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CARRIER AIR WING FIVE

CVW-5

Part25                                  Photo. U.S. NAVY

by Kiyoshi Iwama

Tip of the Sword” 、CVW-5のハンガーに描かれた彼らのスローガンである。空母を守る剣の先は、彼ら自身であり、「剣の先の如く鋭くあれ」と戒めている。またそれは遠く母国を離れ、太平洋の西岸に置かれた剣の先をも意味するように思われる。海外を拠点とする米海軍唯一の空母航空団としてCVW-5が厚木基地に本拠地を置いて、35年が過ぎた。その間、飛行隊の編成や使用する航空機も大きく変わり、その年月の長さを感じさせる。もう少しで在日40年を迎えるが、そのとき彼らは、その記念日を岩国基地で迎える。
我々飛行機ファンを大いに楽しませてくれたCVW-5であるが、厚木基地での活動も残り少なくなった。これを機会に、CVW-5のこれまでを振り返ってみたい。

これまでのあらすじ

資料記事
第24話 “SAYONARA” Kitty Hawk
第23話 スーパー・ホーネットの時代へ
第22話 VF-154 “Black Knights”、最後の戦い
第21話 テロとの戦い、始まる
第20話 インディペンデンスからキティー・ホークへ
第19話 イラクを睨む
第18話 ミッドウェイからインディペンデンスへ
第17話 湾岸戦争とミッドウェイの退役
第16話 ホーネット時代の到来
第15話 Midway Magicとファントム時代の終焉
第14話 再び平和に
第13話(Rev.B) 日本へ 
第12話(Rev.C) ヴェトナム戦争(後編)
第11話(Rev.C) ヴェトナム戦争(中編-3)
第10話(Rev.C) ヴェトナム戦争(中編-2)
第9話 ヴェトナム戦争(中編-1)
第8話 ヴェトナム戦争(前編)
第7話 東西冷戦、朝鮮戦争後
第6話 朝鮮戦争(後編)
第5話 朝鮮戦争(中編)
第4話 朝鮮戦争(前編)
第3話 朝鮮戦争勃発
第2話 ジェット時代の夜明け
第1話 誕生

第25話 原子力空母時代の到来

 原子力空母ジョージ・ワシントンとの交代のため、横須賀を出港、東京湾に出た空母キティー・ホークと随伴艦は、針路をグアムへととった。途中厚木を飛び立ったCVW-5の艦載機とのCQを進めながら太平洋を進み、2008年5月30日には全機がキティー・ホークに収納された。このときのCVW-5の編成を表25-1に示す。


表25-1 2008年5月28日~8月7日の空母キティー・ホーク帰国時のCVW-5編成


 


 グアムのアプラ港には6月10日に入港し、4日間の停泊後、Hawk/Fiveチームは、ハワイのNSパール・ハーバーを目指し6月14日にアプラ港を出港する。訓練を行いながら東進し、NSパール・ハーバーに到着したのは7月1日であった。乗員たちはここで約1週間の休暇を楽しみ、7月8日、RIMPAC 2008へ参加のため真珠湾を出港する。RIMPACは米太平洋艦隊が主催する多国間の合同統合演習で、環太平洋の国々を中心に陸・海・空の部隊が集結して1年おきに実施されている。2008年の演習には米国をはじめ、オーストラリア、カナダ、チリ、日本、オランダ、ペルー、韓国、シンガポール、そして英国が参加し、6月29日から7月31日までの間、実施された。1ヶ月を越える演習には水上艦艇35隻、潜水艦6隻、航空機150機以上が投入され、参加将兵も20,000名に達した。




 CVW-5を載せパール・ハーバーを出港しRIMPACに向かう、空母キティー・ホーク(2008年7月8日)
出典: US Navy Official Photo Archive (080708-N-1722M-047)



 演習は、対潜水艦戦、対水上戦、対空戦、揚陸戦と各戦術分野に分け、各国の関係部隊が参加して実施された。また演習中に実施された、ハワイ近海の太平洋ミサイル試験場における艦船からの艦対空ミサイルの射撃試験や、米海軍の退役艦を標的に使用した対艦攻撃模擬演習は、実弾を使用したものとなった。

