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Republic P-47D Thunderbolt Razorback
(Hasegawa 1/48)

by Kiyoshi Iwama


P-47D Thunderbolt Razorback (1/48) Hasegawa Box Art より

 リパブリックP-47Dサンダーボルトは、あまたある大戦機の中でも著名な機体の一つで、多くのメーカから各スケールのキットが発売されています。様々な意見があるかと思いますが、ここで紹介する”P-47D Thunderbolt Razorback”の1/48モデルについては、レベル(旧モノグラム)、ハセガワ、タミヤのキットが良く出来ているというのが大勢の意見ではないでしょうか。 また各社それぞれ特徴があるので、作り比べてみるのも面白いかもしれません。今回はそんな中からハセガワのキットを選びました。アメリカ陸軍第56戦闘機群、第61戦闘飛行隊の“Little Chief”を描いた小池繁氏のボックスアートが、製作意欲をかきたててくれます。


実機紹介

 P-47 サンダーボルトについては今さらここで紹介するまでもありませんが、その生い立ちについて少し述べてみることにします。P-47のルーツをたどると、1936年に米陸軍が77機の製造を発注したSeversky Aircraft Corporation のP-35に行きつきます。このセバスキー社は1935年にロシア人のSeversky氏の手によって設立された航空機製造会社でしたが、P-35の好調な受注にも拘わらず財務状況が悪化し、1939年にRepublic Aviation Corporationとして再建されました。 リパブリック社は、その後陸軍の新しい戦闘機の提案合戦に加わり、胴体中央にターボ過給機を設置したR-1830-31エンジンを搭載するXP-41を提案するのですが、Curtiss社のXP-40に敗れす。しかし、このXP-41こそが将来のP-47に繋がっていくことになるのです。

 その後リパブリック社は、セバスキー社時代に陸軍から受注していた1200馬力のP&W社製R-1830-35 ツインワスプ・エンジンを搭載したYP-43 Lancerを納入するのですが、これも陸軍の要求を満たすことができませんでした。そこでエンジンを出力2000馬力のR-2800-7 ダブルワスプに変え、650km/hを越える高性能機の実現を目指します。この計画に陸軍も注目し、1939年11月にXP-47として試作機2機を発注しました。しかし当時の計画では、XP-47の武装は7.63mm機銃4丁と12.7mm機銃2丁というものでした。 欧州からの情報を踏まえ、今後より強力な搭載兵器が必要になるとの考えからリパブリック社は再度計画を見直し、エンジンをP&Wのターボ過給機付きXR-2800にし12.7mm機銃を各翼に4丁装備する重武装戦闘機を提案、最高速度640mph(644km/h)を約束しました。陸軍はこの提案を受け入れ、XP-47 2機の試作契約を、新たに提案を受けたXP-47B 1機の試作へと変更します。リパブリック社はこのXP-47Bの試作機を1941年4月末にロールアウトさせ、5月6日に初飛行させました。この機体こそが、その後15,682機生産されることになるP-47シリーズの先駆者となったのです。


 P-47は生産を続けながら次々と改善されていきます。初期量産型のB型からC型、D型へと進化し、D型のブロック23まで、レザーバックの機体が生産されます。しかしレザーバックには後方に20度のブラインドスポットを持つという欠点がありました。この改善のためホーカー・タイフーンのバブル・キャノピーが採用され、D型のブロック25以降は、レザーバックに別れを告げ、バブル・キャノピーの機体へと変更されます。 またD型のレザーバックにも、エンジン出力や兵装搭載量の変更から多数の生産ブロックが産まれました。特にブロック21からは従来の上面オリーブドラブ、下面ニュートラルグレーの塗装が無塗装に変更されています。またこのころから戦闘爆撃機としての用途が増え、低空性能の改善のためブロック22以降、幅広で、直径が3.96mと長くなった、ハミルトン・スタンダード社製の大直径プロペラが採用されました。


 最後にP-47の第2次大戦での主な戦果をまとめておきます。戦線に投入されたのが1943年3月で、以降終戦まで約2年半を戦い抜きました。その間の総戦闘出撃回数は545,575回、爆弾総投下量が132,482トン、ロケット弾総発射弾数が59,567発、そして12.7mm機銃の総発射弾数が1億3490万発に達しました。 また撃破機の総数が7,067機(内撃墜数3,752機)、P-47の総損失数が3,449機という数値を残しています。


Seversky P-35
Source: http://www.aviation-history.com/seversky/p35.htm

製作

 ハセガワのキットには“Little Chief”のような派手なデカールが付いていたのですが、購入してからの経年変化もあり今回は別売デカールを使用し、欧州戦線で戦った第8空軍、第56航空群、第62戦闘飛行隊で使用された機体に仕上げました。 製作にあたっては、TechmodのデカールとEduardのエッチングパーツを利用しました。


1.キット全般
 ハセガワのキットは随分前に発売されたもので、タミヤのキットの様にフラップダウンの状態にはなりませんが、形状自体はしっかりしており、モールドも美しく、パネルラインの筋彫りやリベットの打ち方もスケールに見合った、満足できるレベルのものです。
 
