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ノースアメリカン P-51A,Mk2 (フロッグ 1/72)

by 田口 博通 Hiromichi Taguchi       



 このP-51A,Mk2のキットは その昔 袋入りで売られていたもので、当時 200円だった。現在はフロッグというメーカーも消滅していて 当然 廃版なのだが、そこは抜かりなく金型を有効利用し ロシアあたりで流通しているようである。

 当時 D型、B型のキットは多かったが、このA型、(ムスタングⅡ)の1/72キットはフロッグだけしかなく、貴重な存在だった。
 とはいっても そこはフロッグのこと。基本的な形はムスタングだが、欠点も多かった、
1974年度版の航空情報別冊プラモガイドによると、フロッグにしては好意的なキット評だった。そのまま引用してみよう。

 『珍しいA型(イギリス空軍名 ムスタングⅡ)のキット。リベットやスジボリが多少荒いが全体の感じはなかなかのもの。座席まわりなどもシンプルな構成で うまくまとめてある。欠点としては キャノピーが小さくて落ち込んでしまい、背中に段がついてしまう。尾翼の後縁は厚すぎる。デカールはアメリカとイギリス機が各1機ついている。胴体を重点的に手直しするとよい。』

という具合であった。

袋入りの箱絵

箱絵の裏側が説明書になっている。



製作について

 リハビリ

  実は 30年くらい前に取り掛かり、胴体に主翼をとりつけてパテ整形を終え、それから 何度も取り出し、また ため息をついて しまいこみを 繰り返していた。つまり早く言うと「投げ出していた」わけです。

途中で投げ出していたフロッグのP51A


 投げ出していた理由は、「どんなふうに作るかを迷っていた」の一言につきます。1970年代以降 「精密で正確で凹スジボリでなければプラモデルではない」という 風潮が主流であり、完成させても 誰にも見せるわけにもいかずと、 それが フロッグのムスタングの完成をちゅうちょさせていたのです。
(そりゃ、このキットを大修正するのは大変で 完成がおぼつかないし、そもそもA型が欲しいのならば、ハセガワのB型から改造する方が はるかに楽)

 毎号のMA誌を読むたびに、テクニック満載で 技術一辺倒の そんな窮屈な風潮に プラモ作りが苦痛でモンモンといたのが、4年前にwebmodelersを自分で創刊した一つのきっかけでした。商業誌が窮屈な風潮を作るのならば、「自分で雑誌を作れば違うようにもできるのではないか」とちらっと思ったのです。 
 
 その意味では 静岡HSの合同作品展に何度か参加した影響が大きい。合同作品展では キットを素材として精密工作を追及するグループの苦労談も聞き、また逆に、思い思いの個性でプラモ製作を楽しむクラブもありと、プラモデルの楽しみ方の姿は 技術一辺倒だけではなく実に多様でした。
 
 現在ならば 「多様な作り方があるんだから、フロッグはフロッグらしく作ってみようよ」 とも気楽に言ってみることもできる。
今この歳になったから言えることかもしれませんが、製品の流行とか 作り方のトレンドとか、 製作技術とか マニュアルとか作法とか そんなことに惑わされていた自分自身がおかしく思える。マー 邪念というか、若気の至りというものだったのかもしれませんね。
 
 そんないわくつきの途中キットがあったので、今年日本に帰国後、3月からプラモ作りを本格的に再開するに当たり、リハビリを兼ねて、思い切って それを 塗装して完成に持ち込んでみることにしました。

塗装

 放置する前に 胴体の荒いリベットと凸パネルラインは既にペーパーをかけて落としてあり、翼後縁は薄く整形してあった。胴体と主翼の隙間もパテで埋めてあったのだが、長年の放置で各部にカビが、、 

台所用のレンジティッシュで拭いて きれいにしてから再開する。

今回は筆塗で 迷彩を描いてみることにした。
塗料は MrカラーRAF特色セットを使い、細筆で 下面は 363  メディアム シーグレー、上面は361 ダークグリーンと362 オーシャングレー で塗ってみた。
 筆塗には 油絵用の紙パレットを使っているが、価格も安く 使いやすくて お奨め。迷彩の境目ぼかしは細筆で2色を混ぜてなぞり、ぼかしている。

