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P-8A Poseidon ‘VP-16’ 製作記(Hasegawa 1/200)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)
飛行機プラモデルの製作


P-8A POSEIDON “VP-16” (1/200) Hasegawa Box Photoより

 ボーイングP-8A”ポセイドン“は、ボーイング737-800ERXをベースに改造された、P-3C”オライオン“の後継機となる米海軍の哨戒機です。そのため、外観的には737-800ERXと良く似ていますが、機体各所に突き出たアンテナや、センサー、レドーム、そして客室の窓のないことが、旅客機との相違を示しています。 また主翼端に取り付けられたウィングレットが、737-800ERXの反り上がったブレンディッド・ウィングレットではなく、787と同じ、傾き角の少ないレイクト・ウィングレットに変更されています。エンジンは民間型と同様のCFM56シリーズですが、搭載電子機器の消費する大電力を供給するため、発電能力を倍増したCFM56-7Bを採用しています。


完成したP-8A VP-16隊長機

 P-3の後継機開発計画は、1980年代から始められたのですが、その実現までには紆余曲折があり、P-7、MMA(Maritime Multi-mission Aircraft)とプログラム名を変えての模索が続き、2004年6月14日、やっと737を改造したボーイング案(737MMA)が米海軍の次世代海洋哨戒機に採用されました。そして同年3月にP-8Aの呼称が与えられ、7月8日に5機のP-8Aの試作契約がボーイング社との間で交わされました。5機のうちの3機は耐空性能試験用、静荷重試験用、疲労試験用の機体で、残る2機がミッションシステムの試験機体でした。数々の設計審査も終わり、ボーイングが5機の製造に移行したのは2007年の12月です。そして、2009年4月、飛行試験用1号機T1が初飛行に成功しました。

その後の機体も完成し、試験に供せられ、2011年1月、米海軍は初期低率量産(ILRP)機6機を発注、同年7月には量産初号機が初飛行に成功しています。ボーイングは2012年3月に米海軍へ量産機の引き渡しを開始、2013年1月までに6機を、2014年7月までには14機を、そして2015年1月にはトータルで21機のP-8Aを納入しています。P-8Aを最初に受領した実戦飛行隊は、フロリダ州NAS Jacksonvilleをホームベースとする第16哨戒飛行隊(VP-16) “War Eagles”で、同隊は2013年11月29日に初期作戦能力(IOC)を取得すると、すぐさま沖縄県の嘉手納基地へと派遣されました。



 さてキットについてですが、昨年末ハセガワからリリースされた1/200スケールの「P-8A POSEIDON ‘VP-16’」Special Editionは、この第16哨戒飛行隊の所属機をモデル化したもので、尾翼にカラーマーキングの施された同隊の隊長機、LF429(168428)と通常塗装のLF433(168433)のデカールがセットされています。 実機と同様に、同社の1/200スケールで発売されていたB.737-800をモディファイしてキット化されており、P-8Aに必要となる、レドーム、主翼のレイクト・ウィングレット、垂直尾翼先端のアンテナ・フェアリング、尾部のAN/AAQ-24 DIRCM、AN/AAR-54ミサイル警報装置用センサー、主翼パイロン、そして機体各所のアンテナなどが、新たな部品として追加されています。エンジンは発電機が異なるものの外形的には同じCFM56-7シリーズで-800と同じものが入っています。それでは製作のポイントを見ていきましょう。

製作


 このキットには、スモーククリアのスタンドと脚上げ時の主脚扉と前脚扉が準備されており、飛行姿勢の再現も可能です。 但し、スタンドへの支持座を胴体下面に取り付けるため、この部分に位置するレドームを取り付けることができなくなります。作例では地上姿勢を選択しました。


