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~ まだまだ、あるじゃないか ~
お願いします WWⅡの72新キット

by 加藤 寛之


1970年代の模型誌には、「こんなキットが欲しい」みたいな記事がよくあった。今はキットの種類も多く、“これが欲しい”というようなキットは出尽くした感がある・・・が、そうでもない。これから書いてみる機種も、古いキットならば存在していたり、簡易インジェクションやレジンで売っていたりはするが、私としては「普通に買える普通のプラモデル」としての範囲で新キットがほしいものをあげている。 とりあえず、私の好きな1/72に限った話で、さらに言えば時代がWW2前後で、私が好きな単発型式を主にすることとした。今回は(続編があるのか?)あまりにも試作機どまりものや実験的な機体は除いている。そんなゆるゆるとした雑文として読んでほしい。さらに、全てのキットを知っているわけではないので、「それ、あるよ」ということがあたったらご勘弁を。



アメリカから始めよう。筆頭はP-51Hである。これの良いキットが欲しい。何でないのか? それはWW2で活躍したとは言えないし、何だか分からないうちにジェット機に押し出されて消えてしまった感じなのは分かる。でも、カッコいい。“ムスタングはD型でオワリじゃないんだよ”と言いたい。個人的にはツインムスタングよりも好きなんだけど。 P-61の発展型、F-15リポーターもステキだ。実機の生産数は少ないけれども日本に駐留したこともあったようだから、縁はある。これもプラモデルになったら見栄えはイイと思う。巨大な風防は、コックピットに凝りたい方にも向いている。プラモデルの展示会で黒いブラックウィドウと銀色に輝くリポーターが並んだら、それはそれは凄いはずだ。改造マニアはXP-61Eにすることも可能なので、黄色いカウリングの面白い塗装もできる。母体であるブラックウィドウの人気でさえもいま二つ、という状況がリポーターのキット化の足を引っ張っているのだろう。


キングコブラは哀れだ。簡易キットやアオシマの古典的キットはあるが、一流メーカーの新キットで欲しいと思う。主戦場が赤い星だからといって、純粋なアメリカ機なわけだし、ムスタングみたいに層流翼だし、すごい数を生産しているわけだから、キングコブラをもっと大切にして欲しいのだ。アメリカとフランスのマークを主に、赤い星マークを添える形で発売すれば、それなりに売れるんじゃないかと思う。それなり、だけど。
異国でちゃんと働いたのに評価されないといえば、ベンジャンスもそうだ。相当な数を製造したもののほとんどが輸出され、しかもアジアで使われたことが原因で視界にはいらず不当な扱いを受けている。地方勤務だからといって駄作扱いはひどいじゃないか。
ジャングルに潜む日本の兵隊さんがこれに襲われた(かもれない)敵機だぞ。実機は凄みのあるスタイルなのに旧フロッグのキットがとてつもなく変な形だったことが原因で、きっと多くの人がその姿を誤解していると思う。再認識するべきだ。・・・とは思うが、売れそうにないな。

シーウルフは、ここに入れるか入れないか、迷う。ある程度は量産されているし、軍用機としても駄作ではない。でもアベンジャーが痩せたようで肉感がなく、弱々しい。風防ワクも本数が多くて塗りが面倒だ。限定生産品で売り逃げするのが妥当そうな機種ではある。バッカニア(バミューダ)はさらに魅力を感じない。キットがないから欲しい、というものでもないようだ(とは言いながら、私は以前にバッカニアをバQで作ったことがある)。


日本機キットにも欠落がある。キ102はどうか。非公式には五式複戦とも呼ばれた制式寸前の機種である。パブラだったか、簡易キットで私は作ったことはあるが、簡易キットでは満足できない機体だ。これをマトモなキットで見たいのだ。重量感とスラリと伸びた形状のきわどいバランスが個性的な飛行機だ。これならば全世界に売れ・・・ないな。日本人モデラーでも関心がないし。
メジャーならば、雷電11型はいいぞ。翼上面に大きな膨らみがあるし、風防前の形は零戦みたいな膨らみを成している。カウリングには銃口が2つ。これはいい。塗装は上側面濃緑で下面灰色が普通だが、ムリをすれば試作時のオレンジ色という選択もある。これは推奨品だ。
鍾馗の初期型もいい。脚カバーが外折れタイプくらいでも我慢できるが、風防が胴体内に引っ込むアレなら最高だから、風防2つ入れてもらって選べるとよい。厳密にみれば多少の差異はあろうが、気になる人だけが修正すればいい。1/72なら「風防2つ入れました」で充分だ。塗装も国内の試験時と海外派遣の黒茶色から選択できる。写真も『世界の傑作機』にあるから、買った人が手を加える余地もあるだろう。これこそ世界に・・・ムリだな。ヤワな日本機のなかでは個性抜群なんだけどな。
日本機の最後は二式水戦。「なんだよ、あるじゃないか」なんて言わないでほしい。垂直尾翼がちゃんと大きくて、フロートも一回り太い、しっかりした形のものだ。零戦の亜種なわけだから“一流メーカーさん頼みます”って感じだ。灰色か緑という色の選択もできるし、お好みならば藤色に塗ってみたっていい。でもそんなに売れない機種の再開発になるから・・・キビシいな。