部品の精度もよくディテール・アップのためエデュアルドのエッチングパーツを準備したのですが、反って実感を損なうところもあり、結局エッチングパーツは半数くらい残ってしまいました。組み立て性も悪くありませんが、主翼と胴体の接合には少し問題があります。もう一つ胴体下のドロップ・タンクと地面とのクリアランスは事前確認を要します。


2.コクピット
 キットには計器類がモールドされた計器盤が付いており、これにデカールを貼って主計器盤を仕上げることになっています。またコクピット側壁にも機器類がモールドされており、床板と左右側壁、主計器盤、操縦桿、座席でコクピットが構成されます。胴体内に組み立てると大半は良く見えなくなるのですが、飛行機モデルにとって注目される部分ですので、エッチングパーツを使ってディテール・アップしてみました。 先ず主計器盤ですが、計器盤のパーツに合わせ0.5mm厚のプラ板を切り抜き、インテリアグリーンに塗装します。その上に、エッチングパーツの計器面が印刷されたパネルと計器盤のパネルを接着しますが、その間に計器盤の形に切り抜いた0.1mm厚の透明プラ板を挟んで貼り合わせ、計器のガラス面を表現してみました。こうしてできた計器盤が写真1です。


写真1 エッチングパーツを使って出来上がった主計器盤

 床板、側壁、座席もインテリアグリーンに塗装し、エッチングパーツのシートベルトやレバー類などを貼り付けるとともに、機器類や細かな配管を手塗りで塗装します。 最後に適当にドライブラシをかけました。写真2がコクピットを構成する床板、側壁、座席です。

写真2 コクピットの構成品

  またコクピットには照準器が付きます。キットではクリアーパーツでモールドされており、ガラス部分を除いて艶消しの黒に塗装します。その前にエッチングパーツにあるクロスヘアーも取り付けておきます。 写真4が出来上がった照準器です。胴体への取り付けは、ウィンドシールド取り付け前とします。

写真4 照準器

 2.胴体
 最初に各パーツの合いをチェックしましたが、胴体部品の合いはまずまずでした。次に各部の整形です。特に排気口の肉厚が気になるので、削り込みます。写真5は側胴にあるインタークーラの排気口の整形前後を比較したものです。同様にエンジンカウリングの下側面にあるオイルクーラの排気口の板厚を削り込みました。 そして胴体左右を接合する前にインタークーラの排気ダクトをエッチングパーツで作り、胴体内に取り付けます。(写真6)コクピットも出来上がっているので、これで胴体左右を接合する準備が整いました。


写真5 インタークーラ排気口の整形

写真6 胴体内に取り付けたインタークーラ排気ダクト

3.主翼
  キットの主翼は下面が左右一体成型で、上面が別々になっています。ハセガワのキットはこの種の形態が多いようです。主翼の上下を貼り合わす前に主脚収納部を製作し、その部分の塗装をしておく必要があります。主脚収納部にはエッチングパーツがあり、一部を使ってディテール・アップをしました。写真7が塗装を終えた主輪収納部です。収納部の側面にエッチングパーツを貼り付けています。
次にこれを主翼下面パーツの内側に接着しますが、その前に主脚のアクチュエータの金属部をクロームシルバーで塗装しておきます。またこの状態で、爆弾架も付けておいた方が接合面の隙間コントロールが容易です。また左翼下面にはサーチライトがあるので、その部分の内翼側にアルミテープを貼っておきます。写真8が主輪収納部を取り付けた左翼側です。

写真7 主輪収納部

写真8 組み上がった主脚収納部

 この後主翼上面を貼り付けます。しかし、主翼下面はU型断面の胴体下面部を介して左右がつながっているため、どうも上反角の定まりが悪いようです。 そこで図面から主翼下面の上反角を読みとり、写真9のような型紙を作り、それをベースに主翼左右をつなぐリブを作りそれを挟んで主翼上面を接着しました。それが写真10です。

写真9 主翼上反角を決める型紙

写真10 主翼に追加したリブ(白のプラ板)

 4.胴体と主翼の接合
 上反角を修正し上下面接合した主翼を胴体に取り付けてみました。するとどういうことでしょうか、主翼上面側は、胴体部とほぼ一致したのですが、下面では主翼と胴体の接合部前方に隙間ができ(写真11)、しかも前方接合部の胴体側曲面と主翼側曲面の曲率が一致せず、主翼側が少し絞られた感じになりました。 曲率の不一致は下面ということもあり修正を諦め、隙間をプラ板で埋めパテで修正して、写真12のように形を整えました。これは思ってもみなかった不具合です。

