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工作のヒント

   デカールの再製作

 by  田口博通 Hiromichi Taguchi

目次

 1 初めに
 2.デカール自作の準備
 3.自作デカール作成の手順
 4.デカール再製作 飛行機モデル編

1.初めに

 写真は2022年9月号に掲載されたバンダイ1/16 ポルシェ906カレラですが、そのデカールは完全に黄ばみが出ており、使うにはためらう状態になっていたので、スキャンして パソコンの画像加工ソフトで画像データを作り、インクジェット用デカール用紙を用いて、再製作しました。
何もないところから新たなマーキングを作るのは大変ですが、キットデカールを元に再製作するのは比較的簡単です。
 その方法を具体的に紹介します。

完全に黄ばんだキット付属のデカール


画像加工したデカール画像


水転写式デカールシートに印刷した自作デカール


 水転写式デカールシートに印刷した自作デカールの使い方はキットに付属している水転写式デカールと同じで簡単です。
 
 このバンダイポルシェ906では、カウル部品の内部を艶消し黒で塗装し、外装はサフェーサーで下地を整えてグランプリホワイトを吹き付け塗装してあります。その上に、自作したデカールを貼り、おちついたらつや出しと保護を兼ねてクリアを吹いて完了です。


2.デカール自作の準備

 まずは、準備するものです。

最低限必要なもの
(1)パソコン
(2)インクジェットプリンター
(3)スキャナー
(4)自作用デカール用紙
(5)クリアー塗料(デカール保護用)
   プラモデル用GSIクレオスMrカラーNo46クリアー
   もしくは GX100「スーパークリア」
   吹き付け塗装用エアブラシ
   
   もしくは、マイクロのリキッドデカールフィルムと筆

(6)デカールデータ作成と印刷に必要なパソコンソフトウエア
  (A)画像加工用レタッチソフトウエア
  (B)印刷用ドローソフトウエア


いくつかについて 更に詳しく紹介していきます。
(3)スキャナー

 筆者は数年前に購入したキャノンのLIDE220という最も安価なA4フラットベッドスキャナーを使っていますが、それでまったく充分です。LIDE220は現在は販売終了で、2022年9月時点ではCANON LIDE400 が売られています。
税込みで約1万円。昨今の1/32プラモデル 1個分を我慢すればお釣りがきます。

下はCANON LIDE400




(4)自作用デカール用紙

 デカール用紙は透明ベースとホワイトベースの2種類があり、用途によって使い分けます。
最近は 家庭用インクジェットプリンターで印刷できる自作デカール専用用紙が売られており、山口県のハイキューパーツ(HIQPARTS)というメーカーから透明ベースとホワイトベースの2種が販売されています。

価格が手ごろなA4サイズ5枚入の
・透明ベース(製品名 INKJ-T04CL)
・ホワイトベース(製品名 INKJ-T05WB ) 
が使いやすいと思います。 

購入はHIQPARTS / 自作用デカール用紙のサイト
もしくは、アマゾン通販でも購入できます。

家庭用インクジェットプリンターデカール用紙(透明ベース・A4サイズ5枚入)
インクジェットプリンター用(水性顔料・染料)
水転写式デカールを自作したい スケールモデル向け
通常価格:¥968(税込)
商品コード: INKJ-T04CL


家庭用インクジェットプリンターデカール用紙(白ベース・A4サイズ5枚入)
インクジェットプリンター用(水性顔料・染料)
水転写式デカールを自作したい スケールモデル向け
通常価格:¥968(税込)
商品コード: INKJ-T05WB


(6)デカールデータ作成と印刷に必要なパソコンソフト

(A)画像加工用レタッチソフトウエア
画像加工ソフトはフォトショップのような高級高価なレタッチソフトでなくとも、パソコンに同梱されている「お絵かきソフト」で充分です。
 筆者の場合、「paint.net」というレタッチ用のフリーソフトを使っていますが 非常に使いやすいです。(窓の杜のpaint.netからwindows版がダウンロードできます。)
 
(B)印刷用ドローソフトウエア
印刷するのに、画像加工ソフトで直接印刷するのは難しいので、ドローソフトを使います。パソコンにドローソフトが付属していればそれを使うのが簡単です。
筆者は 「inkscape」というフリーソフトのドローソフトを使っています。(窓の杜のinkscapeからwindows版がダウンロードできます。) 


