隼3型の塗装は、実際に製造に携わった下采(しもうね)昇氏の証言によるところが大きい。渡辺洋二『空の技術』(光人社NF文庫、2010年)に「3型に携わって」という記事があるが(初出『航空ファン』2007年5月号)、その「学徒動員の場合」の取材対象の方だ。
以下、下采氏による隼3型の塗装に関する記述をまとめておきたい。
まず、『プラモ・ガイド』1968年(「航空情報別冊」、p43)に次の記述がある(論文ではないので、行がえは詰めてある)。 「3型の塗装は、上面は暗い土色に塗った。ミドリ系統ではなくて茶系統である。(中略)筆者は当時、無塗装の1式戦を見なれていたので、何とキタナイ色をぬったのだろうとなげいたものだ。現在のプラモデルのモールド色でいえば、モノグラムのP-40、P-51の色が近いと思ってよい。(もう少し明るいが)。(中略) さて、1式戦にもどるが、下面はグレーといいたいところだが、ネズミ色でなくて上面の土色を白でうすめた色をぬった。 |
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これはまったくツヤ消しになっていた。上下色の境界は吹き付けによる軽いボカシ状であった。無塗装機のような機首の黒い反射よけは全機ぬってなかった。キャノピ内の頭当ては黒でその後方のメタノールタンクのキャップは銀色、その他は上面色をぬった。座席はジュラルミン地のままで、機内は防錆塗装されなかった。日の丸標識は全部白フチなし。ただし胴体、主翼とも白帯の中に日の丸を入れたものも組立ラインで見られた。プロペラとスピナはエビ茶色で先端近くに黄線が1本あるのは他機と同じだが、末期には濃緑色プロペラを装備した。左翼上面の付根に胴体にそって細長いサンドペーパー状のすべり止めがはってあり、操縦者はこれをふんで座席に入った。胴体には足かけがなくて、座席から緑色のヒモを1本のばしておき、それを持って乗りこんだ。脚収納孔は全部防錆塗料の「青」にぬられた。市販のものではハンブロープのメタリック・ブルーがこれに近い色である。翼端に上下にとびだしている航空灯は赤と緑(青もあった)で決まりきったことだが、点灯しない時はどちらも黒っぽく見える。尾灯は白。アンテナ柱はえび茶色だった。」 |