一方航空部隊については、空母キティー・ホークに搭載されたCVW-5とその他艦船に搭載された対潜ヘリコプターを除くと、海兵隊のF/A-18DやカナダのCF-18Aは米空軍のヒッカム空軍基地に、また米海軍、カナダ国防軍、海上自衛隊、オーストラリア海軍、韓国海軍のP-3などはMCBHカネオヘ・ベイに展開し、演習に参加した。CVW-5の飛行隊も、対艦攻撃、揚陸部隊への近接支援、警戒管制、対潜哨戒などのミッションに連日、出撃を繰り返した。またこの演習の目的でもある各国部隊の相互運用性向上のため、艦載ヘリコプターのクロスデッキ訓練なども行われ、空母キティー・ホーク艦上にも他国のヘリコプターが離発艦する姿が見られた。RIMPACは海軍が中心の演習ではあるが、米空軍からも地元ハワイANGのF-15C/DやKC-135R、またグアムからもB-52HやE-3などが参加している。さらに表には出ないものの演習で使用されるデータ通信や音声通信に欠かせない衛星通信を、ヒッカム空軍基地の613AOC(Air and Space Operations Center)が支援した。

RIMPAC 08終了後の8月1日の朝、CVW-5を載せた空母キティー・ホークはNSパール・ハーバーを出港、西海岸のサンディエゴへと針路をとった。CVW-5にとっては空母航空団として米国本土の土を踏むのは、実に35年ぶりのことである。空母キティー・ホークのサンディエゴ港への入港を翌日に控えた8月6日、CVW-5飛行隊の空母キティー・ホークからの最後のフライオフが開始され、HS-14とHSL-51のヘリコプターを除く機体が、次々とキティー・ホークを発艦していった。




 NAS Whidbey Islandに向け、空母キティー・ホークから最後の発艦をするVAQ-136のEA-6B
出典 US Navy Official Photo Archive (080806-N-7883G-017)



 そしてそのしんがりを務めたのが、VFA-102のF/A-18F(165880/NF104)であった。キティー・ホークをフライオフした機体は、機体更新のためNASウィッドビー・アイランドに向かったVAQ-136を除き、NSサンディエゴに隣接するNASノース・アイランドに着陸した。50機ほどの機体が舞い降りたノース・アイランドは混雑の極みになったと思われるが、本国では珍しいNFレターの機体に目を輝かせたネイビー・フリークもいたことであろう。

余談になるが、本国の空母航空団の場合には空母からのフライオフ後は、それぞれマザー航空団のホームベースへと帰還する。例えば太平洋艦隊所属のF/A-18C/E/Fを装備する戦闘攻撃飛行隊はCOMSTRKFITWINGPACの所在するカリフォルニア州NAS Lemooreへ、EA-6Bを装備する電子攻撃飛行隊はCOMVAQWINGPACの所在するワシントン州のNAS Whidbey Islandへ、またE-2Cを装備する空母空中早期警戒飛行隊はCOMAEWWINGPACの所在するカリフォルニア州のNAS Point Muguへ、そしてSH-60F/HH-60Hを装備する対潜ヘリコプター隊はCOMHELSEACOMBATWINGPACの所在するNAS North Islandへと帰還するといった具合である。しかし、今回はやはり特殊なケースになるようだ。CVW-5の飛行隊にとっては、独り立ちした息子が久しぶりに郷里に帰った時のような気分を味わったのかもしれない。

さてHS-14とHSL-51以外の飛行隊を発艦させた空母キティー・ホークは現地時間8月7日の13時に10年ぶりにサンディエゴ港に姿を現した。NASノース・アイランド側の埠頭には既に修理を終え、交代を待つ原子力空母ジョージ・ワシントンの姿があった。



 10年ぶりにNSサンディエゴに姿を現した空母キティー・ホーク。登舷礼で甲板に並ぶ乗員の姿が見える。
出典: US Navy Official Photo Archive (080807-N-7029R-021)