1.事前準備
 箱を開け、キットを取り出すと直ぐに組み立てたくなるのがモデラーの性分ですが、まずはインストにじっくり目を通してみましょう。胴体左右を接着する前にいくつかやっておかなければならないことがあります。一つは機体に数多く取り付くブレードアンテナやセンサー類の取り付け穴を事前に開けておくこと、そして民間型とのパネルラインの相違から胴体のパネルラインの一部を修正する作業です。 この修正についてはインストに説明があります。穴開けは胴体パーツの内側にあるガイド穴から行います。問題はガイド穴の無い、前胴上側面に付く平板上のSATCOMアンテナ(パーツNo.K15)と中胴下面のブレードアンテナ(パーツ番号K5)です。筆者の採った手法については後に紹介することにします。


2.胴体と主翼
 最近の1/200シリーズはコクピットやキャビンの窓はデカール仕上げとなっているようで、胴体がすっきり仕上がっています。 これには好みもあるかもしれませんが、これならクリア・パーツとのすり合わせの必要もなく1/200のスケールならこの方が綺麗に仕上がるように思います。それに胴体内側の塗装も不要となります。


 さて事前準備が終わると、胴体左右どちらかのパーツに錘を接着してから、左右を貼り合わせます。次に主翼を取り付けますが、主脚収納庫の内側部分を白(FS17875)で塗っておきます。そして主翼中央部下面パーツ、左右主翼と接着していきます。パーツの精度は良く、ぴったりと決まりますが、左右の上半角が同じになっているか確認が必要です。
左右の主翼の固定が終わると、これだけ別パーツとなっている内側のフラップ・アクチュエータ・カバー、さらには主翼翼端にウィングレットを取り付けます。
ウィングレット部のつなぎ目に少し隙間ができますが、パテを使うほどではありません。しかし段差は目立つのでサンドペーパーで面一に仕上げておきましょう。これで機体の外形はほぼ出来上がります。水平尾翼は、塗装を考えると後付けの方がベターです。次は前脚収納部の塗装です。主脚収納部と同様に白(FS17875)で塗装します。インストにはどちらも機体色と同じグレー(FS36375)の指示がありますが、実機では白のように見えます。主脚カバー内側と前脚カバー内側も同様です。


 次に機体各所にあるレドームやセンサー・フェアリングなどを取り付けていきます。胴体上下面にあるブレードアンテナとSATCOMアンテナ、そして主翼のパイロンは、この時点では取り付けず、後回しにします。 これらのパーツは、ダボを取り付け穴に差し込んで流し込み接着剤で固定していくと楽です。但し、位置や取り付け角度を間違えないようにしなければなりません。(写真1~3)これで機体の塗装準備は完了です。



写真1 機首部のフェアリング 

写真2 後胴部のセンサーやアンテナ・フェアリング

写真3 胴体下面のアンテナ・フェアリング


3.エンジン
 エンジンは、1基あたり7つのパーツから構成されており、CFM56-7Bを収めたポセイドンのエンジンナセルの特徴をよく捉えています。ナセル部に取り付ける境界層フェンスや排気ノズルの部品は小さいので取扱注意です。アクセサリー・ギアボックスのカバーと境界層フェンスは先に接着しておいた方がいいでしょう。
 そしてエンジンナセル内側、ファン、タービン部、ノズル部は先に塗装を済ませてからエンジンナセルに組み込みます。(写真4)そしてエンジンナセルの左右を合体させ、エンジンが組み上がります。

写真4 CFM56-7Bエンジンパーツ


4. アンテナ
 ここで紹介するアンテナは、胴体上面のブレードアンテナ(パーツNo.K16×4、パーツNo.K17×2)、前胴上側面のSATCOM用平面アンテナ(パーツNo.K15×4)、中胴下面のブレードアンテナ(パーツNo.K5×5、パーツNo.25×1)です。これらのアンテナは、整形して白の塗装を行うだけなのですが、1項で書きました様に、K15とK5のアンテナには取り付け位置を決める穴が胴体側にありません。そこで筆者の場合には、インストのアンテナ取り付け図を参考に、これを1/200スケールに変換して、機体のアンテナ取り付け位置を割り出し、そのポイントにピンバイスで0.5mmの穴を開けていきました。 しかしアンテナパーツ側にはダボが付いていないので、K5のブレードアンテナについてはランナーからのゲート部分を切り残して整形し、ダボに利用して、ピンバイスで開けた穴に差し込むことにしました。またK15の平面アンテナについては、ゲートの位置がK5のようにダボに利用できる位置にないため、やはり0.5mmのドリルで穴を開け、そこに0.5mmのプラ棒を差し込み、ダボを作りました。写真は、K15のアンテナ支柱に0.5mmのプラ棒を差し込んだ状態です。こうして全てのアンテナが胴体に取り付けられる形にして白の塗装を行いました。


