企画展「堀越二郎の軌跡」に行ったお土産に、売店でこの本を買ってきた。角川文庫版である。もとは光文社の新書版カッパブックスの一冊であった。私は1995年12刷を持っている。カッパブックス版と比べると文章は同じようだが、図版は新たに描き起こしてあった。近年、零戦1号機のカウリングは上部に吸気口がどびだしてはいない、との説が出ている。そこで、できればカッパブックス版がよいのだが、角川文庫版ならばp.69を見てもらいたい。この図はラダーが真っ直ぐであり、水平尾翼は中心線上にあり、後胴は短く、プロペラは2枚羽。尾部下面に臨時で取り付けたヒレはないものの、明らかに試作の1号機または2号機である。この図ではカウリングの上部と下部に吸気口がある。 |
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一方、それに続く本文には「エンジン覆いからなだらかに後ろにつながる流線型の・・・」ともあって突出がないようにも読めるのだが、烈風の小さな3面図にさえ苦言する堀越氏がこの図の掲載を認めていたのはどうしてだろうか。しかも私は「カウリング上部に突出はない」のような発言を堀越氏がした、という記述を目にしたことがない。別の話題にするが、この本には試作機の色が書いてある。p.95末尾から「できあがった試作機には、全体に鈍く光る灰緑色の塗料がかけられ、エンジン覆いだけが黒く塗られていた」とある。 |