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誌上個展

メルセデス ベンツ 300SL (タミヤ 1/24)
Mercedes Benz 300SL (Tamiya 1/24) 

by 田口博通 Hiromichi taguchi

 Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。 
 ビンテージ・ガレージは ビンテージカープラモデルの製作だけでなく、その独特の魅力を醸し出すビンテージカーが背景に持つエピソードにもスポットをあてています。 どうぞお楽しみ下さい。

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 昨年7月からの第2シーズン6回の連載では 主にストリートカーを取り上げました。
 今年8月号から始まる第3シーズン6回連載は主に日本のプラモデルメーカーからリリースされ 現行で販売されているビンテージカーを取り上げて行きたいと思います。
  第3シーズンのトップバッターとして、今月登場するのは 今春 タミヤから発売になった 1950年代のベンツ 300SL 。

 タミヤの300SLのキットは新製品だけあって、プロポーションが良く、実車のチューブラフレーム構造が再現されているという魅力的なキットです。


メルセデス ベンツ 300SL( タミヤ 1/24)

実車について

 丸みを帯びた極めて美しい2シータークーペボデの300SLは 現在のメルセデスベンツの高級スポーツカー、SLクラスの初代モデルにあたる。発売当時、6,820ドルという高額にかかわらず、世界中のセレブが群がって購入し、映画などにもたくさん登場した有名な車だ。
 ガソリン車として最初になる燃料直接噴射装置(今日でいうフュエール・インジェクションシステム)を搭載し、最高速度 260km/hという当時の市販車としては世界最高速度を誇った。その車の性能に運転技術が追いつかず、多くのセレブドライバーが事故で死亡したため、“Widowmaker”(未亡人製造車)というありがたくないあだ名がついている。
 
 第6回で登場したレーシングカー ベンツ 300SLR と名称やスタイリングが似ていることから、その発展モデルと思われがちだが、関連性は実は無い。 販売宣伝戦略のために、レーシングカー300SLRの高いイメージを借りて、似た名前がつけられたと言われている。
 
 型式番号で整理すると
1952年のル・マン24時間レースで優勝した300SLプロトタイプは"W194”。
それを原型に1955年から発売された300SLは"W198"

1955年ワールドスポーツカー選手権を制覇した300SLRは"W196S"
F1マシンW196は"W196R"。
となっている。

 300SLは1952年にモータースポーツ界に復帰し、ワークスチーム用のプロトタイプレーシングカーとして開発されたW194(右上写真)を原型として、発展したものである。 W194はチーフエンジニアのルドルフ ウーレンハウトの設計によるもので、アルミボディに軽くて剛性の高いマルチチューブラ(多鋼管)スペースフレームに 171 PSにチューンアップした3リッター直列6気筒SOHCエンジンを搭載し、車重870kgを切り、1952年の公道レースカレラ・パナメリカーナ・メヒコで優勝し、ベンツの復活を印象づけた。
 300SLプロトタイプ "W194" 1952メキシコ出場車

300SL ガルウィングクーペ(1955年モデル)実車写真 

(上2枚ともWikipedia より引用)




 市販車300SLはスチール製ボディとなり、車両重量は1300kgと大幅に増加したが、215馬力のガソリン直噴エンジンは強力で、オプション3.25で最高速度260km/hが発表スペックだった。
 外形の最大の特徴は、やはり「ガルウィング」ドアであろう。実は、左右にトラス構造の鋼管サイドフレームがあるため、ドアを横開きにできずルーフにヒンジを設けて、上に跳ね上げるようなドア構造となったのだ。
  300SLは 1955年から2年間で 1400台が生産され、幸運にも現在まで大切にされ残った車は、収集対象のビンテージカーとして、数千万円で取引されているというから驚く。
(参考資料 ワールドカーガイドNo18,Wikipedia など)

キットについて

 このキットは2015年春 タミヤから新製品として発売されたばかりで、もう作られた方も多いと思う。  ボックスアートはタミヤの独特のタッチで、ガルウイングが開かれた姿で描かれている。

