Home  >Grumman F9F-8 “Cougar” 製作記(Hasegawa 1/72) 飛行機プラモデル製作

特集 グラマン ジェットファイター

Grumman F9F-8 “Cougar” 製作記(Hasegawa 1/72)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


F9F-8 Cougar (1/72) Hasegawa Box Photoより


 戦後、ドイツの優れた航空技術が欧米とソ連に拡散しました。特に高速化にあたり大きな力を与えたのが、後退翼という新しいコンセプトでした。朝鮮戦争に突然出現したソ連の後退角ジェット戦闘機MiG-15は、西側を驚かせました。高速で飛行し、一撃離脱の戦法で米空軍の爆撃機を手玉にとり、米軍パイロットにとって大きな脅威となりました。空軍はこれに対し、ノースアメリカン社が開発した後退翼戦闘機F-86を戦線に投入し、これに対抗させます。 一方海軍は、未だ後退角戦闘機を手にしておらず、1951年に入りノースアメリカンとグラマンの2社との間で高速後退翼戦闘機の開発契約を結びます。ノースアメリカン社が提案したのは、F-86の海軍型(後のFJ-2 ヒューリ)、グラマン社の提案はパンサーを後退翼化した機体でした。Design93と名付けられたこのグラマンのこのモデルは、F9F-5をベースに35°の後退翼を持つ機体にP&WのJ48-P-8Aエンジンを搭載したものでした。陸上機の艦載機化は意外と時間のかかるものです。


一方グラマン社は、XF9F-6“クーガ”の呼称が与えられこの機体の設計、製作を半年ほどで完了させ、1951年9月20日に初飛行に成功します。試作機は3機製作されましたが、これらはF9F-5を改造して製作されたものです。3機のXF9F-6は、メリーランド州パタクセントリバーにある海軍航空テストセンターNATCに運ばれ、実用評価試験を受けます。受領試験の半年後には量産初号機がラインオフしており、生産の順調さが窺えました。 また試作機の1機がまだ戦争の続く朝鮮に送られ、戦闘に参加しています。その実績が量産移行を確たるものにしたとも言えます。このように順調に進んだクーガの開発ですが、一つだけ解決に苦労した問題がありました。それは、後退翼化により増速した着陸速度です。これの対策として、主翼全幅に渡る前縁スラットや後縁フラップの幅を広げるなど、高揚力装置に大きな手が加えられました。


 F9F-6は646機生産され、シリーズ中最も多く生産されたモデルとなります。続いて生産されたF9F-7は、エンジンを推力の若干大きなアリソンJ33-A-16Aに換装した以外はF9F-6と変わっていません。生産機数は168機で終わり、最終型のF9F-8(F-9J)に移行しています。F9F-8は、エンジンをF9F-6と同じP&WJ48-P-8Aに戻し、主翼の強度を増しています。これによりダイブ飛行でマッハ1を超えることができました。F9F-8は、結局601機で生産を終えています。 派生機としては写真偵察型のF9F-6PとF9F-8Pそれぞれ60機、110機とかなりの数が生産されています。さらにクーガでは複座のトレイナーF9F-8T(TF-9J)が、400機も生産され、単座機より長い期間、海軍、海兵隊で使用されました。

F9F-8 Cougar VF-81 Hasegawa(1/72) 



 さて作品のF9F-8ですが、ハセガワからF9F-2パンサーに続き1980年代にリリースされた年代物のキットです。パンサー同様、美しい凹彫のパネルラインを持つキットで、複座型のリリースも期待したのですが、残念ながら希望はかないませんでした。 それでも、単座の戦闘機型は、ハセガワからリリースされたこのキットしかなく、今となっては貴重な存在です。最近SWORDから1/72で単座の偵察型F9F-8Pと複座型のTF-9Jがリリースされ、これで全バリエーションが揃ったことになります。今回は姉妹機のF9F-2と一緒に製作してみました。

F9F-8 Cougar Hasegawa(1/72)


