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特集 コピーパクリ vs オリジナル

 メッサーシュミット Me262 (ニチモ 1/48)

by  田口博通 Hiromichi Taguchi




 6月から作っていたニチモのMe262が完成しました。購入したのが、1970年代のこと、約40年後のやっとの完成です。
 今月号の表紙にも使わせていただきましたが、ニチモのMe262が模型誌の表紙を飾るのはこの50年で おそらく初めてのことではないでしょうか。
 48のMe262はモノグラム、タミヤと決定版がリリース済みで、1963年リリースのキットのそれもリンドバーグコピーのフォルムを語っても意味がありません。
コピーキットの持ち味を活かすべく、ごついリベットの表面モールドと せっかくの可動部を全てそのまま作ってみました。
 
 塗装は、ずっと 魅力的な箱絵の JG7 所属 機番3 を再現したいと思っていましたので それを実現しました。デカールは長い年月で紛失しており、モノグラム48から流用しました。
 筆者のように この箱絵に魅せられて購入された人も多かったことと思います。
 
 この機体は 1945年4月25日スイスのデューベンドルフ基地に投降してきた9./JG7所属のMe262A-1a、W.Nr500071 で航空ファン世界の傑作機No.2 の45ページに4姿が掲載されている有名な機体です。
 ニチモの箱絵では、爆撃型A2-aの設定でラックと爆弾も付属しているため、シュツルムフォーゲルと大きな文字で書かれていますが、箱絵は戦闘型のA-1aとなっています。また、一点間違いがあり、それは 胴体機首右側のエンブレムのオオカミの首の向きが後ろを向いていることです。

箱絵 



 ニチモの1/48 Me262は コピーキットの代表格のように言われていますが、ニチモの名誉のために申し上げておくと、ニチモがコピーしたものではなく、元マルサンがリンドバーグのMe262をまんまコピーしたプラモデルを発売リリースしたのが1963年です。そのマルサンが倒産後、ニチモが金型を引き取って発売を続けていたキットであります。

 オリジナルのリンドバーグ製品は 航空情報プラモガイド1963年度版ニューキットガイドに掲載されていますが、『各部可動でナカナカ凝ったものである』と評されています。
 1964年版プラモガイドの国産主要キット一覧には、マルサンN0.443 メッサーシュミットMe262 が初登場しますので、マルサンによるコピーキット化は1963年の事であった と想像されます。
 マルサンのコピーキット化は1963年から本格化したようで、前述の国産主要キット一覧に掲載されているマルサンの1/48級のコピーキットは
                           (オリジナル)
★ No.423 TBFアベンジャー           モノグラム
★ No.434 ロッキードP-38 280円        リンドバーグ
★ N0.443 メッサーシュミットMe262 280円 リンドバーグ
   No.444 A-4 スカイホーク 250円      リンドバーグ
   No.445 F-6A スカイレイ 300円       リンドバーグ
★ No.447 SBD ドーントレス 300円      モノグラム
★ No.449 ホーカーハンター 350円      リンドバーグ
   No.450 F4F ワイルドキャット 250円    モノグラム
★ No.451 メッサーMe109E 300円       モノグラム
★ No.452 ヘルダイバー 400円         モノグラム 
★ No.453 スピットファイア9 300円       モノグラム
と 11キットあります。
 
この内で、★印の8キットが1970年代初頭にニチモに引き継がれ、ニチモがプラモデル事業から撤退する最近まで、発売が続けられておりました。
 コピーキットについては、商道徳上の問題は多々あったこととは思いますが、多様性が面白かったプラモデルから また一つのサブカルチャーの消滅となり 大変残念なことです。




 1960年代当時、四国は高松に住んでいた筆者は、当然のことながら オリジナルのリンドバーグ、モノグラムとも 一度も見たことがなく、マルサンのキットがオリジナルと思い込んでいました。
 コピーキットであることを知ったのは、1970年代プラモガイドを読んでのことです。
 地方の模型店で舶来製プラモデルを見ることが極めて少なかった時代なので、私のようにオリジナルを見たことが無いという人も多かったのでは と推測しています。 
 オリジナルのモノグラム製品は70年代にバンダイ国内発売版が発売され、模型店でも見かけるようになりました。
 また、リンドバーグ製品については、東京の模型店でも見かける機会が少なく、出来も評判で薄々わかっていることから、実は一度も箱の中身を見たことが無いまま現在に至っております。