写真11 胴体と主翼接合面にできた隙間

写真12 隙間の補修後


5.エンジンの製作
  P-47DにはP&W R2800の2000馬力エンジンが搭載されていますが、キットのエンジンパーツもそれをうまく表現しています。エンジンを取り付ける隔壁をインテリアグリーンに、エンジン本体を黒で塗装し、銀でドライブラシングをします。そして減速機ボックスなどエンジン前方部に着く部品をニュートラルグレーで塗装しました。
そしてエッチングパーツのプラグ用ケーブルとオイルクーラ用インテークを使用して組み立てました。エッチングパーツによるケーブルは銅線に変えることも考えましたが、このスケールなら角断面のケーブルも気にならず、そのまま使用しました。写真13が組み上がったR2800です。

写真13 P&W R2800エンジン


 6.車輪、脚柱などの小物部品
 大物の、胴体と主翼部分がほぼ完成しましたので、次に小物部品の工作と塗装です。まずは主車輪と主脚柱です。オレオはエッチングパーツを利用しましたが、ブレーキパイプは銅線で作りました。銅線とエッチングパーツのオレオにメタルプライマーを塗り、その上から銀塗装をします。次にオレオから下側にあるブレーキパイプを艶消しの黒で塗装し、脚柱は完成です。 次に主車輪ですが、全体をタイヤブラックで塗装した後、車輪のタイヤ部をマスキングし、ハブ部をエナメルのクロームシルバーでドライブラシをかけました。写真14-1が完成した主輪です。
また車輪を脚柱に接着し組み上がると写真14-2の様な感じになります。

写真14-1 主輪

写真14-2 組み上がった主脚


 尾輪部は尾輪と扉一体型の収納部とから成っています。扉の開閉動作アクチュエータが扉と一体成型されているため、この部分は削り取り、0.3mmの金属棒で作り替えました。 扉の内側とキャンバスをインテリアグリーンで塗装し、尾輪部は基本的には主輪と同じように塗装し、最後に汚しのドライブラシを軽くかけます。写真15が出来上がった尾輪部です。 

写真15 完成した尾輪

 次にプロペラですが、キットではカフと一体になったプロペラブレードが4枚、別々にモールドされています。塗装も別々に行いデカールを貼ってオーバーコーティングした後スピナーに接着します。スピナー部はミスターカラーのスーパーシルバーで塗装し、金属感を出しました。写真16が出来上がったプロペラです。 また主翼に搭載する500lb爆弾には先端に安全解除用の風車が付いていますが、これはモールドを削りエッチングパーツに置き換えました。(写真17)

写真16 塗装・組み立てを終えたプロペラ

写真17 500lb爆弾


 7.塗装、デカールの貼り付けとオーバーコーティング
 胴体に主翼、尾翼を接合した後、既に塗装を施した脚収納口などをマスキングしておきます。次に、部隊識別のため尾翼ラダー部とカウリング前方部に塗られた黄色(FS33538)を塗装するのですが、白で下地塗装をし、その上から黄色を吹き付けました。さらにクリア部をマスキングした上から艶消し黒を吹き付けたウィンドシールド、そしてインテリアグリーンを塗装したキャノピーを胴体に仮付けします。
その状態で、上面オリーブドラブ(FS34087)、下面ニュートラルグレー(FS36134)の米陸軍標準色を吹き付けますが、手順としては下面色を塗った後、塗り分け部が若干ボケるようにして下面部をマスキングし上面色を吹き付けました。


 次にデカール貼りです。使用したデカールの印刷は美しいんですが、フィルムが少し厚めで硬質のため、マークソフターやマークフィッターを使用しました。しかしなかなかキットの曲面部にはフィットしてくれません。時間をかけて努力したんですが、結局凸部へはうまくなじまず、デカールが破れる部分も出てくる始末。 しかたなく塗装で補修して済ませました。また細かなステンシルも入っているのですが透明部分が、乾燥するとシルバリングを起こしてしまいました。写真18がシルバリングを起こした状態です。このためデカール乾燥後かなりの量のフラット・クリアでオーバーコートを行いました。それでも完全に抑えることはできませんでしたが、多少は改善されました。(写真19)。

写真18 シルバリングを起こしたデカール

写真19 オーバーコーティング後

8.完成
 塗装後、エナメル塗料のフラットブラックとフラットブラウンをシンナーで薄めたもので、パネルラインにスミイレするとともに、黒のコンテを粉末化したものを筆で擦りつけ、排気やオイル漏れなどの汚しを施してみました。その後、主脚と尾輪、ウェポンや燃料タンク、真鍮パイプで製作した機銃などを接着し、最後に、コクピットの照準器、防弾ガラス、マスキングを外したウィンドシールドと、キャノピー、バックミラー、そしてアンテナ線を取り付け完成です。 アンテナ線は0.1mmの銅線を瞬着で取り付け、艶消し黒と焼き鉄色を混ぜたものを筆塗りしてみました。(写真20~22)また写真23は完成直前に撮影したコクピット内フロント部の様子です。
 


写真20 完成したP-47D(その1)


写真21 完成したP-47D(その2)


写真22 完成したP-47D(その3)


写真15 防弾ガラス、ウィンドシールド取り付け前のコクピット・フロント部

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Vol 49 2013 January.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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