Home  >紫電(オオタキ・アリイ 1/48)

誌上個展

紫電(オオタキ・アリイ 1/48)

by 田口博通 Hiromichi Taguchi



 オオタキの紫電は1972年の発売だが、タミヤの紫電が出現するまでは唯一ものの貴重なキットだった。スタイルはご覧の通り、太い胴体もうまく表現され、破綻も無く、今でも通用するのはちょっと嬉しい。  モールドはスジ彫りで、表面には詳細なリベットが打たれている。今回作ったのは通算3機目で、日の丸デカールが使えなかったので筆塗りで手書きした。



 上面はMrカラーで青が強い濃緑色を作り、エアブラシで吹き付けし、下面は35番明灰白色をそのまま使った。乾燥してから油彩で軽くスミイレしている。   主翼前縁はマスキングテープを細切りしてマスキングして、エアブラシを使うほどでもないので、下面色で下塗りした上に黄橙色を筆塗りした。



 筆塗りには 人それぞれ色々なテクニックがあると思うが、恥ずかしながら最近の筆者の方法を紹介したい。
 
 パレットには 画材店で売っている使い捨て紙パレットの小型のもの(10cmX15cm)を使っている。色々 試したけれども、30枚で150円と最も経済的だった。筆は画材店で350円くらいの面相筆を使用しているが、腰が強く穂先が長い方が、塗料を含み 使い易いと思う。
 塗料はいつもはMrカラーを使用して、少量をパレットに出して使う。シンナーは塗料皿に少し出しておく。
 面相筆の筆先にMrカラーのシンナーを少量含ませ、塗料に筆先をつける。少し薄めの塗料をプラモデルの表面に塗ったら また それの繰り返しだ。シンナーに筆先を毎回つけることで、筆先の乾きと汚れを防ぐことが出来る。


 大きい日の丸のマスキングは  マスキングテープ幅が足りない場合は、エアブラシ用のマスキングフィルムを使っている。12.5cm幅で300円くらいだから、これも費用対効果が良い。
 
 サークルカッターは色々と使ってきたが、最近 購入したスーパーパンチコンパス(梅本デザイン)が使い易い。これも画材店にある。マスキングフィルムをアクリル板の上に貼って、サークルカッターで所定の円を切り出す。

日の丸の筆塗り

 主翼上面の濃緑色の上に赤を塗っても、うまく発色しないので、下塗りをする必要があるが、筆者は下面色である明灰白色で下塗りすることが多い。
  マスキングした内側を面相筆で まず、斜め右下方向に塗り、ドライヤーでブワーッと乾かす。
乾いたら、今度は斜め左下方向に塗る。
これで乾かすとほぼムラが無くなっているはずだ。

 赤も同様に、面相筆でシンナーに筆先をつけて薄めの塗料を 筆先でまず右斜め方向へと塗る。 乾いたら、今度は左斜め方向へ

 次は、横方向に。
そして 最後に縦方向にと 乾かしながら 4回塗り、乾いた後 そっとマスキングフィルムを剥がせば、ムラも消えて、見事に日の丸の出来上がりとなっているはずだ。

 神様でもない限り、どうしてもスジ彫りなどに塗料が漏れるから、最後に面相筆でタッチアップして修正する。境界の盛り上がりが気になるようであれば、少しカッターナイフで削ってやろう。

 筆塗の利点は、エアブラシよりも実作業時間が少し長いが、大規模なマスキングの手間が必要ないので トータルで見れば短時間で気軽にできることだ。
 スプレーは、吹きこぼれで机などが汚れるのを防ぐために、毎回 結構な準備をしなければならないが そのうっとおしさからは解放される。

 日の丸が完了し、尾翼のデカールを貼れば、塗装は完成。
 ここで 気持ちに余裕があればもう一手間。デカールが落ち着いた翌日くらいに 艶を調整したクリア塗料を吹き付けしてやろう。そうすると、スプレーの全面塗装、筆塗のマーキング、尾翼のデカールの艶が統一され、イイカンジになる。
 艶消しクリア塗料はMrカラーのクリアに30番フラットベースを混ぜて作っているが、フラットベースを混ぜる量で艶の状態はいかようにも調整できる。もちろん、クリアで保護しておけばデカールが経年変化で劣化して剥がれるのも防ぐことができるわけだ。




 プラモデルは気軽に楽しんで作れることが一番と、気づいたのは 恥ずかしながら、実はここ数年のことで、怖がらずに エアブラシと筆塗を併用して始めた頃からだ。
  その前は、前縁黄橙色帯もエアブラシを使い、その煩雑さに 手が進まず、プラモ作りが苦痛だった時が多かった。
 思い返せば、「全体を統一して ミスなく作らなければならない」という技術至上主義の呪縛に支配されていたのかもしれない。
 
 今世紀は文明から遠い某国での生活が続いて、 現地で手に入る塗料と筆と材料で、「出来上がりは別として」 プラモデルを作ることを経験してから、プラモデル作りが苦痛ではなくなった。
 今では、シートベルトをつけなくても、計器を塗り分けなくても、 もちろん、アンテナ線も、ブレーキパイプも マー気が向けば自作すればいいだけで、「いつも必ずこうあらねばならない」 という呪縛が無くなった。
   
 そう考えると完成が早くなった。完成機が増えるとプラモデル作りが自然と楽しくなる。
 近頃は皆様ご存じの通り、B級キットでも許せるというか、その味わいが解るようになったのは個人的に大きな進歩だと思っている。「教養とは寛容のことである」とは最近 聞いた一節だが なーるほどと。 もっとも、まだ 苦労を買うようなキットに自ら飛びつくほどストイックになってはおりませんが。

  ということで皆様も 筆塗りを少し試してみませんか。






 Home  >紫電(オオタキ・アリイ 1/48)

Vol.70 2014 June.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved / 
            editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

特集2

TOTAL PAGE