製作

(1)胴体
 このキット、全体形状はラフですが、モノグラムの48決定版が発売されているので、そこは味と考え、修正せずそのままストレートで作るのが 寛容なる大人の作り方でしょう。
 可動部の見せ場は多く、エンジンカバーをはずせば、ジェットエンジンが見られます。また、機首機銃カバーが着脱可能で、内部の4門の機銃を見られるようになっています。 また、前脚と主脚が脚扉と共に可動引き込み式です。 加えて エルロンと、方向舵も可動で、現代ではありえないような盛り沢山の内容となっています。
 21世紀に せっかく作るのだから、「全ての可動部をきちんと可動させたい」、そう思い製作を開始しました。
 胴体内部を ブラックグレーに塗り、機首機銃と
前脚を挟んで、接着します。
 機銃が下に沈み込み、胴体銃口と 機銃の射線が全然合わないのですが、そこは目をつぶりましょう。

 説明書には記載がありませんが、機首には相当量のオモリを入れないと、シリモチを付きます。釣り用鉛を工作用油粘土で固めて、機銃座下にどっさりと仕込みます。




2) 主翼
 主翼関係の部品は下の写真のように分割されています。可動の主脚を仕込み 接着していき、部品の隙間は最終的にパテで埋めると割り切らないと完成にたどりつけません。

 主翼のエンジンポッドにはエンジンを仕込みます。エンジンはラフなものですが、エンジンカバーをはずせば、エンジンが見られるので、シルバーなどで塗装しておきます。


 胴体に主翼、尾翼を接着し、あっというまに形になります。上半角だけは飛行機らしくなるかそうでないかの境目なので慎重にびしっと決めます。
それから、主翼と、水平尾翼の翼端形状がカモメのように長く印象が違いすぎます。大きなやすりでざくっと削り落とし、ちょっと見の印象だけ合わせておきました。
 コクピットは何もせず、ブラックグレーで塗ったのみ。それが完成への早道です。ここまでこぎつければ できたようなものです。
 ヒケによる窪みや、金型傷がある箇所は、シルバーを塗って補修箇所をわかりやすくしておきます。
 往年のせっかくのブツブツリベットモールドを活かすため、現代のスジ彫りキットよりも 注意を払いながらの接着箇所の整形が必要になります。

 胴体接着部などは両側をマスキングテープで保護し、紙やすりで整形していきました。
紙やすりですが、耐水ペーパーの400番、800番、1200番と用意し、水をつけながら丁寧に削って行きます。消えたリベットはカルコでリベットが持ち上がるようなイメージで表面を斜めから突いて、再生しました。そこに、金属磨きピカールを刷り込んでおくと、見事にボツボツリベットが再生できます。(1960年代のソリッド模型工作本に掲載されていた古(イニシエ)の伝統テクニックです。)




 胴体と主翼を合わせて上半角を調整する過程で、胴体下に大きな段差ができてしまいました。セメダインの「木部補修用木工パテ」を厚く盛り、1日置いた上で削りました。  木工パテは少し生地が荒目なので、気泡や窪みもできますから、そこはプラモ用のパテ(緑色の部分)で埋めます。これで、胴体下面もばっちりです。

 ラダーはおそらくオリジナルリンドバーグに誤解があったのでしょう。ラダー下部が胴体についていますので、ここだけは切り取って、ラダー側に接着します。  今回、製作を簡略化し、可動翼を後付するために、ラダー、エルロンには コトブキヤから発売されているガンダム用の1mm径スプリング線を仕込みました。
 スプリング線のおかげでだらっとすることがなく、中立を保てます。