筆塗で迷彩 後ろに写っているのが紙パレット
迷彩塗装の完成


侵攻しま帯 invasion stripe

 主翼下面と胴体下面には 白黒のインベージョン ストライプがある。これをどうやって塗装するかも頭を悩ますポイントだ。
 悩む一つの理由は 白幅と黒幅を同じにすると、白幅が広く見えるという巷の説で、確かにそうなのでしょう。 
しかし、よく考えてみると、戦争中の忙しい時に実物が それを補正して白黒幅の比率を変えて塗装していたとも思えない。
という訳で、簡略化して 白と黒を同じ幅で塗装することにした。そうすると 塗装方法が簡単になる。今回の方法をご参考に紹介しよう。

(1)まず 白の部分を両端をテープでマスキングして白つやけしで塗装する。
(2)幅を5分割した寸法にマスキングテープをカットし、白の部分をマスキングしていく。両端の2枚は先のテープにそって貼る。真ん中の1枚はバランスを見ながら中心に貼る。人の目はなかなか正確なものです。
(3)マスキングされていない部分をつやけし黒で塗装し、乾燥後、一度カッターナイフの刃先を入れマスキングテープをはがして行くと、黒帯が現れる。
(4)インベージョン ストライプの出来上がり

その後、主翼前縁の黄色味方識別色とスカイの胴体帯を
細切りにしたテープで両端をマスクして塗装し 全塗装完了。



風防の自作
 中断する前に このキットの欠点は風防である という先述のプラモガイドの記事を見て風防を自作しようとしたので、キットの風防部品が使えない状態になっていた。それで仕方なく風防を自作するはめになった。風防の木型を作っていたのでは、完成が更におぼつかないので、形状には我慢して、キットのキャノピーを元型に塩ビ板で絞ってみた。
(1) 風防を絞るには元型をしっかりと保持しなければならないので、キットの風防の下に木切れを削って台木にする。木切れはホームセンターで小学生工作用として袋一杯入ったものが200円くらいで売られているので、それを購入すると一生分ある。
台木とキャノピーの隙間は粘土で埋めると簡単。 小バイス( ホームセンターで1000円くらい。)で台木を挟み保持する。
(2) 塩ビ板は熱して延ばすので 1mm位の厚めの板が使いやすい。
塩ビの保持板は、10cm角くらいにべニア板を切って、中心に糸鋸で 1/72風防より少し大きい穴を開けておくと、共通で使える。
 塩ビ板は適当な大きさにはさみで切り、画鋲で べニア板にブスッと4隅をさして留める。

 ホットプレートでこのまま塩ビ板を温めて、ぐにゃっと型に押し付けて、そっとはずすと 写真のように出来上がる。
3個ぐらい作って 一番出来の良いのを使えばよい。
慣れると意外と簡単にできる。


 
 (3)保持板から塩ビ板をはずし、写真の余分な周囲部分を はさみで慎重に切り落とす。 (4)キットに現物で形状をすり合わせて、塩ビ自作風防の出来上がりとなる。

風防とキットが隙間なく合えば、後は風防枠をマスキングして塗装するのみ。
風防の接着はSCOTCHの多用途強力接着剤(ビニルゴム系で透明)を使えば 簡単。


デカール、脚、そして完成へ

 デカールは 古くなっていたので、NとシリアルNo.のみ、マイクロフィルムで補強して使用し、国籍マークは他キットから流用した。(死ぬまでに作りきれないほど 在庫があるんだもの、流用されたキットのデカールは、それを作るときにまた別から流用すれば いいことさ。)
 脚、プロペラ、アンテン柱などの小物を塗装して、とりつけ 一歩づつ 完成に近づく。
 主脚カバーは閉状態が正しいのだが、開いている写真もあることから、開けて胴体下面をにぎやかにすることに。英コクピット内部グリーンに塗って、SCOTCHの多用途強力接着剤で開状態で接着した。この接着剤だが、まことに具合がよい。




完成後の感想

 30年越しにフロッグのP51Mk2が完成しました。完成するとそれなりの満足感があります。 フロッグのムスタングは機首下形状が今一つなので、下面色と迷彩色のラインを少し変えて、見た目を補正してみた。
精密さ、機体形状の正確さとは遠いが、全体の雰囲気はそう悪くない。フロッグ亡き今となっては フロッグをフロッグとして 作ることも悪くはないと感じました。
まだ Me109Fや ガネット、バラクーダ、バルティベンジャラス、オックスフォード、ハリケーンMk2,ボーファイター、ホイットレーと、フロッグの在庫があるので、いつの日にか 作って日の目を見せてやりたいものです。





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Vol52 2013 April  www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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