 ボックスアート 



 キットでは、下写真のようにマルチチューブラ フレームが、再現され、左45度傾けた直6SOHCエンジンにはフュエール・インジェクションシステムのラムパイプも再現されている。   残念ながら説明書の図示に解り辛い部分があり、一部の部品に愛情が欠けてるなと感じる部分があるが、全体的には律儀なタミヤらしく 各部の合いは良くキチッと組めていくので、多少の経験があれば、完成させるのは そうは難しくはないだろう。


製作

フレーム 
 このタミヤのSL300のキットは、まず、マルチチューブラフレームを作ることからスタートするが、組み立て説明書を見て、立体形状を自分の頭の中に想像できるかどうかが 最大のポイントとなる。 各部品は流し込み接着剤で接着して行こう。まず、ここが第一関門の立体パズルである。  組み立て説明書には アッパーフレームとロワーフレームの組みあがりの姿を示した図が無いので、下の組みあがり写真を参考にしていただくとよいだろう。

組み上げたアッパーフレーム(上)と ロワーフレーム(下)



上下フレームの合体 
 説明書の上下フレームの合体図では 上下逆転させて、アッパーフレームの上に ロワーフレームを裏返して載せているので、立体形状が思い描けず、大混乱する。   ここが立体パズルの第2関門で、下写真を参考にしていただき ロワーフレームの上に、アッパーフレームを裏返して合体させると楽だと思う。

ロワーフレームの上にアッパーフレームを裏返して合体させる。


その先の完成形が見通せれば あっ そうか! この方向でいいんだな と少し安心できるはず。
デフレンシャルギア(白い部品)とフロントアップライトを組み込んだフレーム完成形は下写真。



デフレンシャルギアの取り付け   フロントアップライトの組み立て
 説明書第3図がデフレンシャルギアの組み立てだが、白い部品A4がデファレンシャルギアで、それと黒いスプリング部品C19,C24を組み合わせて組んでいく。
 
 このデファレンシャルギアは タミヤではユーザーがシャーシーで飾ることを想定していないためか、下半身分しか部品が無い。ここに上半身の部品があれば、素晴らしいチューブラシャーシーにエンジンを組み合わせて飾りたいと思ったユーザーが多かっただろう。全くもったいないことで、もう少し 愛情が欲しかった部分だ。
 このデフ部品は白いプラスチックで成形されており、何が悲しかったのかセンスの良さに感心するが、透け防止のため、一度 上下とも黒艶消しで塗りつぶしてから、金属感のあるブラックで塗装しよう。
 同様なことが、エンジンギアボックスB20についてもいえる。これも残念ながら下半身だけだ。


 
 下の写真はシャーシーを裏返して 下面から写真を撮っている。
リンクバーC2をはめこめば、左右がふらふら動かず、位置が決まるようになる。



エンジンなどの組み立て
 エンジン、バルクヘッド、ラジエーター、後部燃料タンクは 説明書を見ながら組んでいくだけで、これといった問題もなくすらすらと組み上がって行くと思う。この辺りはさすがのタミヤである。
  
 ただ、この300SLの組み立て説明書には部品名称が一切なく、実車で何という部品を 今つけているのかが、ユーザーにわからないのが 今一つつまらない。
 先回登場の レベル ハーレー100は約60年前のプラモデル黎明期1958年のリリースだが 「ロケットボーイズ」を育てたプラモデルと述べたとおり、組み易さと実車構造がキットの中で両立して再現されている。 キットと説明書で 自動車の構造と部品の役割を理解し、メカ好きな子供達を育てる非常に教育的な内容になっている。
 
 日本では それから半世紀後の最新のカープラモデルでも、まだまだ残念ながら、ということである。国産メーカーのプラモデルにそこまで望むのは無理なのかもしれないが、外国製のCARプラモデルとの差は いつになったら解消するのだろうか。

再現されたマルチチューブラ フレームと
左45度傾けた直6SOHCエンジンはフュエール・インジェクションシステムのラムパイプ(上に覆いかぶさって見える)が特徴的だ。