3)塗装
世界の傑作機の塗装パターン図を参考に、テープでマスキングしながら、折れ線迷彩を塗っています。
塗料には Mrカラー
No.117 RLM76 ライトブルー
No.122 RLM82 ライトグリーン
No.121 RLM81 ブラウンバイオレット
を使いました。
 胴体とエンジンポットのモットリングは 一般的なシングルアクションの0.3mm経口エアブラシで 小さい斑点を細吹きしています。同時に主翼の折れ線迷彩の境界も少しぼかしてみました。
胴体後部のバンドはテープでマスキングし、赤と青の発色をよくするために白で下塗りした上に やはりMrカラーのGXカラー 赤と青を筆塗りで行いました。筆塗がやはり簡便です。

 2日くらい置いて、塗装が完全に乾燥した後、最近流行のMr.ウエザリングカラー グランドブラウン色でウエザリングし、塗装は完了です。

胴体後部のバンドも塗装され、この後、乾燥させてウエザリングすれば 塗装は完了


4)マーキング
 先述の通り、箱絵の JG7 所属 機番3 を再現したいと思っていましたので モノグラムMe262 から流用しました。ニチモのデカールは40年の長い年月で紛失したのか、カビが生えて捨ててしまったのか 記憶が定かではありません。  モノグラムのデカールは糊が白いのが欠点です。一度流し落としてしまい、透明な液体ノリを使って貼りました。
 百均(セリエ)で透明な液体のり(PVA材料)を買いましたが、トンボ製の良質な液体のりも文具店で買えるようです。お試しください。
 デカールが完全に乾燥後、自作の艶消しクリア(Mrカラークリア46と艶消し剤30を混合)を吹いて、デカール保護と全体の艶調整を行い完了です。



5)可動部
 エルロンは ラダーと同様にスプリング線を用いて、後付けできるようにします。また、翼端方向のピンは0.5mm真鍮線で置きかえます。こうするだけで、可動翼の工作は 先に組み込む必要がなくなるので、塗装も簡単になります。  胴体機銃カバーは、ちょっと考えればわかりますがヒンジがキットのままでは可動できません。それで、安直ですがアルミテープをヒンジに用いて可動させています。
厚めのアルミテープを使えば保持力もあり、そう煩雑に可動させるわけでもないので 結構長持ちします。



 アルミテープヒンジを使って機銃カバーを開閉


 脚扉もアルミテープをヒンジに使い可動させています。
脚扉を先に組み込まないでよく、後付けできるので、製作も簡単になります。
きっちりと隙間なく閉まるわけではありませんが、そこはご愛嬌。

完成

 キャノピー部品は透明度は良いものの、前面が丸く形状に難があり、分厚いのは致し方ありません。削って平面にする考え方もありますが、それではニチモMe262ではなくなってしまうので、そのままとしました。
 脚のオレオ部はアルミテープを貼りました。正真正銘のアルミ肌でキラッと光ります。これもニチモが金型を引き継いだ1970年代初頭のテクニックでしたね。
「何も足さない、何も引かない」で行きたかったのですが、キット部品紛失のため、胴体後部アンテナとピトー管だけ金属線で作り変えました。

 以上で完成とあいなりました。
フォルムはラフラフですし、脚はストッパーが無いので、少しグラグラします。
 それでも、きちっと塗装してやると、往年のコピーキットが息を吹き返したのではないかと思います。
 モノグラムやタミヤの48決定版キットが入手できる現代で、フォルムラフラフの往年のコピーキットを大マジメに、それもストレートに作ることに、ちょっと疑問を持たれる方もおられると思います。しかし、作った本人は おおいに楽しめました。
 プラモデルは精密なキットから、明らかにおもちゃに近いものまで様々で多様性があります。それぞれに良い所もあるのも事実。
 前世期の精密技術路線一辺倒の暗黒時代には、「こんなキットはプラモデルではない」と罵倒され、焚書された事があったのは悲しいことです。
 21世紀は多様性を許すグローバルな寛容の時代。葬り去られたキットの箱を再び開け、おおいにプラモ作りを楽しもうではありませんか。

 ニチモのこのキットは爆弾とラックも付属しており、爆撃機型 A2-a  にもできます。
 実は、もう1キット 在庫していますので、いつか A2-aを作りたいと思っています。







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Vol.96 2016 August.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
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