Home >今月のハイライト> 連載 世界の名作発掘(第17回) レベル1/72 F-105D 「サンダーチーフ」

連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第17回)

 レベル 1/72 F105-D 「サンダーチーフ」

by 鳥巣 Torisu           /    

<初めに>

今年もあと2ヵ月で終わりです。早いものですね
モデラー諸氏の2010年の制作活動は如何でしたか
当方は天候不順や酷暑に悩まされ体調を崩しがちでした
何より健康が一番と痛感しました(苦笑)


<実機解説>

 1950年アメリカ空軍はTAC(戦術空軍)向けに配備する「最大速度M1・5を持ち制空と核攻撃能力を持ち合わせた次期戦闘爆撃機」の要求を各航空機メーカーに提示した。
 その要求に応えたメーカーの一つであるリパブリック社は翌1951年に当時生産中であったF-84F「サンダーストーリーク」の発展型で機首にレーダーを持ち胴体内に大型の核爆弾を搭載可能な新型機を提案した。
  1952年9月に正式に空軍との開発契約を結び1955年には実戦化するスケジュールで開発が始まった。しかし1953年に朝鮮戦争が終わると大量に発注された注文は削られ15機まで減少されたが冷戦が激しくなるとと開発は続けられ1955年10月に原型1号機であるYF-105Aが初飛行した。
 後のF-105の特徴であるエリアールールや楔型のエアーインテークは採用されていないが初飛行時に超音速を越え期待の高性能をアピールした。 
1956年にはエリアールールと強力なJ75エンジンを採用したYF-105Bが最高速度M2を記録し量産型として生産される事となり2年間のさらなる開発時間を経て1958年に部隊配備された。
 当時最新の火器管制装置を搭載した為か実戦部隊での可動率は低く僅か2個飛行隊に配備されたにとどまった。
 YF105Bが初飛行した時から指摘されたエンジンの推力不足の改善と更なるアビオニクスの改良を施した本命とも言えるF-105Dが1960年9月に登場しTACの屋台骨を支える事となった。また核戦略の変更に伴い核兵器の搭載用に胴体内に設けられた兵器庫には燃料タンクが追加されさらに胴体下にはマルチエジェクターラックが取り付けられて通常戦の戦術機として完成された。



<ベトナム航空戦>

開発当初は冷戦が熱戦に変わった時ソ連やワルシャワ条約機構への軍事拠点や航空基地への核攻撃が主任務であったが空軍の核戦略の変更に伴いあらゆる戦場で戦術攻撃を行う機体として使用されるとは開発担当者は夢にも思わなかったであろう。
 ベトナム戦争のローリングサンダー作戦(北爆)が行われる以前にタイに配備されたF-105は隣国ラオス内で行動するアメリカ軍兵士への援護を行い血の洗礼を受けていた。 
 1965年に開始された北爆以降1971年のラインバッカーⅡ作戦までの期間数多くの作戦を行い全生産機数の半分以上を事故やAAAやミグ及びSAMによって失いながらもハノイを目指して飛び立ったパイロット達の心境は如何に
 戦術機(F-105)で首都を攻撃し戦略爆撃機(B―52)でゲリラを攻撃する
 このような矛盾が繰り返されたがベトナム航空戦である

<キット解説>

 1980年代前半アメリカレベルより発売されたキットです
モノグラムの48を縮小した感じを受けますが全体に彫刻された力強い凸モールドや実機通りゴツゴツした脚やリアルに再現されたコクピット。
とてもアメリカンテイストなキットです
21世紀に他社メーカー全面凹モールドの新金型のキットが出るまでは唯一プロポーションが美しいキットでした。
デカールは有名機「メンフィスベルⅡ」のみ入っています
発色は20年経った今でも衰えていません