写真5 SATCOMアンテナへのダボ付け


5.塗装
 機体はグレー(FS36375)一色のため比較的楽ですが、翼の前縁やエンジンインレットの先端部は無塗装(銀)となります。実機では無塗装部をマスキングしてグレーを吹き付けるのですが、キットではその逆で、先にグレーを前面に吹き付け、マスキングして無塗装部をフィニッシャーズのファインシルバーで仕上げました。この際、すでに塗装している、脚収納部や、エンジンの内面、タービン部などはマスキングして対処しています。なお水平尾翼は、単体状態で塗装しました。 最後に機首先端のレドーム部をセミグロスブラックで、また尾部下面にあるAN/AAQ-24 DIRCM、AN/AAR-54ミサイル警報装置用センサーターレットをグレー(FS36231)で塗装します。レドームの塗装ですが、キットにはレドームの境を示すパネルラインが彫られてないため、図面や写真から寸法を割り出し、マスキングテープで縁取りをして塗装しました。以上の塗が終わった機体とエンジンが写真6と写真7です。


写真6 塗装の終わった機体

写真7 塗装の終わったCFM56エンジン


また車輪は、主車輪のハブをグレー(FS36375)で、また前輪のハブを白(FS17875)で、タイヤをつや消しの黒で塗装しました。(写真8)
写真8 主車輪と前輪


6. デカールの貼り付けと仕上げ
 デカールはオフセット印刷の良質のものが付いています。1/200ともなると、細部のマーキングは小さくなり、ハンドリングは極めて厄介です。台紙から離れると上下、左右も分かりにくくなるものもあり、注意しましょう。慌てず、じっくりと貼り付けていくのがコツです。主翼上面のウォークウェイ・ラインのデカールは一体で透明部分の面積が広いため、シルバリングを起こしやすいのですが、クリアのオーバーコーティングである程度カバーできるので、あまり神経質にならない方がいいでしょう。 デカールを貼り終えた後、パネルラインの一部に墨入れをして水平尾翼とアンテナを取り付けます。アンテナを取り付けた胴体上下面が写真9と写真10です。また写真11は、デカールを貼り終え、完成したエンジン・アセンブリです。



写真9 胴体上面から見たSATCOMアンテナと通信用ブレードアンテナ

写真10 胴体下面の通信用ブレードアアンテナ


写真11 完成したエンジン・アセンブリ


そしてエンジン、主翼下のパイロンを取り付けた後、デカール保護用にクリア塗料をオーバーコートします。クリアでのオーバーコートですが、実機を目にしたとき、機体表面が意外につやつやしていたこともあり、半ツヤのクリアでオーバーコートしました。クリア塗装が乾燥した後、主翼左右の翼端灯をクリアレッドとクリアブルーで塗り、脚と脚扉を取り付ければ完成です。(写真12~)

旅客機の様にスマートなポセイドンですが、多数のアンテナが軍用機らしさを醸し出しています。自室の机の上で眺めるには丁度良い大きさです。現在はVP-45”Pelicans”の機体が発売されています。貴方も机の上に1機、如何でしょうか?

  なお、本誌Vol.82(2015年6月号)にてWalkaround Photo として実機の細部写真を紹介していますので、製作の参考にしていただければ幸いです。 



写真12 完成したP-8A VP-16隊長機










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