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  F-86D (Hasegawa 1/72) 

by Kiyoshi Iwama

F-86D (1/72) Hasegawa Box Art より

ノースアメリカンF-86D”セイバー・ドッグ“はF-86があまりにも有名なため、その陰に隠れキットの方もあまり多くは発売されなかったようです。しかし日本のプラモの黎明期に、マルサンから1/50のオール可動セイバー・ドッグが発売され、小遣いをはたいて購入した思い出があります。結局、完成には至らず、残念な思いが残っています。絶版になったキットですが、再版されるならもう一度チャレンジしてみたく思っています。その後ハセガワとレベルから、それぞれ1/72と1/48の決定版キットが発売され、セイバーファンを楽しませてくれました。しかも小池繁夫氏の手になるハセガワの航空自衛隊版ボックスアートは秀逸で、空になった箱を今も手元に置いています。


実機紹介

F-86 Sabreの系列機と言われるものの、ほとんど別の機体と言えるF-86D Sabre Dogは、ノースアメリカン・アヴィエーション社がF-86Aをベースに開発した全天候迎撃機です。当時は複座型しかなかった全天候戦闘機分野に初の単座戦闘機を送り込んだノースアメリカンは、単座機として完成させるため、レーダや火器管制装置、そしてフライト・コントロール・システムに、当時としては先進的な技術を盛り込みました。F-86との大きな違いは、AN/APG-37捜索レーダとE-4火器管制装置を装備したことです。またそのレーダアンテナが収まった鼻先の大きなレドームがD型の外観上の大きな特徴にもなりました。さらに短時間で高空まで上昇し敵爆撃機を迎撃するため、エンジンをアフターバーナー付きのジェネラルエレクトリックJ47-GE-17に換装、胴体も太くなりました。機銃を搭載せず、武装は、2.75“の”Mighty Mouse”ロケット弾(FFAR)24発を、前部胴体下面のリトラクタブル・ランチャーに装着するというものでした。当初はYF-95の名称で開発がスタートしましたが、途中で政治的理由からF-86Dに改められます。

初飛行は1949年12月27日で、初の量産型となるF-86D-1-NAに続き、-5-NA、-10-NA、-15-NAと改良が重ねられ、生産機数も増えて行きます。途中1950年に勃発した朝鮮戦争がF-86Dの生産を後押しすることになり、1951年4月11日には、F-86D-20-NA 188機の発注が認められ、その後もF-86D-25、-35、-40、-45、-50とアップグレードされ、総生産数は2506機に上りました。

1950年代後半にはF-86Dは対ソ連爆撃機に対する防空軍団(ADC)の主役となり、ADCの多くの飛行隊に配備されました。しかしその役割の終焉は意外と早く訪れ、1956年8月にはフェーズアウトが始まり、1958年4月までにはその座をF-102AとF-101Bに譲り渡すことになります。ADCをフェーズアウトしたF-86Dの一部はANGに配備されますが、残りの一部が日本の航空自衛隊に供与されました。

航空自衛隊では1958年1月から総数122機を受領し、4個飛行隊が編成されます。航空自衛隊が全天候戦闘機を使用するのはこのF-86Dが最初の機体で、全天候戦闘機の運用ノウハウを習得し、F-104Jの運用をスムーズに進めることができたという点では、功績を残したと言えます。

製作

今回の製作にあたっては、キットのほかに、Eduardのエッチングパーツ(ED73219)とプラッツから発売されているカルトグラフ製のF-86Dコーションデータ・デカールを使用しました。

1.胴体

さて製作ですが、私の場合まず主要部品をランナーから切り離し、ある程度整形した状態で仮組を行います。このハセガワのF-86Dの場合は、左右胴体、主翼、コクピット、インテークダクト、レドームと一体となったインテークリップを仮組してみました。主翼と胴体はまずまずです。少し隙間が空きますが何とかなる範囲です。しかし、ノーズ部のインテークダクトとリップの部分、そしてレドーム部と胴体には少し難があります。インテークダクトも上下部品をくっつけるとその接合部の整形作業がありますので、この3部品を先にくっつけ形を整えることにし、コクピットは主翼を胴体に結合する前に胴体下から取り付ける方法を選びました。

実はこの機首部の作業が最も大変でした。レドームと胴体の段差をなくす。(写真1)そして特に段差の大きかったインテーク内部は、インテークのリップ部とダクト部のつなぎ、そしてダクト部とレドームとのつなぎの段差部分にパテを盛っては紙やすりで削る、その繰り返しでした。何しろ狭い空間のため指が入りません。そのため紙やすりをつま楊枝に巻き付け、削っていくという根気の要る作業となってしまいました。写真2がその途中の様子を示したものです。


写真1 ノーズ部加工状態


写真2 インテーク部加工状態

次に前脚収納部です。エッチングパーツでディテールアップするとともに、胴体と収納庫の間にできる隙間を埋め、それらしくするため、0.25mmのプラ板を細く切って貼りつけました。(写真3)

