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陸上自衛隊 10式戦車 (タミヤ 1/35)

by 田口博通 Hiromcihi Taguchi
 


 タミヤから 待望の1/35 陸上自衛隊10式戦車が7月20日に発売されたので さっそくNEW KITレビューで紹介しよう。
 5月の静岡ホビーショーで発表以来、いつかいつかと待たれていたAFVファンも多かったと思う。 1/35の10式戦車は本命タミヤがいつか出すだろうとのことで、他メーカーはバッテシングを嫌い、スケールを48や72に変えて、1/35は開発を控えていた節がある。 
  さて、気になるその出来は というと、ご覧の通り、ストレートに組んだだけで、魅力的な完成が約束され、どこにも破綻がない。
砲塔の形状、車体のゴムスカートなども タミヤスタンダードで、素晴らしい。
砲塔後部バスケットのネットも接着可能な樹脂ネットが用意され、ネット付のバスケットが意外と簡単にできあがる。キャタピラもタミヤスタンダードとなった接着可能な樹脂製履帯で大変楽チンだ。
説明書とば別に 実車解説と、塗装パターンと実車写真の掲載されたカラー小冊子が用意され、非常に親切な構成になっている。



  ただ、組み易さに関しては、少し問題がある。
 シャーシー、車体、砲塔までは非常に組み易い。箱組を基本にしていながら、接着代も十分に確保され強度もあり、サイドスカートなども小気味良いようにピタッと合うのである。

 だが残念ながら、砲塔上部の砲手用サイト、車長用サイトでは息切れしたのか、どれも薄板箱組になっていて、タミヤらしくなく 実に組みにくい。
特に、車長用サイトは 薄板6面体構成で接着代がほとんどなく、熟練者でもきれいに組むのは相当苦労するだろう。
 筆者もこの3個の小箱を組むのにかなり時間を費やしてしまった割には接着剤でべとべとになってしまい綺麗に出来上がらなかった。初心者にはまずもて難しいのではなかろうか。最新の戦車であるので、プラモマニアでなくても一般の人も多数購入すると思うと残念だ。
 ここは、スライド金型で一体にするとか、弾薬箱のようにダミーの芯箱上に表面パネルを貼りつける方法など いくらでも経験もアイデアはあったはず。あのタミヤがいったいどうしたのだろうかと思える。戦車モデルでは世界最高のメーカー タミヤの名誉のためにも、ぜひ改善を望みたい部分だ。


1.キットは

 箱絵が大変魅力的で、よい資料となろう。
キットの部品点数は 戦車モデルとしては標準的で、モールドもシャープで タミヤスタンダードといえるもの。手すりなどは適度な一体化が図られ、細かい部品が多い中国製プラモに比べて大変組みやすい。 
 箱組となっている上部車体はサイドスカート部,前部、後部パネルの4枚構成となっている。また接着可能な樹脂製の履帯が付属している。(写真2)
 また、砲塔はスライド金型ではなく、上下左右パネルを4枚箱組する構成になっている。(写真3)

 転輪はポリキャップを使って廻るようになっている。砲塔後部バスケットのネットも接着可能なビニールネットが用意されている。(写真4)


(写真1) 箱絵 

(写真2)車体部品と樹脂製の履帯

(写真3)砲塔部品と 2体の乗員フィギュア

(写真4) 転輪とバスケットネットなど

2.製作の注意点と補足

1 サスペンションの組み立て

 車体下部のサスペンションは写真のような部品構成で、強度が必要な下部シャーシーにはスライド金型が使われていて一体箱になっている。
 左端のアイドラーホイルのサスペンションは2部品に分かれていて、溝に入れる位置で角度調節ができるので キャタピラの張り具合が調節できるようにも思える。
 
 説明書ではセンターの溝に取り付けるように指定されているが、実際のところ、キャタピラは少しゆるめなので、もう少し張る角度位置に接着した方がよいのかもしれない。 

(写真5) 左端の2個がアイドラーホイル用サスペンション部品 

(写真6) 完成した車体下部

ラジエターグリルは3点の部品に分かれるが、D18の裏側に溝があり、それがD1の突起ガイドにはまるように接着すると、2個のD18が左右対称に位置決めできる。

リヤパネルへのラジエターグリル取り付けには特に問題がないが、D9などの小部品は曲がるとみっともないので、平行になるようにガイドにしたがって取り付けよう。
(写真7) (写真8)


履帯は接着可能な樹脂製で、流し込み接着剤で接着できる。接着時には接着面をしっかりとクリップではさみ圧迫しておくとよい。


(写真9)接着面はクリップで圧着しよう

2 上部車体

 上部車体は (写真10)のように 上板と サイドスカートが一体になった側面部品とで構成され、箱組になっている。壊れやすい小部品は後回しにしてまず、強度の必要なこの部分を接着して箱にしてしまうのが良いだろう。接着代は充分にあるので、しっかりと強度がとれる。

 車体前部パネルが別になっていて、ヘッドライトを組んだ後で上板前部に接着するようになっているのが少し煩わしい。、戦車の顔である車体前部をはみ出た接着剤で汚さないように流し込み接着剤を使って慎重に接着しよう。
 ヘッドライトは シルバーで塗装しておき、別売りの車ヘッドライト用透明レンズを組み込んでみた。保護ネットをこの時にヘッドライト部品に貼りつけるように説明書では指定されているが、試してみたところ、全体完成後にさしこみ装着可能だった。塗装のしやすさも考えて、保護ネットは最後に装着しよう。
(写真10) (写真11)

