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ポリカルポフ UTI-4(I-16タイプ15)
(Aモデル 1/72)

by 加藤 寛之


  I-16の複座練習機型を単座にして重武装化した試作機らしい。『世界の傑作機』№133「ポリカルポフI-16」のp.110 にあるUTI-4の解説に「対地攻撃用に12.7mm機関銃2挺とロケット弾ランチャーを装備した機体がテストされたことがある」とあるが、これがそれかと思っている。
 
このキットは、いきつけの「ワールドホビーショップはせがわ」でサービス品として売っていたものだ。開封してからこの仕様も作れることが分かった。複座型の単座型で普通は無武装の重装備仕様という、訳の分からない設定にひかれて作っただけなので、実機のことはまったく知らない。でも特殊なマークを指定しているくらいだから、どこかに写真はあるのだろう。そんな機体である。



  本題に入ろう。これはAモデルの完成品である。もう一度言おう、Aモデルの完成品である。魅力的な機種選定に誘われてAモデルのキットを購入したモデラーも少なくない(少ないかも)と思うが、その完成品はほとんど目にしない(注:SLB展示会ではそうでもない)。もう、新品なのにボロボロなのだ。やめればいいのにパーツ分割は多く、その全てに、かつ全周にバリが付着している。   表面にはなにげなく金型キズがある。モールドは甘く、「パーツの合い」という言葉はAモデルに存在しない。その組立て困難さは尋常ではない。技術的なハードルよりも精神的強靭さが求められるところに困難があるのだ。そうは言っても、今回も完成に至った。



パーツをパンナーから切り離す。ゲートは太くもろいので、慎重にはずす。次はカッターで大雑把にバリを切り取る。接着面を均す。これでやっと仮合わせができる。もちろん、合わない。どうするか・・・ウ~ン・・・、これでは記事にならない。それでも、一つひとつ組み進める。大きなパーツ同士でも、もちろんパックリと隙間ができる。パテで埋めるだけでは強度不足になる(くっ付いていないのだから)ので、瞬間接着剤を流し込んだりプラバンを詰めたりして、なんとか固着させて整形する。例えば主翼の上下面パーツ。前縁はというと接着面がボロボロで、接着面を均したところで線はガタガタ。そこにバリがはみ出しているから、どこまでが前縁なのかハッキリしない。適当にくっ付ければよいこととする。 後縁はエルロンが上側パーツと一体成型なのだが、これが猛烈に厚い。後縁をガリガリと削り上げて、なんとか見られるようにする。削る場所は下面側だから、モールドが消えることなどは気にしない。後縁を薄く見えるように整えると、フィレットの流れも下面側をグッと削りこむ必要がでてくる。これを胴体まで削り込むと、実機の印象に近づいてくる。そんな感じで組み進むわけだ。風防はタップリとした肉厚。しかも風防の真ん中に深い金型キズがあった。「どうしようか・・・」と考えていたらポロリとどこかに落としてしまって見つからない。仕方なくエンビを絞って自作した。木型を作るのが面倒だったので代替品を探していたら、それらしい形をしている歯ブラシの柄を見つけたので、これで絞る。「どうせ、だれも分かりゃしないさ」と自分に言い聞かせればOKだ。 



今回は大部分の塗装にタミヤの水性塗料を使った。タミヤ製はツヤ消しが強いのが特徴だ。私は水性塗料の場合、ツヤ消しで塗って「トップコート半光沢」を噴いて仕上げる。ツヤ消しで塗るとベトつかなくて便利なのだが、繰返し触っているとツヤが出てきてしまい、ツヤの均質化が必要になる。それで最後にトップコート、なのだ。私が水性塗料を冬場に使う理由は、窓を開け放たないで塗れる防寒対策だから、春になって桜が咲けばラッカー系にもどる。おそらく、この冬はこれが最後の水性塗料での塗装だろう。
 完成した姿は、まあOKである。べつに悪くないが、特に良くもない、そんな感じである。Aモデルのキットは、製品としての品位が低いキットが多い。私はプラモデルを「組む」ことが好きなので、ボロボロのAモデルではあってもイヤではない。それなりに頑張ってもあまり良いものはできないけれども、それでも嫌いではない。立派で素晴らしい作品を作ることだけがプラモデルのお楽しみではないのだから、こんなキットがあってもよいのである。まだこの陶酔の世界を体験したことのない方は、一度、取り組んでみたら良いと思う。機種選定は貴方の心を振るわせるほど魅力的なのだから。


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Vol 55 2013 May.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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