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特集 フジミ

BOEING B-29 SUPER FORTRESS ENOLA GAY
(フジミ1/144)

by 五六式(TYPE-56)



 今回は,”フジミ”の特集に合わせて,ボーイング B-29 スーパーフォートレス エノラ・ゲイを製作しました。高荷先生の美麗な箱絵で私たちを魅了した1/70 F-8D クルセイダーやダグラスA-1H スカイレイダーをリリース,その後、アメリカ海軍機やヘリコプター,Ju87などなど・・・様々なシリーズ物で飛行機モデラーを楽しませてくれたフジミさんですが,時々お茶目なキットを出してくるので困ってしまいます。そんなフジミさんの,例の全長と全幅とで縮尺が違う有名戦闘機のE型(あらあら言っちゃった・・・。)のキットに次ぐ問題作が,このボーイング B-29 スーパーフォートレス エノラ・ゲイではないでしょうか?

人類史にその名を刻む,最凶最悪の殺戮兵器ですが,今回、飛行機のプラモを作る日本人の一人として,これを形にして一つの決着をつけなければならないと思いました・・・結果は,散々でしたが・・・。

キットについても,日本のメーカーこそが落とし前をつけなければならないでしょう。そういった意味でフジミのキットは,問題作なのです(キットのリリースによって世に問題を投げかけたという意味です。)。ちなみに,童友社のキットは,海外メーカーのOEMですからね。 

<実機について>



 ボーイング社の前作,B-17フォートレスを発展させ,排気タービン付きのエンジンと与圧装置の装備によって高高度での作戦を可能にした,まさに超フォートレスと言うべき戦略爆撃機。

これら,B-29の中で人類史初の核攻撃を行い,単機の1回の出撃で史上最多の非戦闘員殺傷を成し遂げた機体が”エノラ・ゲイ”号である。現時点では,機長であったティベッツ大佐も,当時のクルーも,機長の母親のエノラ・ゲイ・ティベッツも,誰も存命していない。きっと,エホバさんのところだか,ヴァルハラだかでのうのうと天国ライフを満喫しているのだろう。願わくば,”エノラ・ゲイ”号の記録が永劫に塗り替えられることがありませんように・・・人類ってどうしようもなくダメダメなところがあるから期待できないけれど・・・。

<キットについて>

  1950年代,初代ゴジラと同い年(1954年)のレベル1/133をはじめ,様々なキットがリリースされていました。プラモ黎明期は,B-29もまだ現役(朝鮮戦争1950〜1953 現在停戦中)で,いろいろな半端スケールのB-29のキットがあったようです。

しかし,現在,入手できる可能性のあるものは,1/48では,1977年初版のモノグラム製のキットとそのOEM,1/72では,1966年初版のAIRFIXとそのOEM,1991年初版のACADEMYとそのOEM,1/144では,1976年初版のクラウンとそのOEM,そして,この1995年初版のフジミ製(25年前のだけれど,これが,最新キットだ!!)と基本的には5種類のみです。21世紀に入って新金型のキットはリリースされていないようです。

ま,呪われた機体だからね。

ものはでかいし,たくさん非戦闘員を殺しているし,頑張って新キットを出しても開発費が回収できるかどうか・・・。タミヤの会長さんは、「B -29」だけは自社で模型化 しないと言っていたそうです。多くの日本人を殺傷した兵器をネタにお金を儲けるのは商道徳上好ましくないという考えなのでしょう。


フジミ製のB-29は,爆撃機型の他に空中給油機型、写真偵察機型もあり,基本的に同じキットをデカール替えとパーツ選択で作り分けられるようになっています。”ファットマン”の部品もあリ,長崎を核攻撃した”ボックスカー”を再現できるキットもあります。今回製作するのは,王道の爆撃機型”ドーントレス・ドッティ”(東京初空襲のとき出撃)というタイトルのキットです。

<製作>

 このキットには,”エノラ・ゲイ”号のマーキングのデカールも入っています。が,キットの説明書には,「このキットには,「エノラ・ゲイ」のカーチス・エレクトリック製プロペラは入っておりません。」と明記されています。あれ?しかも,星形エンジンのモールドが一切なく,このままだと,エンジンレスの,なんちゃって”エノラ・ゲイ”号しか再現できません。


