Home  > Fairey Gannet AEW.3 Fairey Gannet AEW.3(Aeroclub 1/72)+ British "Gannet" T.Mk.2(Trumpeter 1/72)>特集イギリス>2023年2月号

特集 イギリス

 Fairey Gannet AEW.3
Fairey Gannet AEW.3(Aeroclub 1/72)+ British "Gannet" T.Mk.2(Trumpeter 1/72)

by 大山 盛幹



  今月のテーマは「イギリス」ということなので、Fairey Gannet AEW.3を製作しました。Fairey Gannet の1/72のキットは、何度も再版されているものの長らく1956年初版のFrogの対潜哨戒型のキットしかなかったのですが、21世紀になってからはTrumpeter、Revell、Swordから、そしてフルレジンキットですがAlley Catからも発売されており、自分の好みで選択できる良い時代になりました。



 さて、Fairey Gannet AEW.3のキットはAlley Cat、Swordからずばりのキットが発売されていますが、今回は、Aeroclubの改造パーツとTrumpeterの主翼、尾翼そしてプロペラを用いてFairey Gannet AEW.3を製作しました。
 Aeroclubの改造パーツはバキュームフォームの胴体、燃料タンク、塩ビのキャノピーとホワイトメタル製の機首、脚、脚カバー、タイヤ、排気管、スピンナー、プロペラそしてパイロットシート等の小物からなっています。ただ、この改造パーツはFrogのキットを使用するようになっていますので、Trumpeterと組み合わせるには工夫が必要かと思いましたが、意外とすんなりいきました。
なお、現在Aeroclubは活動を中止しているらしく、今回使用したキットは絶版のようですので為念。



  Fairey Gannetは、Fairey社が開発し、イギリス海軍等で使用された艦上対潜哨戒機、早期警戒機です。
ダブルマンバという双子のターボプロップのエンジンを搭載し、コントラプロペラに太い胴体、緩い逆ガル翼というシルエットのため『世界でもっとも醜い航空機』と言われることもあるようです。
Fairey Gannetは1949年9月19日に初飛行、翌年の1950年6月19日には空母「HMS Illustrious」で着艦試験が行われ、これはターボプロップ機としては初の着艦でした。その後さらに改良が加えられた後、最初の生産型であるAS.1の生産が1953年に開始されました。
1955年1月に空母「HMS Eagle」艦載部隊の第826飛行隊へ最初の生産型AS.1が実戦配備されたことを皮切りに最終的に22個飛行隊に配備され、AS.1は180機が生産されました。後にエンジンを換装し、AS.1で問題となっていたアンダーパワーなどを解決した改良型AS.4が82機生産されました。
このほか、対潜哨戒型の派生型として練習機型T.2、T.5、電子戦型ECM.6、そして陸上から空母へ補給物資を輸送する艦上輸送機型COD.4が生産されています。



  さて、今回製作した実機のAEW.3は、Skyraider AEW.1に替わる機体として、対潜哨戒型の胴体を再設計して、AN/APS 20レーダーを機体下部に搭載し、エンジンをダブルマンバ ASMD.3に換装して1958年8月に初飛行しました。胴体下部の巨大なレドームが外見上の特徴で、このレドームのため主脚が対潜哨戒機型より長くなりました。11月には空母「HMS Centaur」で試験が始まったこの機体は、安定性を向上させるために尾翼を再設計した後生産され、計44機が生産されました。しかし、当時の労働党政権が、空母の全廃を決定したため、最後の通常空母である「HMS Ark Royal」の第849飛行隊に配備されていたAEW.3は母艦が退役する1978年にまで任務についていました。なお、AEW.3が搭載していたAN/APS20レーダーは、Gannet AEW.3退役に伴って北海と北大西洋での早期警戒任務の機体が必要となったため、Bae Nimrod AEW.3の就役までの暫定的な措置としてAvro Shackleton MR.2の早期警戒型Avro Shackleton AEW.2に搭載されました。
Fairey Gannetのイギリス以外では、オーストラリア、西ドイツそしてインドネシアでAS.4とT.5を採用しています。ですので、AEW.3を採用したのはイギリスのみとなります。



