドーム部を黄色(FS13538)に、そして胴体後部をメタル色(黒鉄色+銀少々)に塗りました。垂直尾翼の前縁はフィニッシャーズのファインシルバーを使用しています。そのうえでマスキングをして、白とガルグレーの塗装を行いました。 (写真11)はノーズレドームの黄色と、胴体下面とラダーの白を塗装後、マスキングしてガルグレーを吹き付ける直前の状態です。上面色と下面色の境界はぼかしになっているため、マスキングテープのエッジを僅かに浮かせています。
(写真12)は、胴体後部をメタル色で塗り分けたところです。この後マスキングします。


(写真11) 機首部のマスキング状態(ガルグレー塗装前)
(写真12) 胴体後部を黒鉄色で塗った状態



(写真13)は、ライトガルグレイ塗装後、さらに機関砲銃口周辺を艶消しの黒で塗装した後の状態です。
また(写真14)が、胴体後部のメタル色塗装後にマスキングテープを外した状態です。
実機では水平尾翼が可動する胴体側の部分(ピボット中心から前方に44インチ、高さ方向に、前方部で±6インチ、ピボット中心で±4インチの幅)を無塗装としています。

これで胴体部分は、ひとまず完了です。

(写真13) 塗装後の機首部 
(写真14) 塗装後の尾部



5.主翼
 主翼は、外翼、内翼一体成型の上下貼り合わせとなっています。また前縁フラップと後縁フラップが、それぞれ2分割で、前縁の外翼フラップ以外は上下貼り合わせの構成です。いずれの動翼も接着後のエッジは分厚いため、サンドペーパで少し肉を落としました。それでもだるいエッジとなりました。作例では各動翼をダウン状態で完成させるため、この状態でばらばらに塗装することにしました。 塗装色は、主翼上面と前縁フラップの上面がライトガルグレイ、下面がインシグニアホワイト、後縁フラップは上下面ともにインシグニアホワイトです。また前縁フラップの前縁部は、腐食防止のアルミコーティングが施されています。塗料はインシグニアホワイトがMr.カラーの316番、ライトガルグレイが315番、アルミコーティングがフィニッシャーズのファインシルバーです。(写真15)が塗装を完了した主翼部分です。

(写真15) 塗装の完了した主翼部



6.その他小部品
 完成写真では少し分かりづらいため、その他の小部品についても簡単に紹介しておきます。(写真16)が水平尾翼です。デカールも貼った状態です。一体成型のシンプルなもので、上下面ともインシグニアホワイトで、前縁がアルミコーティングです。
(写真17)がエンジンノズルです。アフターバーナー部とノズルの2部品構成で、胴体完成後に後ろから差し込めるため、作りやすい構造です。塗装は黒鉄色でベースを塗り、排気のすすを表現するため、上から艶消しの黒を適度に吹き付けています。


(写真16) 水平尾翼
(写真17) エンジンノズル



 次に脚と主脚収納部の扉です。(写真18)が前脚、(写真19)が主脚、(写真20)が左右の下側主脚扉です。形も良くできています。
いずれも既にデカールを貼った状態ですが、このデカールはキットのものを使用しました。こうした細かなステンシルがリアル感を与えてくれます。
(写真18) 前脚 


(写真19) 右主脚
(写真20) 主脚収納部扉(下側)

 また(写真21)が風防で、(写真22)がキャノピーです。風防前方の赤外線スキャナーは別パーツとなっており、前方のウィンドウ部分をインストの指定通りクリアレッドとクリアブルーを1:1で混合した塗料で塗っています。 乾燥後風防に接着し、スキャナーと風防のウィンドウ部をマスキングして まず艶消しの黒を吹き、ウィンドウのシール部分を残して再びマスキングし、タンを吹き付けました。多少のずれが出ましたが許容範囲としました。キャノピーのシール部分も同様の方法で塗装しています。塗装完了後エッチングパーツのリアビューミラーや内装パネルを取り付けています。

(写真21) 風防
(写真22) キャノピー

 最後にシートですが、最初はシートだけ載せる予定をしていましたが、実機では油圧オフの状態では胴下のエアーブレーキが開いていることを思い出し、急遽パイロットを乗せ、動きのある状態を表現することにしました。
 (写真23)がパイロットフィギュアを乗せたシートです。このフィギュアでは顔の向きを少し変えています。最初塗装したフィギュアをシートに乗せ、コクピットに収めようとしたのですが、何処かが閊えて入りません。パイロットのシューズの先を削りながらなんとか収まるようにした次第です。またキットではキャノピーと胴体との合いは良好なのですが、ヒンジの部分が分厚く、胴体側の掘り込み部分に引っ掛かりそのままではオープン状態にはできません。このため、塗装が終わっていましたが胴体の嵌め込み部分やキャノピーのヒンジ部分を追加加工し、オープン状態にできるように修正しました。事前のフィットチェック不足です。 (写真23) パイロットを乗せたシート


7.デカールの貼り付けと最終組み立て
 デカール貼りは苦手作業の一つで、いつも緊張を強いられます。今回も予備がないので慎重に進めるしかありません。スーパースケールのデカールは少しオーバーサイズの気がしますが、やむを得ません。マークフィッターと水性ボンドを使いながら一つ一つ貼っていきました。 (写真24)が貼り終えた胴体、
(写真25)が貼り終えた主翼です。
このあと、セミグロスのクリアーでオーバーコートし、パネルラインに少し墨を入れました。


(写真24) デカールを貼り終えた胴体
(写真25) デカールを貼り終えた主翼


 そして最終組み立てです。まずはコクピットにパイロットフィギュアを押し込み、風防、脚や脚カバー、水平尾翼、前胴部のミサイルランチャー、そしてAIM-9Dなど胴体に取り付けるものを付けていきます。サイドワインダーはキットには付属していないためハセガワのウェポンセットを利用しています。また主翼にはパイロンや航法灯を取り付けます。動翼は胴体と主翼を結合してから取り付けます。 主翼は取り付け角度をいっぱいにあげた状態にセットしました。例のポリキャップを使っての取り付けですので、主脚同様ピタリと決まりました。そして動翼をダウン状態で主翼に接着し、キャノピーとピトー管を取り付けて完成です。キャノピーは前述のとおりオープン状態の取り付けで苦労しました。ピトー管は真鍮パイプと真鍮棒を組み合わせて自製しています。(写真26~写真28)が完成したクルーセイダーです。

(写真26) 完成したF-8E


(写真27) 完成したF-8E


(写真28) 完成したF-8E




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