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by 田口 博通 Hiromichi Taguchi      /

Big キット作り倒し (第9回) 
ハンドレページ ヘイフォード   マッチボックス 1/72  



押入れを占領するBigキットを作り倒し バーンとスペースを空けようというBigな連載コーナー。
1/32と限らず、巨大な箱なら なんでも取り出します。
 
 デビスモンサンにモスポールされた可哀想なBigキットが再び、皆様のお役に立ちます。
 マッチボックスの72シリーズには運河ボリのおもちゃのような2色パンダ成型の戦闘機が多かったので、印象が悪かったのか、それだけで「パス」という人が多いメーカーでもあります。
 しかし一方 大型キットや複葉機では マニア好みの機種選択の他メーカーでは出さないような唯一もので、モールドも出来もよく機体形態も一風変わった魅力的なキットが多いのです。推測するに、おそらく設計チームも違い、金型も別のメーカーが受け持ったのではないでしょうか。
 今回取り上げる ハンドレページ ヘイフォードは 魅力的な複葉大型キットの類に属すると思いますが、なんといっても 機体形状が奇怪至極。不恰好という人が大多数だとは思いますが、よく見れば見るほど味がある、スルメのような機体であります。いってみれば通好みなので、いつかは作ろうと そっと買い求めたマニアが多いはず。 
もっとも、買っただけで満足するのか はたまた 苦労を買っただけなのか、作ろうとすると 萎える外形なのか それは わかりませんが、展示会でも とんと完成機を見かけたことがありません。このヘイフォードは今年、ドイツレベル印から再販を果たしたようなので、改めて入手された方もおられることでしょう。
 実はヘイフォードは 私も ずっと欲しいと思っていた機種ではあったのですが 棚に並んでいても、マッチボックスというだけで目が無視したのか、それとも地味?で目につかなかったのか 結局、買い逃しておりました。
 ところが天が味方したのか、2003年の上海暮らしを始めて半年経った夏頃、プラモデル店を探して上海中をさまよっておりましたら、豫園近くの問屋街の中にある一軒のおもちゃ問屋でマッチボックスが隅に積まれているのを偶然に見つけました。

ヘイフォードは やはり奇怪なインパクトのある外形。


 中国本土で マッチボックスは1990年代、「環球模型」というブランドでプラモデルの大ブームを起こしていたことは知っていました。そのブームが去った後、売れ残った地味な機種や32CARモデルが 店の隅にひっそりと積まれていたわけです。 ドルニエ17やサーバントもあり、手当たりしだいに買い求めた中の一機が 今回のヘイフォードだったのです。確か25元で買ったので、日本円に直すと350円くらいでした。中国人でも買わないものを、奇特な日本人が有難く在庫消化してくれると思ったのか だまって1割負けてくれました。もっとも、後で会社の上海人に聞いたら どんなものでも、最低3割値引き獲得を目指して半値から交渉するのが常識だそうです。しまった! でも日本で売っていた値段は知っているし、大きな箱で350円ですから いいことにしましょう。 という訳で、数年後、日本へ帰任荷物に混ぜて大切に持って帰りました。  さて、今回 完成して眺めると 悪くありません。それはそれはインパクトのある機体形状であります。きっと展示会でも異彩を放つことでありましょう。 
 決して作り易くはありませんが、苦労を買ったようでもないようです。ストレートに作るだけでも 充分にプラモ作りの魅力を堪能できます。私は機銃架と操縦席手すりを金属線で作り直したくらいです。
 大切に大切にストックされて来た方は墓場まで持って行かないで、このあたりで、日の目を見せてあげましょう。ストックから昔のキットを取り出して、心ゆくまで楽しんでみる。憧れてきた至福のプラモデルタイムを今、一緒に味わってみませんか。 
 さあ 前置きが長くなりましたが、今月もビッグキットが完成品として、あなたの前に甦ります。

複翼機らしさがあり、こうやって後ろからみると、実感満点。


■実機について
 ヘイフォードは設計年次が第1次大戦後で、1933年に制式化されたイギリス空軍最後の複翼爆撃機です。下翼に多数の小型爆弾のラックがあります。速度が130kmと遅く、部隊配属された時には既に時代遅れだったので、第2次大戦では実戦に出動したことはなく、射撃練習や、レーダーなどの機材テスト機として使用されました。複葉のため、大型の割りには安定がよく、操縦が楽であったためです。そういう意味では爆撃機とされているが、ユーティリティ機というのが 実際の所でしょう。
 さて、機体形状が奇怪に見えるのは、上翼が胴体について高翼形態をなしており、下翼が釣り下がっているからです。また、車輪が下翼に直接ついています。

 この配置は大ペイロードを実現するために、大重量のエンジンと大直径のプロペラを双発に装備するには理にかなった翼配置であることがうなずけます。
もう少しエンジン出力が大きければ、下翼をとりはらい、上翼のみの単葉での設計が可能であっただろうと思われます。
乗員 4名
航続距離 500km
速度 130km
ペイロード 1200kg
武装 ルイス機銃 3丁



製作上の注意

 この手の機体は資料も無いし、唯一の資料は 箱絵くらいのものです。資料というほどではありませんが、「図説 世界の「最悪」兵器大全」という原書房から出ている本に側面写真が1枚とカラー塗装図が紹介されています。
マッチボックスの説明図は英語であろうと中国語であろうと 絵を眺めるだけで、組み立てるようになっているので、ただ説明図どおりに組み立てると、とりあえず完成します。(これが本当は当たり前のことなのだが)

 胴体内部はつやけし黒にでも塗っておくといいでしょう。胴体側面に透明窓部品が付属していますが、透明プラ板で作り変えるようなことをしないでも大丈夫です。 上翼パーツが5つに分かれていますので、上半角だけ注意が必要です。エンジンのエアインテークにMk1とMk2の選択部品がついているので、マーキングにあわせて選択します。
塗装は 下面 ダークグリーン。
上面ダークブラウンとダークグリーンの雲形迷彩です。
プロペラの木目塗装は つや消し黒で塗ってオレンジ色でドライブラシ。その上に透明黄色をかけておきました。結構 木目らしく見えるでしょうか。
機銃架とコクピット左右および後部の手すりは 金属線を曲げて自作しました。精密感がでます。

 翼間の張り線ですが、0.3mmのピアノ線を使いました。
金属線を張り線に使った場合、これだけの大型機になると翼が重みでたわみますので、張り線が結果ゆるんでしまいます。それで上だけ接着し、下部は穴に差し込んだだけとしています。(かっこだけの擬装張り線なのであります。) 張り線をしているということがわかればいいと考えて、本数は大胆に省略しています。

2枚の木製プロペラを重ねて4枚羽根のプロペラとなっているので、それらしい木目塗装がポイント


コクピット脇の手すり
上機銃座と 下部機銃座

張り線は ピアノ線を使い 大胆に省略


 とにかく 恰好だけは完成しましたが、それでも 圧倒的なインパクトです。他の言葉が見つかりません。
これを美というべきか?
それとも酔狂というべきか。
いずれにしても 作ったもの勝ち ということですね。

目が慣れたのか 普通の複葉機に見えてきたハンドレページ ヘイフォードである。



 

Vol.9 2009 Oct.        www.webmodelers.com          Office webmodelers all right reserved   無断転載を禁ず  リンクフリー
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