 サンディエゴの埠頭に横付けされたキティー・ホークの飛行甲板では、第5空母群司令官(CCG-5)のリチャード B. レン少将、空母キティー・ホーク艦長 トッド・ゼッキン大佐、空母ジョージ・ワシントンの新艦長 J.R. ヘイリー大佐(R.J. Haley)、そしてCVW-5の司令官 マイケル・ホワイト大佐が出席しての記者会見が行われ、海外に母港を持つ米海軍唯一の空母が、空母キティー・ホークから空母ジョージ・ワシントンにバトンタッチされたことが紹介された。

日本での任務を終えた空母キティー・ホークは、この後9月にワシントン州ブレマートン(Bremerton)にその身を移され、翌2009年の1月31日に48年の栄えある歴史に幕を下ろした。公式的には同年5月12日が退役日として記録されている。

 空母キティー・ホークがサンディエゴに到着した8月7日から空母ジョージ・ワシントンがサンディエゴ出発する前日の8月20日までの間、両艦での交代作業が進められた。その一方で、NASノース・アイランドに集まったCVW-5の飛行隊はで訓練飛行に励む傍ら、機体に記入されている空母名の書き換え作業を進め、出発の日までには全機に”USS George Washington”の文字が入れられた。また母基地のNASノース・アイランドに戻ったVRC-30 Det.5は、2機のC-2Aの機体交換を行った。

 そして8月21日朝、5500名の乗員を乗せ、CVN-73 空母ジョージ・ワシントンは見送る人たちへ登舷礼で応えながら、NAS ノース・アイランドを離れ、横須賀へと出発する。このときのCVW-5の編成を表25-2に示す。



 日本に向かうため、サンディエゴの埠頭を離れ、空母キティー・ホークの前を通り過ぎる空母ジョージ・ワシントン
出典: US Navy Official Photo Archive (080821-N-1038R-036)




表25-2 2008年8月21日~9月25日のCVN-73の横須賀赴任時のCVW-5編成



 カリフォルニアの沖合に出た頃には、ノース・アイランドを飛び立ったCVW-5の艦載機が飛来してきた。艦載機たちの最初の作業は、空母ジョージ・ワシントンとの適合性試験(CQ)で、CQは太平洋上の航行期間を通して行われた。GW/Fiveチームは20日をかけて太平洋を横断し、その後西太平洋、日本海にも入り、横須賀入港直前の9月24日には、伊豆諸島沖合でCVW-5機と横須賀の海上自衛隊第1護衛艦隊所属艦とが通信・戦術訓練を行う場面もあった。そして翌9月25日、横須賀にその巨大な姿を現した。横須賀に入港するジョージ・ワシントンの中央甲板には、整然と並べられたCVW-5の航空機と登舷礼で甲板の周囲に整列する乗員に囲まれるように“はじめまして”の人文字が見えた。 



横須賀に入港したCVN-73 空母ジョージ・ワシントン。甲板上に“はじめまして”の人文字が見える。
出典: US Navy Official Photo Archive (080925-N-9565D-001)


 通常ならば、入港前にCVW-5の艦載機は厚木基地へとフライインするのであるが、今回は直ぐに韓国への訪問が控えており、早朝に厚木に向かった一部の機体を除き、大半の機体を載せた状態での横須賀入港となった。こういうケースは大変珍しいと言えよう。ジョージ・ワシントンが接岸した後、ウィンター海軍長官等も出席し、ジョージ・ワシントンの日本配備を記念する式典が行われ、新任のJ.R.ヘイリー艦長が着任の挨拶を行った。

10月1日の朝、CVW-5を載せた空母ジョージ・ワシントンと随伴艦が横須賀を離れ、韓国へと向かった。韓国では韓国軍創設60周年を記念して、13か国の海軍艦艇50隻が参加しての国際観艦式”International Fleet Review 2008”が開催されており、GW/Fiveチームもそれに参加し、10月7日に釜山港に入港した。釜山では3日間停泊し、10月10日に釜山を出港、日本海から東シナ海、西太平洋と訓練を行いながらグアムへと向かう。この韓国近海から東シナ海へと航行するジョージ・ワシントン空母攻撃群(CSG)を2隻の中国海軍潜水艦が追跡しようとしていたことが、後に明らかにされた。この潜水艦を探知・追尾したのは、海上自衛隊のP-3C哨戒機で、中国海軍の行動を見越しての作戦であった。