イギリス機は、エアフィックスが頼りだ。ぜひ、デファイアントの新キットを作ってほしい。エアフィックスの現行品が時代的に「古い」キットなのはよいとしても、全然似ていないのはマズい。実機の評価は低いけれども「実戦では使えなかった」なんて機種はどこの国にもあるし、それは模型に関係ないことだ。ぜひ、しっかりしたキットで見たいものだ。バリエーションなんて考えず、基本形でお願いします。
デファイアントの4連装銃座を新規開発したら、パーツ流用でついでにロックも頼みたい。この飛行機なんか、完全に無視されている。そりゃあパッとしない実機だけれども、ちゃんと量産された機体だ。冷遇という観点では、デフィアントよりもずっと酷い。ぜひキット化を。蛇足だが、4連装銃座がないくらいにしか見えないスクアは主翼端の処理だけでなく胴体の太さが違うらしいので、キットの共通化はムリ。旧フロッグ製スクアのキットは全体的にバランスがおかしい駄キット(だと思う)なのに、世の中のモデラーから不満の声を聞かない。つまり、スクアはどうでもいい飛行機なんだな。だから、“スクアも欲しい”とは言いません(諦めます)。
羽布張り主翼のハリケーン初期タイプになると、これはムリな要望とは思えない。これはAZモデルの簡易インジェクション・キットにあるのだが(私はつい先日購入した)、それでも大穴と言いたい。何といっても「複葉機が単葉に進化中」って感じが面白い。これはイギリス人が“待ってました”と買ってくれるに違いない。これを正規インジェクション・キットで欲しい。もちろん、主翼も胴体も、羽布がピ~ンと張った造形でお願いしたい。へこませただけのヤワく弛んだ羽布は認めない。当然、スピットファイアの2枚ペラ・低い風防タイプもパッケージを揃えて並行販売すれば、売れ行きは爆発的規模で期待できる。そうなるとスピットファイアの古い既存キットがそうなっているハセガワがやや有利だが、エアフィックスさんが黙っているはずはないと信じたい。



ウェルキンも大いに期待できる路線だ(そうじゃないだろう)。これはホワールウィンドのお姉さんみたいな形で、模型ならば見栄えがすると思う。戦線への配備こそないが、そこそこ製造しているはずだ。3枚ペラ・4枚ペラと変化もあるし、大サービスでバブル・キャノピーとレーダーのパーツも入れたコンバーチブル・キットにしたら、これは商品価値が高い。
ウェルキンといえば、ホーネットもキットに恵まれない。おそらくキットメーカーの社長さんが、「ホーネットならば、いくら先発キットがあってもモスキトーの方がよほど売れる」と思うのだろう。実は、私もそう思う。だから、新規開発されないんだな。
それならばバラクーダの5型はどうだ。これはゴツい形だ。日本人は買いそうにないが、イギリス人さんにたくさん買ってもらえるよう期待しよう。ちょっと戦争に間に合わなかったとはいえスピアフィッシュもいい。戦争が終わったから量産しなかっただけだから、仲間に入れてもいいと思う。バラクーダの正常進化形で、ようやく飛行機らしい形になったのがよく分かる。2機並べたら、展示会での注目を約束していい(でも、「どっちも知らないナ」と言われるかも)。
脱線でひとつ。爆撃機のマンチェスターって、マトモなキットがあっただろうか。名機ランカスターを生み出した飛行機なんだから、忘れていたら可哀想だ。


ドイツ機はほんとにいろいろ発売されているので、省略する。あえて言えばMe262の極初期型尾輪式タイプだが、これは悪趣味か。イタリアとフランスは、よく分からないので一気に省略。ソ連に話を進めよう。
ソ連ならば、Yak-9Uとか9Pがカッコいい。La-9やLa-11も凄い形だ。どうもソ連の飛行機はプラモデル業界に無視されやすい気がする。でも本当にかっこいいと思う。色々な国で使われているから、マークにもバリエーションがあるのに、キット発売に手を出す会社は少ない。実に残念だ。プラモデルそのものが冷戦下の西側文化の産物なので、ソ連機はイメージ面で損をしている。これが売れない原因だな。
そんな中でなぜか人気があるシュトルモビクにも疑問がある。イリューシンIl-2はいろいろ発売されているのに、後継機のIl-10は無視されている。Il-2はタミヤまで新発売なのに、Il-10になると、KPの安いけれども古いキットだとか、なんだか高額なキットがあったくらいしか覚えがない。WW2にもちゃんと参加しているし、朝鮮戦争でも実戦に出ているし、各国に供与もされている。そんな飛行機なんだから、一般的に流通するお手ごろ価格で組みやすい製品がほしいのだ。


さて、「キット化する」というのは、メーカーにとって資金が回収できて儲かることが前提である。それはそうだろう、でも「また、コレですか」みたいな機種選択や、「こんな些細なバリエーションキットで買いたい?」みたいな新製品だけでは、私はつまらないのだ。「じゃあ、発売すれば買いますか?」となると、さて、どうでしょう・・・。在庫いっぱい持っているし・・・。高いとイヤだし・・・。
これだから、メーカーが手を出さないのだな。

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Vol 52 2013 April.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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