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 懐かしのB級キット(第13回)
瑞雲(アオシマ 1/72)

by 田口博通

  玩具から始まったプラモデルが ギミック路線か、それとも 全く動かないけれども精密なモデルの方向に行くか メーカーによって多様性に溢れていたのが 1960年台でした。
 当時から、精密というには?がつくけれども ギミックが面白いプラモデルを日本メーカーが多く発売していました。エルロン、方向舵可動は当たり前、というか それが当たり前のトレンドの時代だったともいえます。
 学校前の文具店でプラモデルが売られていることも多く、箱絵が魅力的でショーウインドーに釘付けになり、学校帰りに店の前の道路で座り込んで、プラモを作った経験のある読者も多いはず。小学生の遊びの一部として当たり前にプラモデルがあり、今からは想像も出来ないプラモ黄金時代だったと思います。

 
 金型精度が追いつかず、可動部がガタガタで、細かいディテールは?が二つくらいつくが、デッサンはなんとなく実機の雰囲気を再現しているという今でも捨てがたいキットが多くありました。既に絶版になっているものが多いのですが、幸い、その中には今でも生き残って現役のプラモキットもあります。

 このシリーズは そんな 懐かしいB級キットを取り上げて行こうという連載です。形状とか デイテールを求めるならば、後発の決定版を購入すればいいわけで、ディテールの修正などをせず、オリジナルの雰囲気を壊さず、完成を目指したいと思います。





 今回の「懐かしのB級キット」で、取り上げるのは 青島の瑞雲です。
 瑞雲といえば、高速、対戦闘機戦闘、急降下爆撃も可能として欲張った構想で開発された水上偵察機です。しかし、欲張り過ぎはあぶはちとらずで 結局成功しなかったのか、超マイナーな水上機となってしまいました。
 青島のキットは水上機でありながらオール可動で、主翼が折りたため、フラップ、エルロンが可動となっていて、キャノピーは可動しませんが、開閉の2状態の透明部品付属しており、選択式となっています。また、立派な置台もついていました。 
 水上機というだけでもマイナーなアイテムであり、それが1960年代当時の少年雑誌にも登場しないような 瑞雲という知名度の高くない複座機なのですから、あまりセールスの方は芳しくなかったのでは と推察されます。それでか、フジミ 1/72が90年代に登場するまで「唯一もの」であり、希少価値があるキットでした。
 さて、キットの出来はというと、オール可動に力が入り過ぎたのか、それとも昭和30年代設計当時の実機資料が少なかったのか、「デッサンが残念でした」の部類で、平面形だけがちょっと実機に近い程度です。
 1972年発行の航空情報別冊 プラモガイド49頁の評価によりますと『カウリングから前部胴体が細く、キャノピーが高く透明度も悪く、垂直尾翼の形も違い、主翼のフィレットも小さくと、実機のイメージからは ほど遠い出来』ではありました。
また、後部フロート支柱の長さが2mmほど長すぎて、 胴体がフロートに対して、前のめり気味になってしまいます。

 とはいうものの、キット発売当時の時代背景のお約束でオール可動の貴重なキットです。主翼がガタガタではありますが、きちっと折りたため、フラップなど動翼も可動し、素直に組む分には プラモ工作の楽しさを堪能することができます。

 瑞雲のキットは絶版ではないようですが、最近 模型店ではあまりみかけなくなり、今回は 2年ほど前に WEBMODELRSの読者の方から譲っていただいた貴重なキットを使わせていただきました。 ありがとうございました。
メーカーの青島さんにはこのシリーズをまた市場に流通させていただきたいところです。


箱絵 (リニューアル版)


部品 一式
組み立て説明書


主翼を展張すると残念ながらガタガタ。しかし 90年代に至るまで「唯一もの」で その地位はゆるがなかった。


製作について

 このキット 説明書によるとまず主翼から作ります。可動部が多いので すりあわせには注意が必要です。幅10mmくらいの半丸ヤスリを用意して、接合部を入念に合わせて行きましょう。
 フラップはごつい補強ビードがモールドされているので 削っておくといいでしょう。フラップとエルロンはダラッと垂れ下がるのも恰好がよくないので、右の写真のごとくに ガンダム用?として模型店の棚にぶら下がっている細いスプリングを切って、仕込んでおきますと、可動しても中立位置に復元するようになります。


フラップには 細いスプリングを仕込んでおくと たれさがらない。

カウリングは胴体と一体ですので、胴体左右を接着し、組み立て済みの主翼ブロックに接着すると、もう形になります。
胴体と主翼の間には隙間ができますので、パテのお世話になりました。


ここに慎重にフロートをとりつけます。フロート脚は左右のフロートが平行になるように長さを調整していきます。

塗装


上面 Mrカラー 濃緑色、下面 明灰白色で筆塗で塗装してみました。
デカールは年月の経過で黄ばんでおりましたので、尾翼デカールのみ キットのものに マイクロフィルムを塗り補強して使いました。
日の丸は 他キットからの流用です。

フロートの赤帯は、テープでマスキングして手書きしました。

 カウリングにはエンジン部品は付属しておらず、プロペラ軸を通す平板を胴体左右接着時に組み込むようになっていますが、組み込みを忘れていました。
というわけで、完成した機体のカウリングをノコでばっさりと切断して他キットの余り部品からエンジンを物色しました。
ハセガワ旧版零戦に余分にエンジン部品がついていたことを思い出し、カウリングに合わせてみたところ、少し直径を削るだけで 見事に はまりました。
というわけで 再接着し 一件落着です。
切断したカウリングに ハセガワ旧版の栄エンジンを入れると ばっちり。余り部品の有効利用です。


完成

 
透明度の悪いキャノピーはクリアラッカーを塗れば気持ち改善できます。機銃をシンチュウパイプで置き換え、ピトー管とアンテナ柱を自作して接着し、完成となりました。
 置き換えたエンジンはカウリングをのぞきこむと ちらっと見えます。
 実は白状しますと、学生だった時分に前述の1972年版プラモガイドを参考に 一度 大修整を試みて見事挫折。完成にいたらなかったことがありました。
今回 数十年ぶりに 素直に作ってみて 今度は完成しましたが、なんともいえず満足感がありました。
 B級キットはだいそれたことを考えず、素直に作れば、それなりに楽しめるということでしょうか。
 押入れにしまいこんだ皆様も多いとは思いますが、ちょっと出してみて、ぱっと気晴らしに作ってみるのも楽しいのではないでしょうか。
 
 また B級コレクションに一機加わりました。
 おつきあいいただき ありがとうございました。





こうやって 横から見ると前のめりなので、やはり後柱基部を2mm程度削った方がよさそう。


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Vol.52 2013 April.      www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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