グアムに向かったGW/Fiveチームは、10月31日にアプラ港に入港した。そして11月4日にアプラ港を出港し、恒例となった海上自衛隊との秋の共同演習”ANNUALEX 20G”に参加するため、演習区域となる沖縄周辺海域へと向かった。演習は11月13日から19日にかけて実施され、米海軍からは空母ジョージ・ワシントンと第15駆逐艦隊、及びCVW-5、米空軍からはグアムのアンダーセン空軍基地に展開中のB-52を擁する第23緊急展開爆撃飛行隊(23rd EBS)が、そして海上自衛隊からは横須賀の第1護衛隊群と佐世保の第2護衛隊群の護衛艦、厚木基地の第4航空群のP-3Cが参加した。20回目を迎えるANNALEXであるが、空母ジョージ・ワシントンにとっては初の経験となり、演習を通じ日本防衛のための両軍の共同運用強化が図られた。またこの演習中の11月18日、沖縄周辺の航空自衛隊南西航空混成団管轄の沖縄島東方区域にて、CVW-5所属のF/A-18と那覇基地に展開した航空自衛隊第6航空団のF-15Jと第3航空団のF-2Aによる防空戦闘訓練が実施されている。

ANNUALEX 20Gを終えたGW/Fiveチームは横須賀への帰路に就く。太平洋上を横須賀に向かう空母ジョージ・ワシントンからの艦載機のフライオフが始まったのは11月19日で、CVW-5の厚木基地への帰還は約半年ぶりとなる。ジョージ・ワシントンと随伴艦は11月21日に横須賀へ帰港した。

CVW-5のフライインとともにローカルフライトが始まり、基地周辺の騒音問題があるものの、厚木基地には活気が戻ってきた。年末年始と厚木でのフライトが続く。海の向こうの米国ワシントン州ブレマートン軍港のピュージェット・サウンド海軍造船所では、1月31日、空母キティー・ホークの退役式が行われた。キティー・ホークの退役により米海軍から通常型空母が完全に姿を消すことになる。

2月に入ると、CVW-5のVFA-102は嘉手納に展開して米空軍機とのDACTに励んだ。丁度この時27EFSのF-22Aが嘉手納に展開していたため、F-22AとのDACTも実現した。また3月に入るとVFA-27のF/A-18E 8機とVFA-195のF/A-18C 6機が、タイへ展開した。これは3月9日から20日の間タイのコラート空軍基地とウドン空軍基地で開催された、タイ、シンガポール、そして米国との多国間合同演習 “コープ・タイガー 2009”へ参加するためであった。米軍からは空軍、海軍、海兵隊の航空機55機と1,200名の要員が参加した。演習は各参加チーム混合の2グループで、空対空から近接航空支援まで、各種のタクティクスの戦闘訓練が実施されるとともに、エアー・クルー間の交流が図られた。



 タイのコラート空軍基地に展開し、Cope Tiger 2009に参加したVFA-27のF/A-18E(2009年3月10日)
出典: USAF Official Photo Archive (90310-F-0270Y-0229)



 2009年3月28日、曇り空の中、厚木基地では「日米親善桜祭り」が開催された。少ないながら航空機の展示もあることから、入場者も年々増える傾向にあった。この年も開放された飛行場エリアに、VAQ-136以外の飛行隊は派手な塗装のCAG機を展示し、入場者の目を楽しませた。また展示エリアの隣に所在する海上自衛隊のエプロンには、スマートな塗装のUS-2試作1号機が駐機されていた。海上自衛隊の粋な計らいである。





 見学者で賑わうCVW-5のエプロンと、海上自衛隊エプロンに駐機されたUS-2試作2号機(2009年3月28日)
写真: 筆者撮影



 そして6月に入ると夏のディプロイメントへの出発である。定期修理後の海上公試、そしてCVW-5との空母適合性試験も終わり、準備の整った空母ジョージ・ワシントンが6月10日、西太平洋クルーズに向け随伴艦と共に横須賀を出港した。このときのCVW-5の編成を表25-3に示す。


