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誌上個展

<日本航空史> 巨人機 丁式爆撃機

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

丁式一型①


 陸軍最初の巨人爆撃機は輸入機で、ファルマン式F50型・丁式一型爆撃機がそれ。掲載した彩色絵葉書のように胴体は黒っぽい。航空情報別冊『回想の日本陸軍機』(昭和37年発行)に「戦争中使い古した中古機の塗料をぬりなおしてくれるだけ」とあるので、フランスで再塗装した色なのだろう。実機を見た人は「嫌な色だった」と、ある方に教えてくれたそうだから、単純な黒ではなさそうだ。輸入は1機で、大正9年の購入。それが中古のボロボロ飛行機で危険と判断、教習生3名がお尻で翼の小骨を折って飛ばせないように壊したそうだ。

丁式一型②


  実際に配備されたのはファルマン式F60型ゴリアト・丁式二型爆撃機。元は旅客機で、陸軍が爆撃機に改造したうえで大正10年に支給が始まったようだ。フワフワと飛んだ飛行機だったらしくて、『回想の日本陸軍機』によると、ある時は着陸にはいって地上30mくらいで頭を上げて失速したが、頭を左右にふって傾きもせずに静かに着地、5mくらい滑走して無事に止まったという。爆撃訓練では爆弾600キロを積んだところ600m以上に上昇できず、これでは爆弾の破片で自機が傷つくと断念したこともあったとか。そんな飛行機だからか、「大気の静かな日はまことに安定がよく、うららかそのものであった」そうだ。元が旅客機なので、まあそんなモノなのだろう。水冷星型エンジンはいつも全開だったそうで、この機には馬力不足だったようだ。そのため、後にエンジンを換装して強化している。換装後にエンジンの形が違うのはもちろんだが、翼端を切り詰めたようでエルロンの張り出しがなくなっている。どちらも丁式二型爆撃機だが、改造後を丁式二型改造爆撃機とか、丁式二型一と丁式二型二とか区別することもあるようだ。 

F50


 掲載は7点が彩色絵葉書で、モノクロ1点だけが写真。
F50型・丁式一型爆撃機は翼が黄色っぽく、胴体とエンジンカウリングは黒っぽい。他はF60型ゴリアト・丁式二型爆撃機で、すべてエンジン換装をしていないタイプ。

丁式一型③


  ここで丁式二型爆撃機の色を考えてみたい。本誌先月号の<課題1>は、支柱は木の色らしく、胴体と翼は灰色だったが、①は翼も支柱も黄色っぽい同色だ。①から④のどれをみても黄色っぽい同色で表現されているし、エンジンやプロペラとは異なる表現だから、意識して同色で刷ったのだろうと思う。⑤のように全面灰色の絵葉書もある。写真⑥をみると、胴体と主翼が同じ明度のようなので全面同色なのだろうから、灰色の可能性がある。⑦は胴体が黒っぽい。掲載絵葉書にはないが、エンジン換装型は黒っぽい胴体色なので、換装云々でなく後期になると黒っぽくしたのかもしれない。細かなところでは、主脚板(?)は胴体色であることや、タイヤの色、ホイールの色、爆弾の色、機内の色、胴体日の丸の有無や翼上面の塗装なども参考になる。胴体内の斜め張り線も興味深い。

丁式一型④


丁式一型⑤


 塗装資料として彩色絵葉書があっても、それが元で新たな課題が生まれてしまう。どこかで覚悟を決めるとか、この絵葉書のような色に塗りましたにするとか、いっそのこと先月号の多色機にしてしまうとか、自分で判断することになりそうだ。入手容易なプラモデルを思いつかないことが、むしろ幸いに思う。

丁式一型⑥


丁式一型⑦



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