 ここで活躍してくれるのが,キット購入時に入手した,リリパットエアフォースという個人メーカーの,3Dプリンターで出力されたアクセサリーパーツです。型番は,LAF-144-02-027で,B-29用のカーチスエレクトリック製のプロペラとR3350エンジンの組み合わせ4セットです。お値段は,キットよりも高い(実売で約2倍)ですが,プロペラとエンジンの問題が一度に解決します。惜しいことに現在は売り切れとか・・・失敗は,許されない・・・汗・・・。





 キットのままとアクセサリーパーツを使った場合との比較です。プロペラブレードの付け根の形状の違いがよく分かります。エンジンが見えるようにするためには,キットのパーツを開口する必要があります。キットに説明書がついていないのでエンジンの上下や色は,ネットでリサーチしました。また,エンジンのパーツを入れると,カウルが干渉してプロペラの軸がやや下側にずれてしまうことが分かります。

対応策としてカウルのパーツの内側を削って調整することにしました。モーターツールがあれば,簡単に終わる作業ですが,五六式のモーターツールは,倉庫の奥深くで永遠の眠りについているので,彫刻刀の丸刀でカリコリ削ることとなりました。


排気タービンの排気口は,開口しました。組みになっている小さい方の排気口は,工作の効果が期待できないので放置しました。


円い観測窓のマスキングは,マスキングテープを円錐状に巻いたものを差し込むことにしました。写真は,内側から差し込んだ場合と外側から差し込んだ場合を示していますが,後者の方が扱いやすかったです。




風防のマスキングも,リリパットエアフォースさんから出ているマスキングシートを使用しました。非常に貼りやすく,ミスをしたときのために2セット組みになっています。

機首には,かなりの重さのおもりが必要です。完成したら,展示するとき以外は脚部の保護のために機体を浮かせて保存する必要があります。爆弾倉を開ける場合は,どうしてもおもりが見えてしまうので,いっそのこと,おもりを廃止してキット付属の尾部を支える部品を使用するか,前脚のタイヤに両面テープを貼って立たせるか,他のキットからパイロットをスカウトして飛行姿勢で完成させるかした方が簡単です。

また,フジミのB-29は,主翼の迎角が大きすぎて,実機もそうなら,まともに飛べないだろうというキット評がありました。しかし,実機写真を見ると,たしかに,主翼の迎角が大きいように見えます。修正も大変だし,ここは,放置だね。

主翼や尾翼の前縁の塗装を考慮してそれぞれの部品を塗装してから組み込むことにしたら,さぁ大変,ちっとも胴体にくっついてくれません。塗装前に接着面をマスキングして保護しておくことをおすすめします。

<完成>



  B-29が好きな日本人なんてほとんどいないでしょう。五六式にしたって,両親のどちらかが空襲で亡くなっていたらこの世に存在しなかったし,身内が亡くなっている人なら,なおさらです。しかし,皮肉なことに,B-29による高松空襲があったからこそ,五六式がこの世に存在しているとも言えるのです。高松空襲がなければ,多くの若者が生き残り,父親にも母親にも配偶者を選ぶ選択肢がたくさんあったとしたら・・・汗・・・。同じように,現在,この世にいる多くの日本人が,この世に存在しなかった可能性があるのです。




これから民間人を十万人ほど焼き殺しに行くのに乗っていく機体に,母親の名前をつけるというセンスにはついて行けん・・・これも,親孝行というものなのか・・・?

機首のピトー管の配置は,キットの指定と違っているようです。



キットには,”ENOLA GAY”のマーキングのデカールが二つついていますが,保存されている実機の写真を見ると,右側面には,”ENOLA GAY”のマーキングは無かったようです。調べといてよかった・・・。(デカールは,高品質で貼りやすかったです。)

ちなみに,前脚収容部のカバーのマーキングは,”NO SMOKING WITHIN 150 FT(150フィート以内禁煙)”。他のB-29には無いことから,「近くで煙草を吸うと引火して原子爆弾が爆発しちゃうぞ〜」的なジョークみたいです。



本土防空戦で,迎撃した日本軍のパイロットが見たであろうB-29の背面(”ENOLA GAY”には銃座のほとんどが撤去されていました。)。・・・何も言えん・・・。



 B-29のことを知らずして,喜々としてボーイングの旅客機に乗って旅行している日本人のなんと多いことか・・・。しかし,五六式は,知っています。737も,747も,767も,777も,787も,B-29の技術の延長線上にできているということを。


今月のもう一つの特集は,レッドスターだけれども,白い星も,赤い星も,青い星(六芒星のあれ)も禍々しいねぇ・・・。


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