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T-38A Talon (Wolfpack 1/48)

by 田口 博通 Hiromichi Taguchi




 T-38A タロンの1/48新キットが 韓国の新鋭メーカー Wolfcackから登場した。フジミの1/50 T-38Aが発売されたのが 1968年のことだから、実に45年ぶりの新金型製品登場だ。

 さっそく 作ってみたので 紹介しよう。
 フジミのT-38も スタイルは悪くはなかったが、コクピットががらんどうで不満があった。フジミをものにするためには前後部座席間の計器パネルカバーを自作し、シートの形状も違うのでヘッドレストを自作する必要があったのだ。
 今回新登場したWolfpackのキットは、さすが最新の設計だけあって、シートや計器パネルなど コクピット内部の他、脚回りも精密なものになっている。


T-38A タロン 練習機について

 T-38Aタロンは ノースロップ社が開発した軽戦闘機F-5フリーダムファイター系列のアメリカ空軍の超音速練習機である。 F-5よりも 3か月以上早い1959年4月に初飛行している。

 F-5Aの複座型F-5BはT-38とは全く別機で、T-38の主翼前縁は直線テーパー翼となっている。
T-38はマッハ1.3まで出せる双発超音速高等練習機として 1961年に空軍に配備されている。1187機生産され、操縦性、コストなどの優秀性は他の追従を全く許さず、50年経った現在でも まだ 使用されているのは 驚くほかない。
 T-38の後方教官席は前席よりも30cm高く、複操縦システムがある。前後席間には透明ガラスの仕切りがあり、前席の練習生が先に脱出した後でも、教官が機を操縦できるようになっている。
 また、NASAでも使用されている。
 2001年より空軍は既存のT-38Aを改良したT-38Cの導入を進めている。アビオニクスの改良によりグラスコックピット化され、まだまだ退役しそうにない。

キットについて

 キットの胴体は左右と主翼下面の分割となっている。風防は開閉選択式で、キットには風防塗装用マスキングシートも付属していて親切だ。エアブレーキも開閉が選択できる。
 デカールは印刷も良好で 箱絵の空軍の訓練部隊の他、アグレッサー塗装機用も付属している。
 説明書はカラー印刷の8ページの小冊子となっていて随所に実機写真の入った親切なもので 最近の韓国キットの進歩はあなどれない。
 
 パネルラインは美しいスジ彫りで,要所にリベットも彫刻されている。胴体肉厚は厚めで、組んだ感触は かっちりとしていて部品の合いがすごく良い。垂直尾翼も別部品で薄くできている。
 主翼は後縁を薄くするためフラップ・エルロンが一体成形になっているが、それでも後縁を少し薄く削るとよいだろう。テイストはフジミに近い。フジミのキットを現代的に再アレンジし直して、コクピットと脚を精密にしたような感じで、フジミファンにも受け入れられるだろう。さしずめ、韓国のフジミ到来といった所だろうか。


 主翼部品
  胴体部品
 

デカールと透明部品、キャノピーのマスクシート

カラー印刷小冊子の説明書 要点の実機写真もある。

製作

コクピット
 シートレールや計器板カバーの形状も秀逸。艶消しグレーで塗り、デカールの計器を貼れば、簡単に完成するようになっている。左サイドのスロットルレバーは白で塗っておいた。
 
 射出シートも基本形状は良好で、シートベルトを板鉛で、酸素ホースを鉄道模型用の布巻模様シンチュウ線で追加してみた。後は丁寧に塗り分けるだけだ。





 コクピットと前脚庫を組み込んで 胴体左右を接着するが、念のため 粘土の錘をコクピット後ろに組み込んでおいた。胴体後部は 下面部品と幅をきっちりと合わせるため、プラ棒の補強を3か所追加しておくといいだろう。
 そこに下面部品、垂直尾翼を接着すると、もう形になる。翼の後縁はピシッと少し薄く削るとシャープさが増すというもの。エアインテークも胴体との合いはよいが、上面を若干パテですりあわせた。
 4度の下半角の水平尾翼は主翼を基準に注意して接着しよう。説明書の第12図に指定されている。





塗装とデカール貼り
 キットのカラー塗装図にはMrカラーのNoで塗装が指定されているのは、わかりやすい。
 一度サフェーサー替わりにNo97つやありグレーで塗装しておいて 全面をNo1白で、機首の防眩塗装をNo33つやけし黒で吹き付け塗装した。
 全面のつやあり白は 筆塗ではムラになりやすく、さすがに難しいので吹き付けが簡単だ。
 
 デカールは印刷もきれいな良質なもので、細かいコーションマークまで用意されている。 
デカールが落ち着いてから、保護のためにクリアを吹いておくとよい。
動翼へのスミイレはガンダム用のふき取りスミイレペンのグレー色を用いてみた。 





 脚部品は部品点数が多く、支柱など小さい部品もあるので、注意深く組んで行けば問題ない。
脚カバーはいも付なので、接着しにくい。スコッチの多用途強力接着剤を使用した。
 キャノピーは開閉選択式で2種類の支柱部品が用意されている。フジミの旧キットはキャノピーが前後一体でわざわざノコで切り離した記憶がある。Wulfpackのキットはせっかく開状態が用意されているので躊躇なく開状態を選んだ。キャノピーを開いたスタイルがもっとも練習機らしいからだ。
 後席キャノピーの取り付けは楽だが、前側キャノピーの取り付けは接着面積も少ないので、汚さないように注意が必要で、スコッチの多用途強力接着剤を使用した。前後キャノピーが平行になるように取り付けよう。


完成

 1週間のストレート作りで 航空機モデルとしての基本的な追加工作さえしておけば、どこから見ても魅力的なスタイルのT-38タロンが完成した。実機写真と見比べたが 良く再現しているという感じだ。F-5実機が韓国にあるのも実機取材ができる強みなのだろう。
 翼後縁も薄く削っておいたので、シャープな感じになった。ちなみに機首のピトー管は0.8径シンチュウパイプと0.3mm径洋白線で自作している。
 
 主脚ブレーキ線を追加して、コクピット内部の塗装にもう少し陰影をつけると、更に精密さが増したかもしれない。 
 実機が小型のため、1/48モデルでも全長は30cm程度であり、1/72のF-105サンダーチーフ並みの大きさとなるが、中身が充実しており、この出来で、最近の国産1/72航空機プラモデルと同じお値段なのだから、コストパフォーマンスは良い。



 最近の韓国メーカーの躍進は著しいが、新製品一つ一つをこだわりを持って設計して、リリースしているところが評価できる。
  
スマホを韓国メーカーが制覇したように、今後の航空機プラモデルの勢力分野の地図が書き変わる可能性もある。今後の韓国プラモデルの動向には目を離せない。




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Vol 60 2013 October.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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