製作

 キットには、米海軍標準塗装の第81戦闘飛行隊、真っ白な機体に機首と尾翼がオレンジに塗られた第26訓練飛行隊、そして米海軍のアクロバットチーム”ブルー・エンジェルス“の3種のデカールが付属しています。30数年たった今もインシグニアの白が黄ばまず、またF9F-2のように艶消しにもなっておらず、良質のデカールと言えます。今回は別売デカールを持ち合わせなかったこともあり、不安はありましたがキットのデカールを使用し、VF-81の機体に仕上げることにしました。 キットはF9F-2同様少ない部品で構成されていますが、F9F-8の特徴を良く捉えています。F9F-2のように機首のボリューム不足も感じさせられることもありませんでした。下面のエアブレーキも、パンサー同様開閉状態が選択できます。また搭載兵装としては、サイドワインダーが4発と150gal.ドロップタンクが2基、付属していました。


 機体の構成は後退翼と直線翼の違いこそあれ、F9F-2と同じです。左右の胴体パーツを貼り合わせ、4門の20㎜機銃の付いた機首部を取り付けた胴体に、左右一体となった下面パーツと左右の上面パーツを貼り合わせた主翼を、下方から組み込む構成です。 水平尾翼は左右別々の一体成型で、垂直尾翼の左右から取り付けます。但し、左右のエアインテイクはF9F-2とは別構成で、主翼を胴体に取り付ける前に、胴体の所定位置に組み込んでおく必要があります。


 クーガの場合は、胴体の左右接合前に組み込むのはコクピットのみです。エンジン排気管はアレスティング・フックと一緒に最後に取り付けることができます。但し後胴部の内壁は塗っておかなければならず、黒鉄色で塗装しました。またコクピット内壁は、グレーFS36231(Mr.カラーC317)で塗りました。コクピットのバスタブも内壁と同じグレーで、また計器盤は艶消しの黒を塗り、計器類のデカールを貼り付けました。(写真1) コクピットにはグリップを艶消し黒で塗った操縦桿も取り付けておきます。シートは後で組み込みますが、取り敢えず塗装をしておきます。余っていたエッチングパーツのシートベルトがありましたので、それを付けてみました。(写真2)


写真1 コクピット
写真2 シート


 コクピットを組み込んで、左右の胴体パーツを接着し、そこに機首のコーン部を取り付けます。このとき、機首のコーン部に錘を3g程度入れるのですが、(写真3)のようにパチンコ玉を1個入れておきました。 (写真4)は接着後、整形の終わった胴体の前部です。コクピット内が少し見えます。段差や隙間のできたところはパテで埋め、整形しました。


写真3 機首に入れた錘
写真4 貼り合わせ後の胴体の一部


 次に主翼ですが、まずは上下パーツを胴体と合わせながら、隙間が空かないように接着します。特に注意を要する部分は境界層制御板の上下のずれです。 そして胴体と主翼の接合ですが、その前に胴体前部のエアインテイク部から下面を白FS17875(Mr.カラーC316)で塗装しておきます。(写真5)これは、インテイクベーンの陰になる部分が後で塗装できないためです。

写真5 機首下面の白色塗装



 さて次にエアインテイクです。インテイク部はインテイクベーンとインテイクダクトから構成されています。インテイクベーンの裏側は組立後の塗装が不可能なため、このステージで塗装しておきます。 それぞれ白FS17875で塗装し、マスキングしてダクトのリップ部を赤FS11136(Mr.カラーC327)で塗ります。乾燥後接着するとエアインテイク部が出来上がります。(写真6)

写真6 完成したエアインテイク部


 次にエアインテイク部の組み込みです。インテイク部をまず胴体側に組み込み、下方から主翼を組み込み接着します。この時の注意は、主翼に上反角が付かないように注意することです。 パンサーの主翼は4°の上反角を持ちますが、クーガの主翼は上反角がありません。少し下がっているようにも感じますが、水平です。組み込み終わった状態を機体下面から見ると(写真7)のようになります。

