「私がこの戦闘機をミラージュ(蜃気楼)と名付けたのは、砂漠の蜃気楼のように、敵には見えても、捕まえられはしないようにだ」
ミラージュⅢの創造者マルセル・ダッソーは語る。
この名の通り単座小型戦闘機のミラージュⅢに始まり地上攻撃タイプのミラージュ5・可変翼タイプのG8さらに大型で双発の核攻撃機ミラージュⅣ果てはトレードマークのデルタ翼を持たないミラージュF―1等その姿は蜃気楼のように変幻自在で航空機史上に現れる機体である。
1950年5月に勃発した朝鮮戦争における空戦で国連軍のF-86セィバーとMig-15が死闘を繰り広がられた頃各国の航空機メーカーではにわかに「軽量小型戦闘機」ブームが起こりそれまでのレーダー搭載し大型で高速の迎撃機の開発から航空機メーカーはシフトした。
アメリカではロッキードのF―104「スターファイター」
イギリスではフォーランド社の「ナッター」
フランスではダッソー社の「ミラージュⅠ(MD550)」
が開発された。
しかし1955年から当時世界を席巻した軽量戦闘機ブームが冷め始めミラージュⅠ開発を指示したフランス空軍当局はミラージュⅠの性能に不満足であった。 早速ダッソー社は推力15.1kNを持つチュルボメカ・ギャビゾエンジンを2機搭載した「ミラージュⅡ」を提案するが空軍はからそれよりも44.1kNのパワーを持つアターエンジン単発装備の「ミラージュⅢ」が有望とされて「ミラージュⅢ」の開発が決定された。
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ミラージュⅢはⅠのデルタ翼や機体レイアウトを踏襲しながらも翼面積は1・5倍・総重量は約2倍の戦闘機として1956年11月に原型1号機が完成された。
さらなる改良を施した「ミラージュⅢC」が1960年10月に初飛行しこのタイプが本格的生産型となりフランス空軍を初めスイスやイスラエルそして南アフリカ等(北米大陸を除く)世界中に輸出されその名の通り世界中の紛争に蜃気楼のように現れ航空機史にその姿を綴った
ミラージュⅢ性能
全長 17.77m
全幅 8.22m
自重 6.3t
最大離陸重量 12t
最大速度・ M2.15
実用上昇限度 約15、000m
航続距離 1500nm(約2700km)
武装 DEFA552 30mm機関砲2門
AAM 3
胴体下部中央と主翼内側に約2tの各種装備可能
<「デルタ翼」について>
デルタ翼は通常の後退翼に比べて大きな後退角が可能でそれだけ衝撃波の発生が遅くなり翼端失速が起きにくくて高速を出しやすい利点と胴体への主翼取りつけ部が大きくこの部分に燃料タンクや主脚が置くことができ軽量で頑丈な翼が造ることが出来る。
反面 主翼後縁に通常型のフラップが付けられない。低速飛行時の方向安定性が悪く巡航時の経済性に劣るなどの欠点があり戦闘機ではフランスのミラージュシリーズやアメリカのF-102/F―106等しか採用されていない
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