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「堀越二郎の軌跡」  LSの零戦21型を美しく作る
(LS 1/75)

by 加藤 寛之



LSの零戦は1964年発売だという。LSが廃業した後に金型はアリイへ渡り、そして1年ほどまえだろうか、メーカーの発注カタログから静かに消えた。ほぼ半世紀のご奉公であった。
発売のころは飛行機プラモの可動全盛時代であった。プラモデルが、おもちゃと模型の間で子供たちに買われていた時代でもあった。LSの零戦は、その両方を兼ね備えた名キットである。翼には、可動のためのピンを支える大きな膨らみがいくつもある。ところがこの膨らみを削っても、翼面に穴はあかない。つまり、LSは完全な模型を原型にしてから可動化した、私はそう確信している。
ただ、大きな段差がついた可動風防は、自作する以外にはどうしようもなかった。ところが誰ということもなく、ハセガワの零戦(旧版)の風防が、だいたい合うことが分かった。マトモな零戦がほしいモデラーは、ハセガワのキットから風防を借用して「零戦」を作り上げた。今回は、この再現である。現時点でこんなことをする意味はまったくないのだが、長い年月にわたって私を楽しませてくれたLSの零戦への御礼である。私の手元にこのキットの在庫はなかったのだが、SLBサークル仲間のO氏が譲ってくれた。ほんとうに嬉しかった。




まず、翼面にあるエルロンやフラップのヒンジを支える膨らみを取る。上述のように穴はあかないので、切り落として平らにすればよい。エルロンとラダー、フラップにあるヒンジのための切り欠きは、プラバンを入れて整形する。可動の翼端は接着して固定した。エルロンと主翼、ラダーと垂直安定板を翼に接着する前に、翼側にプラバンを入れて厚みをそろえる。そのあとでエルロンやラダーを接着する。そこの隙間には、溶きパテを流して埋めておく。つまり、可動しないプラモデルだったようにする。フラップは内側のモールドがステキなので開状態にする。今回は主翼は捻り下げをつけようと半乾きのときに曲げてみたのだが戻ってしまい、これはうまく出来なかった。 風防は「合う」といっても所詮は別キットなので、胴体側を削って載せる。LSのキットは可動風防にするために第一風防の幅を微妙に広げ、後部には台座を設ける加工をしている。前部の幅は加工を諦めるが、後部は台座を削っても胴体に影響が残ってしまう。ここは僅かだがパテのお世話になる。第一風防前方の凹みは風防に合わせて削るが、キットのこの部分は肉厚がない。ほんのちょっと凹ませただけでOKとする。LSのキットは1/75でハセガワは1/72だから、どうしても風防は大きめにはなるのだが、許容しないといけない。




これ以外は、キットを組むだけである。キットの問題点としては、胴体下面側の開口部が大きいために胴体が開いてしまい、結果、主翼の上反角が弱くなる傾向がある。このキットを作る方がおいでなら、胴体幅を固定されたい。主翼端の平面形やラダーの側面形もLSの味をなくさない程度に少しだけ修正してある。 小さめなカウリングは、開口部を大きくし、取り付け位置を少しだけ上にして見栄えをよくした。ピトー管は真鍮線に置き換えた。ほかにもチョコチョコと加工している。LSの零戦の時代は「キットは素材」といわれた時代だから多少の加工は常識で、それは「キットを組むだけ」の範囲。




塗装は垂直尾翼が塗り残された機体にした。これを選んだ理由は、来年5月のSLB展示会のテーマが「三角」だから。垂直尾翼が三角に見えるでしょ? このような零戦の写真は、渡辺洋二『異なる爆音』(光人社NF文庫、2012年)、『世界の傑作機』新版№5(文林堂、1987年)にあり、塗装図としては『不滅の零戦』(「丸」平成19年1月別冊、潮書房)にある。ただし機番は二式水戦闘のデカールを借用したので、デタラメ。私は、全然気にならない。 完成機を眺めてみる。
“美しい”。
「これがLSの零戦?」と自分でも疑いたくなる。あまりにもキットそのままと違うが、もしかしたら私にとってこれが最後のLS零戦になるかもしれないのだから、これで良いのだと思う。
今日は2013年7月18日、映画「風立ちぬ」の公開はまもなくだ。




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Vol 58 2013 August.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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