表25-3 2009年6月10日~9月3日の西太平洋展開時のCVW-5編成



 GW空母攻撃群(GWCSG)はこのクルーズでは1つの大きな演習に参加するとともに、いくつかの都市を親善訪問することになっていた。最初に訪問したのがホーストラリア西岸の都市パースで、フリーマントル港に7月2日から5日まで停泊した。そして翌日から始まった米豪合同演習“タリスマン-セイバー 2009”に参加する。米軍とオーストラリア国防軍との連携強化や相互運用性の強化を図るため、2005年より1年おきに行われてきたこの演習も今回で3回目となったが、空母ジョージ・ワシントンは初の参加となった。航空部隊ではCVW-5の他、空軍や海兵隊の部隊も参加したが、大半は在日米軍からの参加であった。演習は7月26日まで、米側は陸、海、空、海兵隊か約20,000名、オーストラリアからは陸、海、空軍から約10,000名が参加して各種シナリオの演習が繰り広げられた。一方で、演習に使用される地域の野生動植物への影響を問題視する環境保護団体が、反対運動を繰り広げた。

この演習が終了して2日後の2009年7月28日、海軍の将来戦闘機となる空母運用型のF-35C “Lightning II”の開発実証用初号機がロールアウトし、その式典が、開発元のロッキード・マーチン社フォート・ワース工場で開催された。いずれ、CVW-5にも配備されることになる新鋭機であるが、開発スケジュールの遅れと開発コストの上昇が問題視され始めていた。

さて、“タリスマン-セイバー 2009”が終了すると、GWC SGはシンガポールへと向かう。シンガポールではチャンギ軍港に停泊し、親善交流を図った後、8月6日に出港、次の訪問先となるフィリピンのマニラへと向かった。マニラへは8月11日に到着し、こちらでも4日間停泊して親善艦船公開を行う。マニラの次に寄港したのはインドネシアのマナドであった。ここではインドネシア独立64周年を祝う、国際観艦式に参加した。インドネシアを最後に帰途に就くが、8月30日、西太平洋上でCVW-11を載せ、ペルシャ湾に向かうニミッツ空母攻撃群との合同訓練を行う。訓練終了後GW CSGは、西太平洋を北上して横須賀へと針路をとり、9月3日に約3カ月ぶりに、横須賀基地に帰港した。一方CVW-5の厚木フライインは、ジョージ・ワシントン横須賀入港の2日前、9月1日から始まり、2日がピークとなった。2日にフライインしてきたVF-27のCAG機、F/A-18E(165860/NF200)の機首にはシャークマウスと目が描かれていた。



 小雨模様の中、厚木のR/W19に着陸するシャークマウスを付けたVFA-27のF/A-18E(165860/NF200)
写真: 筆者撮影(2009年9月9日)



 秋のディプロイメントまでの時間は短く、空母ジョージ・ワシントンが横須賀を出港したのは10月6日のことであった。CVW-5も1ヶ月を厚木で過ごしただけで再び艦上生活に戻っていったが、今回のディプロイメントを最後に、CVW-5を離れる飛行隊があった。空母ミッドウェイの近代化改修とともに、CVW-5が機材をF/A-18Aに更新した1986年以来厚木をホームベースとしてきたVFA-192 “World Famous Golden Dragons”である。12月には後任のVFA-115と交代し、NAS Lemooreに戻り、CVW-9に配属されることが決まっていた。

