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  ベルYP59 エアラコメット(1/48 ホビークラフトカナダ)

by 小山新一



(実機について)

 一つのジャンルで初の機体というのは、注目を浴びてしかるべきだと思うが、本機の印象は余り強くない。「そういえば、これがアメリカ初のジェット戦闘機なんだよね」と希薄なイメージなのだ。最大の理由は本機の性能がパッとせず、明らかな失敗作であったためであろう。
 ジェット機とジェット・エンジン開発におくれをとったアメリカが、イギリスのホィットル・ターボジェットを導入し、比較的手の空いていたベル社に機体を作らせたのが本機である。機体メーカーと設計者の選択を間違えたというしかない。試作機の形態は、ベル社が手掛けた二流の大戦機(P39 エアコブラ、P63 キングコブラ など)の流れをくむ大味なものであったからだ。
 原型機のテスト結果によれば、最高速度は652㎞/時にとどまり、他の性能もふくめ、当時の一級レシプロ戦闘機をしのぐものではなかった。原型機XP59からYP59を経て、P59Aとして制式採用されたが、30機ほどの少数生産で終わっている。
 本機と後継機XP83の失敗により、ベル社は固定翼機の開発から撤退することとなった。

右側面


(キットについて)

 私にとって、ホビークラフトカナダのキット初体験である。
そもそもこのエアラコメット、私の心づもりではソリッドで作ろうとしていた機体であった。資料と図面(航空情報社「精密図面を読む VOL3」)を集めていたのである。そのプロセスで、ホビークラフトカナダのキットの存在を知ったのであった。「プラモか削るべきか?」で悩みつつ、ヤフオクでキットを入手、作ることにしたのである。

ボックス


 さてホビークラフトカナダのキットである。このエアラコメット一作についていえば、わがハセガワ、タミヤの製品と比べ10年以上はおくれている印象。細い表面のスジボリは一本調子で、タミヤ、ハセガワで定番となっている、リベットや外板のメリハリの効いたモールドなど一切なし。コクピットなどのディテール構成は簡素で、リサーチ不足は明らかである。

図面上の胴体パーツ


 外形は悪くないので、あまり手を加えずに作ることにする。

 不愉快だったのが風防の整形不良である。中央風防に気泡が入り、この周辺がすりガラス状になっていたのである。ソリッドならすべてのパーツが自作だから、合わせ目に隙間が出来ようが、キャノピーが曇ろうが「自己責任」ゆえ腹は立たない。だが、プラモの場合は「ストレート・フロム・ボックス」が前提ゆえ腹立たしい。気泡は修正のしようがないので、これを磨いて(エポキシパテを中に充てん)塩ビ板を絞ることにする。

自作キャノピー(これをていねいに切り離します)


(制作)

 自作の風防以外は手を加えぬことにして、組む。
コクピット内は手を入れたいところだが、資料がないのでそのまま組む。アラが見えにくいように、内部はみなセミグロス・ブラックで塗る。シートの形状も怪しいのだが、修正せず、パイロットのフィギュアをモノグラムのP47Dからコンバートしてのせた。

コクピットのパーツ


 かくて完成となるが、自作風防の合わせにいささか手間取らされた。キットの風防は別キットで出ているP59 Aと共用なので、原型機のようなふくらみがない(後方スライドでない、P51初期型のような分割縦開き)タイプは作れない。「それは作れません、悪しからず」のエクスキューズが、キット名に強調してある。「YP59」の「Y」の一字である。「XP」ではないんですよと言っているわけだ。
 塗装はアメリカ陸軍の初期迷彩、オリーブ・ドラブとニュートラル・グレイであり、インシグニアもそでのないものにした。デカールがないので、手描きをした。ただし尾翼に貼ったデカールのシリアルナンバーと塗装が、考証的にあっているかは不明である。

左側面


後方から(フラップに羽布のモールドがあるのは疑問)



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