ボディの塗装
 ボディは白のモールドで、パーティングラインが目立ちにく綺麗な表面仕上げのものだったが、サフェーサーで下塗りし、よく観察すると、パーティングラインが浮き出ているので、そこをペーパーで磨いて、ラインを消してやろう。
 ボディは 左右のドア、ボンネットを 裏からテープでとめて、一体にしてから塗装にかかる。
 ボデイの色はドイツらしくシルバーとし、フィニッシャーズカラーCLKシルバーを吹き付けた。非常にシックなシルバーである。
  最後に実車用のカルナバカーワックスを布につけて磨き、塗装完了とした。 
下塗り後、浮き出るパーティングラインを1000番以上のペーパーで磨いて ラインを消してやる。


フィニッシャーズカラーCLKシルバーを吹き付けた



 コクピット   
 コクピットは、艶消しREDとしてみた。
内貼りも ベージュや艶消しREDで塗り分けた。 左右後部ガラスのクロームメッキトリムは、「ミラーフィニッシュ」を貼っている。
 ボディのフロントガラスなどのクロームメッキトリムは、「ミラーフィニッシュ」を貼るのが手っ取り早いのだが、ビンテージカーのイメージにそぐわないと感じたので取りやめた。これまでに刷り込まれているのは、ショーウインドーで見かけるミニカーの300SLのクラシックなイメージで それを大事にしたかったのだ。


完成

 ボディのアンダーパネルは透明パーツで用意されているが、使わずに 下から チューブラフレームが見えるようにしてみた。排気管はエンジンに直接取り付けた。バンパーは自分で1.5mmドリルを用意して孔を開ける後加工が必要だが、説明書の図がわかりにくいので、落ち着いて現物合わせで取り組もう。  完成したモデルは非常に綺麗で端正な雰囲気だ。




ベンツ 300SL その後

 ガルウィングドアの初代クーペモデル300SLは1955年から1957年5月の生産終了までの2年間で 1400台が生産された。以後は300SLロードスターモデルに移行し1,858台生産された。
 ロードスターでは燃料タンクが小型化され、トランクルームが拡大された。ホイールベースは変わらないが、全長はやや長くなっている。

 このSLクラスは 2代目 W198に引き継がれ、以後 モデルチェンジを繰り返し、2011年には第6代目のR231(SL650)が登場している。
 
 さて、ベンツでは SLクラスは2シーターオープンスポーツの最高峰に位置づけられた。また、「SL」はドイツ語で軽量スポーツカーを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字に由来するとされたが、2代目(W113)よりセレブ向け高級スポーツカーとしての性格を強め、ラグジュアリー性や快適性を重視するコンセプトが現在に至るまで貫かれている。 それがまた、高級車を中心ラインアップとする ベンツなりの生き方なのかもしれない。

 300SL ロードスター 実車写真(Wikipedia より引用)

ビンテージ・ガレージ バックナンバー
ビンテージ・ガレージ バックナンバー
2nd
シーズン
2014年12月号 第12回 オースチン ヒーレー 100-6 (レベル1/25)
AUSTIN HEALEY 100-SIX (Revell 1/25)
2014年11月号 第11回 リンカーン・フューチュラ(レベル1/25) 
LINCOLN Futura (Revell 1/25)
2014年10月号 第10回 メルセデス・ベンツ540K(モノグラム1/24)
MERCEDES-BENZ540K (Monogram 1/24)
2014年9月号 第9回 デユーセンバーグ・モデルSJ(モノグラム1/24) 
DUESENBERG SJ (Monogram 1/24) 
2014年8月号 第8回 ド・ディオン・ブートン (1904年型)(ユニオン 1/16)
DE DION BOUTON 1904 (UNION 1/16 )
2014年7月号 第7回 アルファロメオ2300 トゥーリング(1932)(ブラーゴメタルキット 1/18)
ALFA ROMEO 2300 TOURING(Burago Metal Kit 1/18)
1st
シーズン
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回 ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)



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Vol.84 2015 August.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
           editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

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