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   スピットファイヤーの休息

by 愛知県在住 作者 清水 栄治



■作品について
この作品は今から13年前(2000年)にハセガワのJMCに初めて出典した作品です。その当時では1/72や1/48のサイズが主流でしたが、大先輩方と同じ肩を並べても勝ち目がないことは判っていましたのであえて1/32にしてみました。単なる飛行機の展示ではなく情景の中の飛行機をイメージでして製作しました。1/32の飛行機と言えばレベルが断トツ種類が多いのですが高価であり又田舎では入手が困難であったことで飛行機のハセガワに決めました。 自宅には1/32のシリーズが多少ストックしてありその中で大戦機で有名な格好の良いスピットファイヤーに決めました。当然情景をどのようにしようか試行錯誤しました。専門誌を見ているとヨーロッパでは草原の滑走路がよく写されていました又そこでの休息や整備状況など戦闘状態とは違ったやわらかな雰囲気が映し出されていました。これだなと思い休息と整備の双方を演出することに決めました。



■飛行機キットについて
ハセガワ製1/32シリーズの再版物でした。キットのプロポーションは程好くとらえてハセガワらしい表現でした。機体表面はリベット、パネルラインは全て凸仕上げ。エンジンらしきものが再現されパネルが脱着出来る以外ギミック類は一切なく、1/48スケールをそのまま拡大して部品数を抑えて作りやすさに重点を置いたキットでした。先回も述べましたがデカールの白色の変色がマイナス点になりますが逆に経年劣化など考慮をすれば気にならないことで、汚れを意識しようと思いました。この当時私のモットーはエンジンは出来る限り見せる、補助翼は可動にしたいとの思いがありました。それには詳細な資料が必要ですが「大日本絵画のアエロ・ディテール」(その当時では高価)を近隣の本屋で注文購入しました。 早速資料をあさり再現可能な個所を決めました。エンジンはフルスクラッチ、補助翼は切り離し可動状態に加工、機体表面の凸リベットはそのままでパネルラインは筋ぼりに変更、コクピット足回りなど追加工作する内容に決めました。エンジンの再現には困らない程度の参考になる写真が載っておりました。しかし写真には寸法が載っておらず斜めのアングルばかりで決め手がなく現物のキット寸法に収まることに重点を置き各数値を決めました。この寸法決めには三角スケールと電卓、ノギスを良く使い漫画的な設計図を作りました。



塗装はメーカー指定通りの迷彩模様で全てラッカー系のエアブラシで型抜きをせずに塗ってあります。乾燥後キットのデカールを貼りつけました。丁度このころ水生のアクリル塗料が主流で又艶消しクリアーにラインナップが増え一度使ってみようと思い(デカールを傷めないとの思いもあり)全艶消しクリアーをエアブラシで吹きつけました。しかしこれが裏目で乾燥後に極小の白い点(艶消し材の固まりのような)が機体全体に現れました。 これは予想外で何かこれを隠すてだてはないかと試行錯誤、全体に点在していることもあり錆に見たてようと思い、エナメル系の塗料を筆で一つずつ軽く塗りつぶして行きました。先ほどのデカールの劣化と丁度相乗効果が出た感がありました。ミスをミスとしなかったことが作成意欲につながっていきました。



■パイロット及び車両について
パイロットはファインモールド社製の1/32サイズでストレートに作ってあります。このパイロットのシリーズはここの会社しか販売されてなく大変重宝する存在です。塗装はラッカー系で塗っております。 車両はタミヤ製の1/35イギリスのコマンドカーを使いました。キットをストレートに組みエナメル系の塗料でドライブラシを効かせました。




■その他情景について
整備クルーはICM社製の1/35を使いストレートに組み立ております。これも整備風景には重宝するキットでした。草原の滑走路に敷いてある鉄板(パンチングメタル?)は記録写真に写っているものをまねして作りました。材質は厚紙を短冊に切りだし洋裁用のハトメノミでコツコツと穴抜きを施しました。これが意外と大変な作業でした。塗装は下地にラッカー系の銀色を塗りその上にエナメルの錆色を塗りそれらしく表現しました。その他テーブル、椅子、木箱なども写真を基にプラ版とプラ棒で作ってあります。 木質を出すためにプラ材の表面を粗めのサンドペーパーで強く引き掻きその後表面を軽く2000番のペーパーで平滑に整えました。これで多少の木目が演出出来たかと思います。塗装も木目を出すためにトーンを変えてエナメル系でドライブラシを効かせて塗っております。草原は鉄道模型用のシート(下地は紙製)をカットして滑走路を囲むように木工ボンドで貼りつけ葉っぱをエナメル塗料のアースカラーの筆塗りで仕上げています。無線機はドラゴン製、測量機器はイタレリ製(1/35)を使いエナメル系の塗料でそれらしく塗ってあります。



■全体をとおして
製作には200時間くらいかかったと思います。この情景を作るにあたって参考になる写真が多くあったおかげで順調に製作が進みました。結局、歴史の事実をまねして作りましたが作品としてはコンパクトにまとまった感がありました。この作品はJMCに初めて応募していきなり賞をもらった意味深い作品でした。 その時は喜び勇んで家族を連れて大阪まで展示作品を見に行きました。そこで来場者の傍らで私の作品について機体表面の劣化と錆について好評化のコメント聴いたときは感無量の感がありました。塗装の失敗を覆い隠すように新たな価値を生むように行ったことが製作意欲に結びつくものだな思いました。この作品をきっかけにJMC応募が始まることになりました。



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Vol 58 2013 August.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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