さて今回のディプロイメントは、沖縄近海での定例の日米合同演習”ANNUALEX 21G”がメイン・イベントであったが、GW/Fiveチームはまず韓国に向かい、10月10日から16日まで、黄海に於いて韓国海軍との合同演習を実施した。その後東シナ海へと進み、10月29日には香港に寄港、米中親善の一役を担った。香港には11月3日まで停泊し、GW/Fiveチームは”ANNUALEX 21G”へ参加のため、沖縄近海へと向かう。”ANNUALEX 21G”は11月10日から始まったが、海上自衛隊はこの演習に、この年の3月に就役させたばかりの新鋭ヘリコプター搭載護衛艦DDH-181 “ひゅうが”を投入し、演習への意気込みを感じさせた。そして海上の演習では、日米艦艇による対潜水艦戦闘、対空戦闘、対水上戦闘の演習がいくつかのシナリオに基づき実施された。一方、航空戦闘演習ではCVW-5の戦闘機部隊と航空自衛隊の戦闘機部隊とが連携し、沖縄と沖大東島の射爆撃訓練レンジに於いて対地攻撃演習を実行した。これらの演習は7日間にわたり繰り広げられ、11月17日にラップアップされる。



ANNUALEX 21Gで、海上自衛隊の新鋭艦DDH-181”ひゅうが”と並行して飛行するHS-14のSH-60の編隊
出典: US Navy Official Photo Archive (091117-N-9211M-18)


 ”ANNUALEX 21G終了後、GW CSGは横須賀に向けて太平洋を北上した。本土近くの演習であったこともあり、CVW-5の航空機は演習終了翌日の11月18日から厚木へのフライインを開始している。一方、ジョージ・ワシントンと随伴艦は、少し遅れて11月23日に母港横須賀に帰港した。

12月に入ると厚木が騒がしくなってきた。VFA-102の機体にマーキングを消した機体が増えだしたのである。後に分かったことであるが、VFA-102のF/A-18FをAESAレーダのAN/APG-79を装備するBlock 2の機体と交換するため、全機米国に戻るための処置であった。そうこうするうちにVFA-192の後任となるVFA-115のF/A-18E第1陣 6機がトランスパックを終え、12月13日の夕刻に厚木基地に到着した。そして残る5機の第二陣は翌日の12月14日に到着した。11機のF/A-18Eは12月8日にカリフォルニア州のNAS Lemooreを発って、ハワイ、ウェーキ経由で到着したものであるが、途中2陣に分かれた。VFA-115は、A-6E時代、VA-115としてCVW-5に所属していたが、1996年にVFA-27と交代する形で本国に戻り、NAS LemooreでF/A-18Cに機種更新し、VFA-115に再編されたものである。そういう意味で、13年ぶりの里帰りとも言える。そして彼らが携えてきた11機のF/A-18Eは、生産ロット31にあたり、AESAレーダを装備するBlock 2のスーパー・ホーネットであった。

そしてVFA-115の全機が到着した翌日、12月15日の朝、VFA-192の11機が一斉にエンジンを始動した。23年間の厚木での生活に終止符を打ち、NAS Lemooreに向けトランスパックに旅立つ時がやってきた。全機外装タンク3本を携行し、6機と5機に分かれ、CVW-5のメンバーやグランドクルーが見送る中、CAGカラーの美しいNF/300(164010)を先頭にR/W01を次々とエアボーンし、北の空に消えて行った。

年末になるとVAW-115のE-2Cにもノーマーキングの機体が出現し始めた。これはVAW-115が使用していたE-2C グループIIの機体を、E-2C Hawkeye 2000の機体に更新するためであった。
                                 (この章終わり)      


      私のアルバムから
(本章に関連する当時のCVW-5の機体を紹介)





 2008年12月23日、厚木のR/W19に着陸するVAQ-136のEA-6B(164402/NF500)





 2008年12月29日、厚木のR/W19に着陸するVAW-115のE-2C(163698/NF602)





2009年1月12日、厚木のR/W19に着陸するVFA-192のCAG機 (164010/NF300)





 2009年1月12日、厚木のR/W19に着陸するVFA-192のF/A-18C (164050/NF311)





 2009年1月12日、厚木のR/W19に着陸するVRC-30 Det.5のC-2A(162169/NF27)。NAS North Islandで交換した機体





給油ミッションを終え、厚木のR/W19に着陸するVFA-102のF/A-18F(165888/NF106)





 2009年12月22日、厚木のR/W19にアプローチするVFA-195のF/A-18C





 2009年12月22日、厚木のR/W19に着陸するマーキングを落とされたVAW-115のE-2C(163698/602)



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