            キャノピーとデカール


箱絵
翼パーツ


胴体パーツ


制作

<コクピットから>

 バスタブ式のコクピットフロアーに計器パネル・射出座席・ステックの3点構成です。
 Mrカラー72番「エアークラフトグレー」でコクピットを塗った後タミヤエナメル「銀」で計器パネルにドライブラシを施しました。細かく塗り分けるよりも手軽に立体的な表現ができます。

<胴体と翼の接合>

コクピットができたら胴体を張り合わせます
コクピットを右側胴体の所定の位置に接着します
次に機首部にオモリ(ボルトを使いました)を入れます
コクピットが固定したら主翼を固定するリブを胴体の片側に取り付けます。
このリブを後からはめようとすると上手く左右均等に付かないので忘れずにここのタイミングで付けて下さい。
 リブを取り付けたら左右の胴体を張り合わせ輪ゴムで縛ります
胴体の接着が乾く間に翼の上下を張り合わせます。
F-105の特徴の一つである楔形のエアーインテークの側面の形が翼を張り合わせるとカドが立ち過ぎる印象を受けたので内側から流し込み接着剤を流してはみ出した所を削りなだらかなラインに成るように整形しました。

<段ズレとスキ間の処理>

胴体に翼を取り付けた後に胴体の段ズレとレドームの隙間のポリパテを盛り付けて一晩乾燥させます
乾燥したのを確認したら#400・1000・1500・2000番の紙ヤスリで削ります。
 ペーパー掛けが終わったら水気が無いのを確かめて
クレオス#1200サーフエーサーを吹き表面を整えます
 ペーパー掛けで消えてしまったパネルラインを彫り直して
胴体と翼の工作は終わりです。

<塗装>

定番のアジアンスキーム「ベトナム3色迷彩です」
胴体下面・Mrカラー「311」
胴体上面・Mrカラー「310」をベースに塗り
Mrカラー「303」とMrカラー「309」2色で迷彩を行いました。迷彩は塗り分けのガイドライをエアーブラシ用に希釈した塗料を筆で描き塗り分けラインの外側から内側へエアーブラシの細吹きで塗りました。
この方法ですと迷彩の塗り分けラインが綺麗に仕上がります。
 迷彩塗装が終わったら仕上げに薄めたエナメル塗料でウオッシングを施します。タミヤエナメル「レッドブラウン」と「セミグロスブラック」をブレンドした塗料をじゃぶじゃぶになるまで薄めて機体全体に流します。全体に行きわたったたらテイッシュで拭き取ります。所々固まっている塗料を溶剤で拭き取れば塗装作業は終わりです



<デカール貼りと細部部品の取り付け>

 1980年代当時のアメリカ制キットはデカールのシルバリングが特徴で今回の作例でもシルバリングの処理が課題でした。
 処理方法としてデカールの糊の部分をマークの淵のギリギリでカットしぬるま湯に30秒程浮かべて機体に貼ります。
貼ったらポットの熱湯に浸したタオルの端でデカールを押しつけます。そうするとニス部分の余分な糊が溶けだし綺麗に貼る事ができます
デカールを貼り終えたら1日程乾燥させて仕上げに半光沢クリアーを吹き付けます。
 クリアーが乾いたら脚や装備品の仕上げに取りかかります
F-105の主脚の取り付け角度が若干前へ斜めに取り付けられているので実機写真や資料を見て注意して下さい。
 F-105の必需品とも言えるMk117爆弾を付けてピトー管やパイロットやキャノピーを最後に付けて完成です



近年他社メーカーから全面凹モールドの良いキットが発売されてレベルのキットも退役かと思われた方もいると思いますが まだまだ力強いアメリカンテイストを味わえる奥の深いキットです。
今回レベルのF-105「サンダーチーフ」を作る機会を下さった編集部に感謝です。



Home >今月のハイライト> 連載 世界の名作発掘(第17回) レベル1/72F-105D「サンダーチーフ」

Vol.23 2011 November.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
  無断転載を禁ず  リンクフリー
「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

製作記事

TOTAL PAGE