写真3 前脚収納部の追加工

2.主翼

主翼は上下貼り合わせ構造です。この構造の場合1/72ではどうしても後縁部が厚くなってしまいます。そこで主翼上下を貼り合わせてから後縁部をやすりがけし、少しでも薄く見えるようにしました。それが終わった後、主脚収納部のディテールアップです。エッチングパーツを収納部内に貼っていきます。エッチングパーツの接着には木工ボンドを使用します。瞬着の方が接着強度はあるのですが、瞬着は一発必中での作業となるため、私は接着面積が非常に小さい場合を除いては木工ボンドを愛用しています。

写真4 主脚収納庫

3.コクピット

コクピットの内部やシートはインスト通りF36231のグレーで塗装します。シートのヘッドレストは赤で塗ってエッジを少しドライブラッシングしてやると使い古した感じが出ます。そして最後にエッチングパーツの計器盤やシートベルトなどを組み立て、ディテールアップを行います。とはいえ非常に小さなパーツを組み込んでいくのは結構大変ですが、出来上がるとそれらしく見えてきます。写真5が組み上がったコクピットです。横に10円玉を置いてみました。その大きさを実感ください。


写真5 コクピット

4.その他部品

脚扉用のエッチングパーツが付いていますので、それをキットのパーツに付けていきます。薄くて見栄えが良いので、前脚扉はエッチングパーツで組み立てることにしました。キットのパーツに合わせてカーブを持たせます。(写真6)
そしてエッチングパーツにはラダーが付いていましたので、完成後にそれもアクセントで付けることにしました。但し、ラダーのハンドル部は板では感じが出ないので、0.4mmのプラ棒で作り直しました。(写真7)


写真6 脚扉のディテールアップ


写真7 ラダー

塗装

塗装は全面銀塗装で、排気口周辺が焼き鉄色です。しかし全面グンゼの8番ですと、何となくのっぺりしてしまいます。白黒ですが実機写真を見るとやはり少しトーンの異なる部分があります。そこで、8番の銀に焼き鉄色を混ぜて2種類の銀塗料を作り、部分的にマスキングをして吹き付けました。胴体ではコクピットの開口部をマスキングし、まずは全面銀塗装です。前部胴体下面脚収納庫の前方には前照灯がありますので、その部分を予めピンバイスで座ぐっておきました。銀塗装後は(写真8)の様な感じになります。

前部胴体上部は銀塗装後、ウィンドシールド前方のアンチグレア部をFS37079のグリーンで、コクピット内のアンチグレア部を艶消しの黒で塗り、最後に周りをマスキングし、レドームをセミグロスの黒で仕上げました。(写真9)

胴体尾部の排気口の上にはドラッグシュートの収納部があり、その扉にはエッチングパーツを使用しました。また尾部周辺と水平尾翼下面には多くのボーテックス・ジェネレータが付きます。水平尾翼には予めモールドされていますが、尾部にはプラパーツを接着します。エッチングパーツにもこのボーテックス・ジェネレータが付いていましたが、あまりに小さく、薄いため使用をあきらめました。(写真10)


写真8 銀塗装後の前部胴体下面


写真9 胴体前部の塗装完了時の様子


写真10 銀塗装後の胴体尾部

主翼も銀一色ではありますが、コントラストを持たせるため、翼の中央部を少し濃い目の銀で塗装しました。(写真11)


写真11 銀塗装が終わった主翼

胴体と翼以外に、ドロップタンクがあります。エッチングパーツにフィンのパーツが付いており、これと給油口のパーツを使用してディテールアップを図りました。(写真12)

写真12 塗装が終わったドロップタンク

次に胴体にコクピットを組み込みます。なかなかいい感じです。

写真13 胴体に組み込んだコクピット

さて、塗装がひと段落したので、デカールの貼り付けです。使用するプラッツのコーションデータ・デカールには部隊マークが付いていないため、部隊マークやシリアルナンバーなどはキットのデカールを使用します。仕上げる飛行隊は、鯱鉾マークの第3航空団第102飛行隊です。まず日の丸を始め、ウォークウェイや機首ナンバー、部隊マークなど比較的大きなデカールを貼り、それから細かいコーションデータへと移っていきます。しかし、小さなコーションデータの多いこと。デカールを水に浮かしていると、回転してしまうことがあります。そうなるとどちらが上下か分からなくなってきます。貼る前にインストや写真を見ながら間違いのないことを確認し、ピンセットで貼り付け位置へセットし、マークセッターで貼りつけていきました。こんな作業がどれほど続いたでしょうか。しかしこの作業のおかげで、貼り終わった姿は見違えるようになりました。

さて次に胴体と主翼の結合です。結合前にランナーで作った2本の梁を、主翼を取り付けるすぐ上の胴体内に押し入れ、若干胴体幅を広げます。主翼とフィットするようにするのです。勿論この梁の長さや固定場所を決める作業は塗装前にしておき、この段階では決めておいた位置にこの梁を固定するだけです。梁がしっかり固定された後主翼と胴体の結合です。その前に忘れていました。前脚を胴体に、ドロップタンクを主翼に先に取り付けておきます。その方が作業性がいいからです。その後、主脚、脚扉、そしてウィンドシールドを取り付けるとほぼ完成です。

最後にキャノピーを閉めた状態で記念撮影し、その後キャノピーを開状態で固定して、黄色に塗ったラダーを取り付けました。完成!!


写真14 完成後のF-86D


写真15 完成後のF-86D


写真16 完成後のF-86D


写真17 完成後のF-86D

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Vol34 2011 October     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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