3.自作デカール作成の手順

(1) スキャナーでデカール画像を取り込む。
 
 まず、キット付属のデカールをスキャナーでパソコンに取り込みます。印刷は原寸で行うため、元のデカールには定規で目盛をどこかに書き込んでおくと安心です。
 取り込む時の解像度は 後で画像加工をすることを考慮し、できるだけ高解像度で行います。私の場合、1200dpi もしくは 600dpiで行っています。スキャナーの転送メモリーが100MBという上限があるので、大きなデカールは1200dpiでは取り込めず、解像度を落として600dpiで取り込んでいます。

スキャナーの左隅を基準にデカールを置き、スキャンします。


 下が完全に黄ばんだデカールを 1200dpiで スキャナーで取り込んだ画像です。

(6372dot X 4176dot 解像度1200dpi) 横134.87mm × 縦88.392mm)



(2) 画像加工

  取り込んだデカール画像は黄ばんでいますので、これを 白は白に、黄ばんだ各色は黄ばみのない色へと、パソコンの画像加工ソフトで修正していきます。
 画像加工ソフトはフォトショップのような高級高価なソフトでなくとも、パソコンに同梱されている「お絵かきソフト」でも充分です。
 筆者の場合、「paint.net」というレタッチ用のフリーソフトを使っていますので、その操作画面で説明します。
 
 画像上のホワイトはプリンターでは透明(印刷しない部分)
となりますので、デカール余白部を「ペイントカン」ツールでホワイトに塗ります。「ペイントカン」ツールの塗りつぶしは、許容範囲設定を50%程度から上下に前後させて調整すると、マーキング周囲の黄ばみの塗りつぶし具合が変わります。
 同時に黄ばんだマーキングの各色も「ペイントカン」ツールで好みの色合いに修正していきます。
 もともと白であったイメージ範囲は、余白の白と区別がつかなくなりますので、下のように、周囲の余白をわざと違う色にして、デカール貼り付け後に切り取ると良いでしょう。
 デカールの傷や汚れも同時に「ペン」、「筆」ツールなどを使って修正しておきます。

 こうしてうまく画像加工ができたら、修正画像をJPGフォーマットでパソコンに保存します。この時に、元のデカール画像と同じ解像度で保存するようにします。(元画像が1200dpiならば、修正画像も1200dpiで保存する)。

レタッチソフト「paint.net」で加工中の画面


画像加工が完了したデカール画像
(6372dot X 4176dot 解像度1200dpi) 横134.87mm × 縦88.392mm)



(3) 印刷用ドローソフトに修正した画像を配置する。

 次に印刷ですが、画像加工ソフトで直接印刷するのは難しいので、ドローソフトを使います。パソコンにドローソフトが付属していればそれを使うのが簡単です。
筆者は 「inkscape」というフリーの編集ドローソフトを使っているので、その操作画面で説明します。
 
 先ほど作った修正画像を ドローソフトに取り込み配置します。プリンターで印刷するために 上部左右に3mmの余白、下部に4cmの余白が必要です。
 取り込んだ画像をソフト画面上で拡大縮小して モデルに必要な寸法に合わせます。
 下の場合、元にしたデカールの寸法が1/16原寸なので、そのままの寸法ならば、原寸で印刷。もし1/2に寸法を縮小すれば1/32で印刷ということになります。

inkscapeに配置中の画面
元デカールの寸法(横134.87mm × 縦88.39mm)で設定すれば 原寸印刷となる。



(4) インクジェットプリンターで印刷する。

 そして、ドローソフトからインクジェットプリンターでデカール用紙に印刷します。
 デカール用紙は透明ベースとホワイトベースの2種類があるので、用途によって使い分ける必要があります。
 最近は 家庭用インクジェットプリンターで印刷できる自作デカール専用用紙が売られており、HIQPARTSというメーカーから透明ベースとホワイトベースの2種が販売されています。A4サイズが5枚入の
透明ベース(製品名 INKJ-T04CL-05 880)
ホワイトベース(製品名 INKJ-T05WB ) 
が使いやすいと思います。

 インクジェットプリンターの設定は「写真印刷(高精細印刷)」で行います。
キャノンプリンターの場合
写真用紙: 光沢ゴールド、印刷品質:きれい。

エプソンプリンターの場合
用紙設定を「写真印刷」、品質レベル 品質優先(レベル5) または高精細度 とします。
 
 念のため、白のコピー普通用紙に試し印刷をして、色味などを確認するとよいでしょう。
確認をして納得ができたら いよいよ、デカール用紙に印刷します。

プリンターの印刷設定(キャノンの場合)



