Home>今月のハイライト> 連載 世界の名作発掘(第20回) イースタンモデル1/72「ミラージュⅢ」

連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第20回)

 イースタンモデル1/72「ミラージュⅢ」

by 鳥巣 Torisu           /    


<実機解説>

 「私がこの戦闘機をミラージュ(蜃気楼)と名付けたのは、砂漠の蜃気楼のように、敵には見えても、捕まえられはしないようにだ」
ミラージュⅢの創造者マルセル・ダッソーは語る。
この名の通り単座小型戦闘機のミラージュⅢに始まり地上攻撃タイプのミラージュ5・可変翼タイプのG8さらに大型で双発の核攻撃機ミラージュⅣ果てはトレードマークのデルタ翼を持たないミラージュF―1等その姿は蜃気楼のように変幻自在で航空機史上に現れる機体である。
1950年5月に勃発した朝鮮戦争における空戦で国連軍のF-86セィバーとMig-15が死闘を繰り広がられた頃各国の航空機メーカーではにわかに「軽量小型戦闘機」ブームが起こりそれまでのレーダー搭載し大型で高速の迎撃機の開発から航空機メーカーはシフトした。
アメリカではロッキードのF―104「スターファイター」
イギリスではフォーランド社の「ナッター」
フランスではダッソー社の「ミラージュⅠ(MD550)」
が開発された。
しかし1955年から当時世界を席巻した軽量戦闘機ブームが冷め始めミラージュⅠ開発を指示したフランス空軍当局はミラージュⅠの性能に不満足であった。
早速ダッソー社は推力15.1kNを持つチュルボメカ・ギャビゾエンジンを2機搭載した「ミラージュⅡ」を提案するが空軍はからそれよりも44.1kNのパワーを持つアターエンジン単発装備の「ミラージュⅢ」が有望とされて「ミラージュⅢ」の開発が決定された。

ミラージュⅢはⅠのデルタ翼や機体レイアウトを踏襲しながらも翼面積は1・5倍・総重量は約2倍の戦闘機として1956年11月に原型1号機が完成された。
さらなる改良を施した「ミラージュⅢC」が1960年10月に初飛行しこのタイプが本格的生産型となりフランス空軍を初めスイスやイスラエルそして南アフリカ等(北米大陸を除く)世界中に輸出されその名の通り世界中の紛争に蜃気楼のように現れ航空機史にその姿を綴った
ミラージュⅢ性能
全長    17.77m
全幅    8.22m
自重    6.3t
最大離陸重量 12t
最大速度・  M2.15
実用上昇限度 約15、000m
航続距離   1500nm(約2700km)
武装     DEFA552 30mm機関砲2門
       AAM     3
    胴体下部中央と主翼内側に約2tの各種装備可能
<「デルタ翼」について>
デルタ翼は通常の後退翼に比べて大きな後退角が可能でそれだけ衝撃波の発生が遅くなり翼端失速が起きにくくて高速を出しやすい利点と胴体への主翼取りつけ部が大きくこの部分に燃料タンクや主脚が置くことができ軽量で頑丈な翼が造ることが出来る。
反面 主翼後縁に通常型のフラップが付けられない。低速飛行時の方向安定性が悪く巡航時の経済性に劣るなどの欠点があり戦闘機ではフランスのミラージュシリーズやアメリカのF-102/F―106等しか採用されていない



<キット解説>

2000年頃にウクライナのイースタンキスプレス社が販売したキットですが中身はイギリス「フロッグ社」が1970年代後半に発売したキットです。
パッケージには単にⅢと表記されていますがパーツに機首下面に取り付けるドップラーレーダーが付いているので
戦闘攻撃型の「ミラージュⅢE」が作れます
インストとデカールはイースタン社で作り起こされています。
第一印象は少し寝ぼけた感じの製品でモールドは凸モールドですがミラージュⅢの特徴である主翼のドックツースや主翼前縁のドループ形状が再現されている好キットです
これ以外にミラージュⅢEのキットは72ではエレールの物しか無いので貴重なキットかもしれません

デカールと透明パーツ 

箱絵


胴体パーツ

制作

<コクピット>

座席とパイロットしか有りません
計器パネルやコクピットフロアー等は皆無です
腕に自信のある方はジャンクパーツを利用してコクピットを再現しても良いでしょう
このコーナーの趣旨はストレート組なので何もせず座席とパイロットを塗り分けて取り付けるだけにしました


<胴体と翼の取り付け>

座席を胴体に取り付けますがキットのモールドされている座席取りつけ板にそのまま付けると後ろに座席が寝過ぎてしまいす
ここは板を切り飛ばして座席の取り付け角度が正しくなるように治したいところですが時間の都合上そのままにしてしまいました。
座席を取り付けたらその後ろに尻もち防止用の重り(ナット)を仕込みます。
エンジン部が空っぽなので中をMrカラー「ジャーマングレー」で塗りつぶし目立たなくしました(笑)
 エンジン部を塗り潰したら胴体の左右を張り合わせて翼を付けます。
胴体と翼の取りつけ部には大きな隙間が生じたのでポリパテを盛り付けて埋めました。この修正作業はどのデルタ翼の機体でも共通です


<パテ修正と追加工作>

翼のパリパテ修正と同時に胴体の隙間とエアーインティクと胴体間の隙間をポリパテ修正を行います。
パテ修正が終わったら追加工作としてエアーインティクの縁が厚ぼったいのでリュターで削り薄くします。
胴体中央部上部にインティクが再現されているのですが形状が違う事がとても気になりここだけはF-4の前縁スラットのアクチュエーターを流用して追加工作を施しました。
ここは目立つ所なので追加工作のし甲斐があります


<スジ掘りと塗装>

機体の修正箇所が終わったら#1200グレーサフを吹きます。乾燥したらテンプレトとモデラーズマスキングテープをガイドにしてインストや世界の傑作機「ミラージュⅢ」を見ながらパネルラインを掘り起こします。72なので大まかなパネルラインの再現で充分です。
 ラインを再現したら塗装作業に入ります。
胴体下面をMrカラー337番
  上面をMrカラー331番
  で塗り分けてロシアングリーン2番で迷彩を施しました。
基本塗装が終わったらイエアーインテークの縁をモンザレッドでアクセント付けをレドームにはジャーマングレー脚は銀で塗りました。





<ウオッシング>

<デカールと細部部品の取り付け>

細部の塗装まで終わったら薄く希釈したエナメルの茶色と黒のブレンドでウオッシングを施し全体を引き締めました。
デカール これはイースタンモデルで起こされた物と思われますが糊が弱いのと一部コーションデカールの発色に難がありましたのでマークセッタで補強を行いコーショデデカールの一部はジャンクデカールの中からエレールのミラージュⅢから流用しました。
デカールの定着後に主脚部分や脚カバーを取りつけます。
脚周りの感じは良いのですがサイドワインダーの形がチョット眠いのでパーティングラインとフインのエッジをデザインナイフで削りシャープに治しました。
最後にピトー管を取りつけて制作作業は終了です
半光沢クリアーを吹き付け1日乾燥させたらフロッグ製ミラージュⅢの完成です




<完成>

実機ミラージュⅢは世界中に輸出され知名度の高い戦闘機ですが72は旧フロッグ社やエレール社とエアーフイックス社の3社しか発売されていません。その中で絶版となったフロッグ社の貴重なキツトを作る機会を与えてくださった編集部に感謝です。

参考資料
文林堂・世界の傑作機No70「ミラージュⅢ」
グランプリ出版・戦闘機メカニズム図鑑
インターネットより実機写真と技術資料を入手









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