  さて、製作ですが、胴体はAeroclub を使用します。バキュームフォームキットですので、切り出し、余分な部分の削り出しとお定まりの手順が必要です。Trumpeter のキットの主翼は桁で固定するようになっていますので、この桁のパーツをAeroclubの胴体パーツに組み込めるように工作します。これにより、胴体に強度を持たせることにもなりました。操縦席キャノピーはAeroclub キットの塩ビキャノピーを使用しましたが、レーダー員席のバブルウィンドウはItaleri 1/72 CH-47のパーツを利用しました。実機の胴体には補強材(?)が多く見うけられ、キットにもモールドされていますが、細切りのプラシートを貼りメリハリを付けました。前脚収納庫は、Trumpeterのパーツを前後逆にして使用しました。



 Aeroclub のキットの排気管はメタルパーツで用意されていますが、形状が実機と全く違っているため、写真のように断面が涙滴型になるようにプラ板で作り直しました。前脚式の機体では錘が必要ですが、このキットの場合、機首がメタルパーツになっているため、それ自体が錘となります。スピンナー、プロペラもメタルで用意されていますが、これを使用すると機首が重くなりすぎ脚の負担となることと、Trumpeterのパーツの方がシャープにできていることから、スピンナー、プロペラはTrumpeterのパーツを使用しました。



次に主翼、尾翼の工作ですが、基本的にはTrumpeterのパーツをそのまま利用します。主翼と胴体は前述の桁を介して接着するためにしっかりと固定できますが、前縁付近に隙間ができるため、プラ板やパテで埋めておきます。また、主脚収納庫形状は対潜哨戒型と早期警戒型では異なっていますので、早期警戒型の形状にすることが必要です。



   細部工作としては、次の通りです。
① パイロット席キャノピーに0.2㎜ステンレス線と0.3㎜角のプラ棒でワイパーを追加
② アンテナ支柱の後方の2本の細いアンテナを0.2㎜ステンレス線で追加
③ 前脚扉、主脚カバーは0.3㎜のプラ板で自作。
なお、アンテナ線は運搬を考慮して張っておりません。



 塗装は、上面はエキストラダークシーグレー、側面、下面がスカイのイギリス海軍の標準塗装です。注意点は、すべてのプロペラブレードが同じ塗装になっておらず、前後共に一つのブレードの警戒ラインの塗装が他の3枚のブレードと異なっているので注意が必要です。
デカールはModel art Decal 72/017を使用しました。このデカールは発色もよく細かいコーションデータもキッチリ押さえられています。マーキングはイギリス海軍の艦載早期警戒飛行隊の第849飛行隊のBフライト所属機です。ちなみに、Bフライトの「B」と「Bee(ミツバチ)」が同じ発音のため、垂直尾翼にミツバチが描かれており、スピナーや増槽先端が黄色と黒の塗り分けになっています。



  資料としては、なんといってもネットの写真でhttp://www.primeportal.net/the_airstrip.htmというサイトにGannet AEW.3のWalk Aroundの写真が多く掲載されています。印刷物としては、古い洋雑誌で申し訳ないですが、最も製作に役に立ったのは地中海のマルタで発行されたModelaid International 1987年1月号の「Gull-Winged Gannet」という6頁の記事でAEW.3の三面図と塗装図、細部写真が掲載されております。
そして、これも洋雑誌ですが、Scale Aircraft Modeling 1985年8月号の記事「№849Naval Air Squadron」、同じく1986年7月号の記事「Aircraft in Detail Fairey Gannet」も役に立ちました。
これら以外にBmvd-Verlag 社のF-40 №14「Fairey Gannet AS.4/T.5(1991年)」、Hall Park Books 社のWarpaint Series №23「Fairey Gannet(2000年)」、Mark I 社の4+ publication №4「Fairey Gannet Anti-Submarine and Strike variants AS Mk.1, AS Mk.4(2007年)」、AD HOC Publications社の From the Cockpit №7「Fairey Gannet(2008年)」が参考になります。そして、唯一日本語で読めるFairey Gannetの資料としては 文林堂 航空ファン1991年8月号の記事「AIRPLANES DIGEST - フェアリーガネット」が写真も多く参考になります。



追記:この記事を書いている最中に、Airfix 1/48 Fairey Gannet AS1/AS4の発売が今年の秋頃に予定されているとのニュースが入ってきました。パーツ数は327個、予価は約55£です。ClassicAirframesに続くキットですが、写真を見ると、特徴的な主翼の折りたたみも再現可能なようで、
最近のAirfix のキットを考えると期待大です。AEW.3もバリエーションで発売されるといいですね。


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