原寸で印刷したデカール
黄ばんだデカールが見事に再生された



上の例はホワイトベースに印刷をしました。
 これで 原寸でデカールの印刷ができました。
黄ばんだデカールを元に見事に再製作されたわけです。


(5)  表面をクリアーでコーティングして保護する。

 水に溶けるインクジェットですから、印刷後、「クリアーコーティング」で保護することが必ず必要です。
 デカール用紙の注意事項を良く読んで、2日くらいインクをしっかり乾燥させた後に GSIクレオスMrカラー「クリアー」、「スーパークリア」、ガイアカラー「EXクリア」)などをエアブラシで注意深く吹き付けます。
 筆者の経験では、面積が小さければ、マイクロの「スーパーフィルム」を綺麗な筆で塗ったのでも大丈夫でした。
その後、よく乾燥させます。

 完成した自作デカールは水転写式デカールですので、切り抜いて、水につければ、普通のキットデカールと同じように使用できます。





(6)  透明ベース用紙とホワイトベース用紙の使い分け 

 上例のポルシェ906は、再製作デカールはホワイトベース用紙に印刷しました。
車体が白なので、透明ベースを使ってもよさそうなものですが、黄色のフロントカウル上に白丸のゼッケンと鶴のエンブレムが配置され、また、側面ゼッケンが車体下部グレー部にかかっているので、ホワイトベース用紙を使用しました。

4.デカール再製作 飛行機モデル編

 インクジェットの印刷インクは 黒や緑は隠ぺい力が強いですが、その他の色は隠ぺい力が弱く、下地が若干透けてしまいます。
 したがって、黒文字は透明ベース用紙が使え余白は透明なので切り取る手間がありません。
 しかし、その他の色はホワイトベース用紙を使い、余白を丁寧に切り取る必要が生じ一手間かかります。

(例1) A-4Eスカイホーク (フジミ1/50)
 下例はWM2020年12月号に掲載された A-4Eスカイホーク (フジミ1/50)です。1960年代後半にリリースされたプラモデルですが、50年の時を経て完成しました。
 塗装はもちろん箱絵のコーラルシー搭載機としたかったのですが、デカールが黄変して使える状態ではなかったので、インクジェットプリンター用デカール用紙を使って再製作することにしました。
黒文字と尾翼のNLは透明ベース用紙を使い、国籍マークとVA155のドクロエンブレム、インテークのDANGER三角形などはホワイトベース用紙に分けて印刷しています。



余白が黄変したデカール 
スキャンしてパソコンで画像加工する

インクジェットプリンターで印刷した新造デカール
左はホワイトベース用紙、右は透明ベース用紙を使用。


 余白が黄変したデカールをスキャンして、画像加工し、インクジェットプリンターで印刷すると 新造デカールが出現します。
付属デカールが使えなかったので あきらめていた箱絵のコーラルシー塗装ですが、思ったより簡単に実現ができました。



 積みプラしている間にデカールが使えなくなり製作をあきらめてしまったキットをたくさんお抱えのご同輩モデラーの皆様、このような方法でデカールを再製作すると、思う存分 古い在庫キットを作れるようになります。
付属デカールのスキャンデータを基にしたデカールの再製作 ぜったいお奨めです。

(例2)ベルAH-1G ヒューイコブラ (タミヤ 1/100)
 下例はWM2019年10月号に掲載されたベルAH-1G ヒューイコブラ (タミヤ 1/100)です。
 2018年の静岡ホビーショーの際にタミヤ本社オープンハウスのバザーでヒューイコブラが500円で袋入り再販で売られていましたが、デカールが入っておりませんでした。金型は使用できるものの、おそらくデカールの印刷版がもう使えなくなっていたからでしょう。
 必然的にデカールを自作することになりましたが、オリーブドラブ色の機体に白文字です。この場合は、ホワイトベースを使います。
その方法ですが、地色をオリーブドラブとして、白抜きで文字を作り ホワイトベースに印刷します。
 地色のオリーブドラブは塗装した模型をデジカメに撮り、パソコンの上記レタッチソフト「paint.net」のスポイトツールでサンプリングします。
 MARINESの文字と尾翼のシリアルナンバーの数字は白抜きで作りますが、
シリアルナンバーの数字文字もMARINES文字と同様に 手持ちの米海軍機キットのデカールから数字の文字を探し、スキャナーで取り込んで種とし、画像加工する方法で簡単に作れます。
 白抜き文字を作る手順の実際は
https://www.webmodelers.com/201910tamiyaAH1.html
に詳しく解説されているのでご参照ください。



サンプリングしたオリーブドラブ色


完成した白抜きMARINES文字


白ベース用紙上に自作したデカール


印刷部よりも大きく切り抜いた自作デカールを貼る。


MARINESの4辺の余白を切り取る




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Vol.169  2022 September.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
                    editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず/リンクフリー
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