3 砲塔

 砲塔は複雑な立体形状をしているため、 上部と下部で砲身基部をはさみこみ、2枚のサイドアーマーパネルと、リヤパネルを接着する箱組構成になっている。 サイドアーマーパネルもピタッと合うので、流し込み接着剤を使えば、ストレスなく組むこどができる。
(写真12)
(写真13)

4 砲塔上部各サイト

 さて、このキットの最大の鬼門 砲塔上部の3個のサイトであるが、全て箱組になっている。
薄板で接着代も少なく、大変組みにくい。せっかく接着した辺が別パネルの接着時にまたすぐはがれるので箱を歪まずに組むだけでも苦労の連続だった。
 筆者は30分くらいかけて周りを練り消しゴムで支えながら(手が1本しかないため)、苦労して車長用サイトを組んだものの、乾燥後はみ出た接着剤をペーパーがけしようとして指ではさんだら またバラバラ事件になり、努力も元の木阿弥に。
 結局、鉄道模型のペーパー車体工作と同様に 2mm角プラ棒を内部の各辺の長さに合わせて数個切り、糊代と補強代わりにして、仕込み 完成した。
 車長用サイト基部、砲手用サイトも箱組なので、同様に プラ棒を各辺の糊代と補強に内部に追加して組むのが良いという結論に達した。これが今回のニューキットレビューで得たこのキットの攻略法。 「急がば廻れ」ということだ。
 筆者も これまでAFVは50点以上 完成しているので、初心者というわけでもないが、この3点をくみ上げるのに結局 計2日。正直疲れた。

 タミヤらしからぬこの部分は 経験の少ない初心者にはまず完成するのが難しいのではないだろうか。
 ここは、スライド金型で一体にするとか、弾薬箱のようにダミーの芯箱上に表面パネルを貼りつける方法など タミヤに、ぜひ改善を望みたい部分だ。

(写真14)車長用サイト
内部にプラ棒の補強を仕込んである。

(写真15)車長用サイト基部と砲手用サイト
同様に内部にプラ棒の補強を仕込んである。

5 砲塔バスケットの組み立て



 砲塔のバスケットは樹脂ネットもせっかく部品で用意されていることから、ぜひネットを使ったバスケット作りに挑戦してみよう。
ネットを説明書(図25)の大きさに切りだすのだが、まず、透明両面接着テープを用意し、NETを45度の方向に説明書に重ね接着しよう。(写真16)(写真17)
 
(写真16)

(写真17)


で、この型紙ごと、よく切れるはさみで正確に切る。
写真のように、ピタリと大きさが合うはずだ。

(写真18) 


ネットのバスケット部品への接着には ピンセットでネットの位置を保持しながら、流し込み接着剤を点付して接着する。
(写真19) 


各部品ごとにネットを貼りつけると 写真のようになる。
(写真20) 

ネットのついたバスケット部品を慎重に組み立てよう。
(写真21)


(写真22)完成したメインバスケット。根気よくやれば、3時間くらいで できあがるはずだ。

(写真23)完成したサブバスケット。


6 塗装

 塗装は付属の塗装説明図に5面パターン図があり、大変親切だ。タミヤカラーのTS-90(XF-72) 茶色 と TS-91(XF-73) が 指定されている。
筆者は Mrカラーを常用している関係で 自衛隊特色セットをエアブラシした。2色の塗り分けパターンははっきりとしているので、エアブラシの先を絞って境界をつけてやればいいだろう。もちろん、先にこげ茶(マホガニー)を全体に下塗りしておく。
ゴムスカート部はテープでマスキングしてタイヤブラックNo137を吹き付けた。転輪のタイヤゴム部も同様にタイヤブラックNo137を使った。
履帯の吹き付け塗装には 丸いジャムビンをいつも使っているが、具合がよい。


ゴムスカート部はテープでマスキングしてタイヤブラックNo137を吹き付けた。


履帯は 支えの丸いジャムビンを回しながら吹き付け塗装した


塗装完成後、上下車体を合わせるが、
履帯が少し ゆるいので、上部車体をかぶせる際に、履帯と車体の間にティッシュペーパーをはさんで押さえるとよいだろう。


完成へ

デカールは上質なもので、3種用意されている。今回は箱絵のマーキングとした。最後に小物部品を注意深く取り付けよう。ヘッドライトのネットは最終段階で、大きさに切ったネットをはめ込めばOKだ。リヤパネルの牽引ロープはキットのものも秀逸なのでそのまま使ったが、金属ロープで自作してもいいだろう。兵隊人形2体はいいスタイルなので、念入りに迷彩塗装して搭乗させるのも 面白いだろう。  いつものタミヤと違い、組み立てに少し苦労が必要だったのが本当に惜しい。
7月23日に購入してから一週間でここまで完成した。

各部のモールドもシャープで、これぞ 日本の戦車プラモデルという完成の姿になった。皆様にもぜひ一作をお奨めしたい。







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Vol 58 2013 August.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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