写真7 主翼とエアインテイク部を胴体に組み込んだ状態



 いよいよ機体の塗装です。が、その前に組み込んだインテイクと主翼に発生した段差を修正します。この作業で、インテイクリップ外面の赤色塗装の大半が剝がれてしまいました。白とガルグレーの塗装後に塗りなおしです。これで準備ができたので機体の塗装に移ります。前部胴体の下半分は既に白色塗装が終わっていますが、残る下面を同じ白FS17875で塗装します。 乾燥後下面をマスキングし、グレーFS16440(Mr.カラーC315)を吹き付けていきます。クーガの場合は内翼部の下面もガルグレーで塗装されているため、下面は胴体と主翼外翼部をマスキングします。また前胴部側面は塗り分け部がぼかしになっているため、マスキングテープの境界部を少し浮かせた状態で固定し、塗装しました。またこの時、水平尾翼も主翼同様に塗り分けます。 


 機体上下面の塗装が終わった後、剥がれたインテイクリップの修正塗装を行いました。さらにウィンドシールド前方部のアンチグレア塗装を艶消しの黒で、また主翼、尾翼の前縁部を腐食防止用のアルミコーティング塗装を行います。この塗料にはフィニッシャーズのファインシルバーを使いました。 これらの塗装が終わった状態が(写真8)と(写真9)です。(写真9)で下面に塗ったガルグレーの様子が分かります。そしてデカールを貼る前に機首に飛び出した空中給油用の受油プローブを取り付けます。(写真10)

写真8 塗装の終わった機体上面(この時点では水平尾翼は未接着)


写真9 塗装の終わった機体下面


写真10 機首に空中給油用受油プローブを取り付ける



 次に、残っているウィンドシールド、キャノピー、脚柱、車輪、脚扉、エアブレーキ、エンジン排気管、アレスティング・フック、そして主翼下の兵装なども塗装します。代表的なものを紹介しておきます。(写真11)がキャノピー、内枠を艶消し白で塗っています。 (写真12)がエアブレーキです。インストにはありませんでしたが、実機の写真を見ると写真のように塗り分けられていました。
(写真13)がパイロンに取り付けたサイドワインダー・ミサイルです。ミサイルはインスト通り赤で塗りました。

 写真11 キャノピー
 写真12 エアブレーキ

写真13 パイロンに取り付けたサイドワインダー・ミサイル

完成

 残るはデカール貼りとクリア塗料によるオーバーコート、クリアレッドとクリアブルーによる翼端灯の塗装、水平尾翼、脚、脚扉、兵装、等々の取り付け、そしてパネルラインへの墨入れです。キットの附属デカールは、少し脆くなっているようでしたが何とか使えました。一番苦労したのは機首から受油プローブまで伸びているシェブロンのマークを機体の曲面に馴染ませることでした。特に機首から受油プローブへ移るところは曲率の変化が大きく、マークソフターでデカールを軟化させながら時間をかけて貼っていきました。 またインテイクベーンのコーションマークは、キットのデカールが赤地に黒文字と間違っており、(赤地に白文字が正しい)手持ちのデカールから流用しました。オーバーコートはスーパークリアの半艶を吹き付け、少々艶が残るようにしました。パネルラインへの墨入れも部分的なもので、ウェザリングはしていません。最後にウィンドシールドとキャノピーを木工用ボンドで接着して完成です。
(写真14~17)

写真14 完成したVF-81のF9F-8


写真15 完成したVF-81のF9F-8


写真16 完成したVF-81のF9F-8


写真17 完成したVF-81のF9F-8



 最後に今回並行して製作したF9F-2と並べてみました。(写真18)今の時代の戦闘機に比べると、実にシンプルなのがいいですね。 実機もプラモも作りやすくできているようです。

写真18 F9F-2 PantherとF9F-8 Cougar



  Home>Grumman F9F-8 “Cougar” 製作記(Hasegawa 1/72)飛行機プラモデル製作

Vol.99 2016 November.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
           editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

プラモデル模型製作特集1

TOTAL PAGE