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誌上個展

<日本航空史> 91式戦闘機の色

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

 これは91式戦闘機に限ったことではないのだが、説明に便利なので91式戦闘機で書くことにする。①の「愛国69号富国」号の彩色絵葉書を見てもらいたい。スキャンなので分りにくいが、機体が青黒っぽいのは機体部分に薄く銀色が塗布されているため。この絵葉書は色再現が丁寧で、影だからと黒で塗りつぶすことが多い翼下面の支柱も色で綺麗に再現されている。
こんなに良質な刷りは印刷代金が高いので特別だったと思うが、②の式典の底部にある同機も、銀色っぽく刷られている。③の「愛国88通運」号は黒っぽく、④の「愛国113産業協働第ニ」号は明るい灰色だ。これらの絵葉書は人工着色絵葉書といわれるもので、モノクロ写真版に色版を数色重ねてカラー写真っぽくしたものだ。だから、怪しいといえば怪しい色再現なので、それを分ったうえで見る必要がある。

①愛国69号 機体に薄く銀色が塗布された刷り色の絵葉書例


②愛国69号機体が 銀色のような刷り色の例


③暗い灰色の機体に黒いタウンネンド・リングの例


④明るい灰色の機体色にこげ茶色のタウンネンド・リングの例



 川添史郎『モデラーズカラー』(モデルアート社、昭和47年)p.92 にある、「銀鼡色」の説明を紹介したい(部分)。
 「普通の銀色に、やや黒味かかった色調で、明るいところでは反射光線のかげんで白っぽく見える、暗いところでは反射がなくなり、黒っぽく見える、という面倒な色調である」「日本でも、陸・海軍でこれを用い当時の制式カラーであり、95式戦まではいずれもこれを使用していた。その後、金属機時代に入り、明灰白色が使用されることになったものである。」

 『同』p.90にはこうある(誤植は訂正)。
「1937年から40年にかけて、陸軍では95式戦闘機が主力であったが、胴体は金属、主・尾翼には布張りで、全面にそれまでの銀鼡色から、明灰白色を使用することになった。」
 つまり、95式戦闘機は灰色で91式戦闘機はそうでない、ということだ。この川添氏の記述と掲載絵葉書の色はよくあうが、それは記述にあった絵葉書を選んだからだともいえる。91式戦闘機の人工着色絵葉書は明るい灰色が多く、明るい灰色で色再現としては当時から通用したともいえる。だから、模型的には明るい灰色でもいいのだろう(私はまだ、迷っているのだ)。


 ところで、この文章の例に91式戦闘機をとりあげたのには、もうひとつの理由がある。エンジンをぐるりと囲むタウンネンド・リングの色だ。②の刷り色をみると、「愛国」は黒文字だから黒で刷ることは可能である。背広も黒い。ではタウンネンド・リングは? 91式戦闘機の人工着色絵葉書のタウンネンド・リングは、多くがプロペラと同じ暗い茶色で刷ってある(③のように黒で刷ったものもあるので、これも紹介する)。 私は人工着色絵葉書から、実機は暗い茶色だったのではないかと思っている(もしかしたら、暗い茶色または黒の2パターンがあったのかもしれないが)。この黒と暗い茶色の問題はWWⅡ日本機のプロペラ裏面にもみられる混乱で、これはだいぶ前に私が「ワールドホビーショップはせがわ」さんのホームページに長文の論考を掲載していただいた(今も掲載してあると思う)。今でこそ「太平洋戦争当時のプロペラ裏面は暗い茶色だろう」といっても通用するようになったが、つい先日までは圧倒的少数派だった。色の常識なんて、そんなものなのだ。


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