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「堀越二郎の軌跡」  行ってみました企画展

報告者 加藤 寛之

スタジオジブリ映画「風立ちぬ」に呼応した群馬県藤岡市の企画である。藤岡市は零戦設計者である堀越二郎の出身地で、氏が残された資料が先ごろ寄贈されたことを受けての公開である。


 展示は小さな部屋ふたつで、1室は氏の足跡をたどるパネル、書籍や手紙、欧米出張のときのパンフレットなどで人物紹介に使い、もう1室が飛行機設計関係の展示であった。私が「これは見てよかった」と思ったものに、烈風や烈風改の青図(設計図の青焼きコピー)数枚、烈風の写真が発見される以前に使われた再現画2枚、おそらく『世界の航空機』にも使われたのではないかと思われる小さな3面図があった。  青図は機種名の部分が破りとられており、終戦時の隠匿の厳しさを感じさせた。小さな3面図には、形状に不満である旨の書き込みが袋に書き込んであった。「惜しいナ」と思ったものは数点の写真説明くらいで、小規模ながらも充分なものであった。1日に2~3回、30分ほどの映像説明があり、あまり語られたことがない家庭人としての氏の紹介や寄贈資料についての説明は興味深いものだった。


この企画展に行ったからといってプラモデルに使える資料が手に入るわけではないし、「零戦じゃあネ」という人も多いだろう。だが、こういう機会はあまりない。近くに住んでいて時間がある方は行っておいたら良いと思う。ちなみに入館料は無料、映像観賞も無料である。会場の藤岡歴史館は埋蔵文化財のための博物館のようで、周りに古墳がある。館の中や外でお団子やお饅頭、お弁当も売っていた。行った日は関東が熱波に襲われていたときだったので退散したが、日を選べばピクニック気分で周りを歩けそうだ。ついでの観光には、埋蔵文化財では旧石器の岩宿も群馬県だがここからは遠いので、世界文化遺産認定を目指している富岡製糸所のほうがオススメだ。 なお、埼玉県所沢市にある航空発祥記念館でも「堀越二郎の生涯」展を開催している。こちらは私の家からすぐ近くなのだが、まだ行っていない。入館料は有料のはずだ。
まったくの蛇足なのだが、私にとって「風立ちぬ」は松田聖子だ。

企画展 堀越二郎の軌跡
藤岡歴史館(群馬県藤岡市白石1291-1)
会期 2013年9月8日まで


<堀越二郎著『零戦 その誕生と栄光の記録』のこと>
 企画展「堀越二郎の軌跡」に行ったお土産に、売店でこの本を買ってきた。角川文庫版である。もとは光文社の新書版カッパブックスの一冊であった。私は1995年12刷を持っている。カッパブックス版と比べると文章は同じようだが、図版は新たに描き起こしてあった。近年、零戦1号機のカウリングは上部に吸気口がどびだしてはいない、との説が出ている。そこで、できればカッパブックス版がよいのだが、角川文庫版ならばp.69を見てもらいたい。この図はラダーが真っ直ぐであり、水平尾翼は中心線上にあり、後胴は短く、プロペラは2枚羽。尾部下面に臨時で取り付けたヒレはないものの、明らかに試作の1号機または2号機である。この図ではカウリングの上部と下部に吸気口がある。 一方、それに続く本文には「エンジン覆いからなだらかに後ろにつながる流線型の・・・」ともあって突出がないようにも読めるのだが、烈風の小さな3面図にさえ苦言する堀越氏がこの図の掲載を認めていたのはどうしてだろうか。しかも私は「カウリング上部に突出はない」のような発言を堀越氏がした、という記述を目にしたことがない。別の話題にするが、この本には試作機の色が書いてある。p.95末尾から「できあがった試作機には、全体に鈍く光る灰緑色の塗料がかけられ、エンジン覆いだけが黒く塗られていた」とある。

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