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2020年2月

                                       (by webmodelers編集部 田口博通)

紙鑑定士の事件ファイル模型の家の殺人

 

① 紙鑑定士の事件ファイル模型の家の殺人
② 株式会社宝島社
③ 本体価格 1,380円 (税抜き) 2020年1月10日発売
④ 第18回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作
どんな紙でも見分ける紙鑑定士と、伝説のプラモデル造形家が、ミニチュアハウスに隠された殺人計画を追う!
「その紙が答えを知っている。」 
証拠品の手紙付き! 読者参加型ミステリー

 第18回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作の本書は、紙鑑定士と伝説のプラモデラーという これまでの謎解き小説にはなかった未知のキャラクターが組んでミニチュアハウスに潜む謎に挑むミステリーで、
紙にまつわる薀蓄と模型にまつわるユニークな蘊蓄が至るところに披露され、それがなかなかに面白い。
  著者である歌田年(うただ・とし)氏は1986年から2011年までホビージャパン編集部と電撃ホビーマガジン(2015年休刊)の編集部で勤務した経験と、大手出版社の生産管理部で印刷用紙の調達に従事していた中で得た模型と紙に関する知識を活かして本書を書いたそうである。
 さて、内容だが、主人公は大手紙問屋から独立し、現在は西新宿で「渡部紙鑑定事務所」を開く紙商の渡部圭。依頼人が「神探偵事務所」と勘違いして持ち込んだプラモデルが関係する事件を、伝説のプラモデラー(某大手プラモデルメーカーの逆鱗に触れる記事を書いて、以後、業界から干されたライターさん)土生井昇に相談しながら解決していくというストーリーである。
 
 ネタバレにならない範囲で紹介すると、
物語は さえない主人公が夏の太陽の下で、神保町界隈での御用聞きの重たいカバンを手に新宿から路線バス代を節約するために甲州街道を疲れてぐったりと歩くところから始まる。
中盤は少しペースが上がり 犯人が作った?ディオラマに仕組まれた謎を伝説のプラモデラーが解きつつ、2件の殺人事件に巻き込まれる。
それが終盤は一挙に加速し 豊乳美女のモトカノ(小池栄子を配役したい)が赤いランボルギーニ アヴァンタドールに乗って登場、大量殺りくを阻止すべく東北道を制限速度の3倍 250キロでぶっとばし、ラストに突入するのである。
 
 プラモデラーにとっては、冒頭からブライザーのフィギュア、サンゴータミヤヒトマル、メルカバ、積みプラ、キムワイプ、ガンプラ、スグミなどなど 聞きなれた用語が連発され、くすっと笑える。
2件の殺人事件にミステリー小説でお決まりの謎解きが全く無いというのも異色。
また、ラストで重要な役割を果たすトランプ手裏剣に至ってはハードボイルド映画風で、これは「エースのジョー」ですか?とつっこみたくなる。
 伝説のプラモデラー土生井の風貌がゴミ屋敷に住む、丸メガネをかけた50代くらいの天然パーマでグレーの
スウエットパンツ姿。(
滝藤賢一が一押し
ホビーグラフ編集部員のキャラクターTシャツに綿パン、めがねで小太りな男という風貌も(
荒川よしよしか山崎樹範を配役したい)
なんとなくデジャブ感が、、、
 このホビーグラフ社は、小説の設定では飯田橋から九段方向に10分ほど歩いた場所にあるというので、てっきりモデルアート社の旧オフィスがモデルとして登場するのかと思ったら、予想に反して、そこにはガーンと背の高いガラス張りのビルが登場。8階から上のフロアを占めるメデイアティーク社の中にホビーグラフ編集部があり、1階には美人受付嬢3人と警備員がいると、、。そうか、このビルは超大手カドカワの本社ビルがモデルの描写だったようだ。普通の模型雑誌社に 美人受付嬢が、なんてことはありえないので 読者の皆様には模型雑誌社についてくれぐれも甘い幻想を抱かぬように。
 ちなみに2013年にアスキーメデイアワークスがカドカワに買収された後の2018年4月以降はカドカワ文芸局内に電撃メディアワークス編集部があるのだそうだ。
 
 さて、小説の方は多少、ご都合主義の展開もありつつ、ラストまでヒートアップしながら進んで行く。果たして大量殺りくは阻止できるのだろうか? クスッと笑えるモデラーに関するディテールがちりばめられており、プラモデラーには お奨めの一冊!

 なお、個人的には主人公渡部には若き日のとぼけたプロハンター草刈正雄か、今話題の東出昌大を。
"清楚"を絵に描いて”A0スーパーアート紙”に高精度印刷したような美しい依頼人曲野晴子には、もちろん 唐田えりかを配役。
また、刑事役には佐藤二朗を推したい。


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Vol.138.  2020 February.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
                    editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

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