Home > スカラブ Mk.4(モノグラム 1/24) SCARAB Mk.4 (MONOGRAM 1/24) 車プラモデル製作

誌上個展

スカラブ Mk.4(モノグラム 1/24)
SCARAB Mk.4 (MONOGRAM 1/24)

by 田口博通 Hiromichi taguchi

  Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。 
 ビンテージ・ガレージは ビンテージカープラモデルの製作だけでなく、その独特の魅力を醸し出すビンテージカーが背景に持つエピソードにもスポットをあてています。 
どうぞあわせてお楽しみ下さい。

  2016年11月号から始まるビンテージ・ガレージ 第4シーズンは、国内外メーカーから発売されているビンテージレースカーを主に取り上げます。
 今月登場するのはモノグラムの 1/24 スカラブMk.4です。オリジナルは1960年代にスロットレースカーキットとして発売されていました。
 現在は簡単なシャーシーをつけたカーモデルとして発売されています。スカラブはこのキットが唯一で、人気が絶えず 再販を繰り返しており、現在でも3000円台で入手できる長寿キットです。


SCARAB Mk.4

実車について

 スカラブ車のカラーは、ライトブルーメタリックでカルフォルニアの陽光の下、車体が特に美しく映えるレーシングスポーツカーとして有名である。
 
 モノグラムがモデル化した スカラべMk.4は
1962年に、F1レーサーであったランス・リヴェントロウ(Lance Reventlow)の運営する Reventlow Automobiles Incのために、Tom Barnes と Dick Troutmanによる スカラブショップが、開発したレーシングスポーツカーだった。
 Tom Barnes と Dick Troutmanのスカラブショップは1950年代から南カルフォルニアでアマチュアとしてスポーツカーを作っていたといういわば「スポーツカーおたく」である。その彼らの作ったスカラブ・スポーツカーをChuck Daighが運転し 1958の Riverside 国際グランプリで優勝したというのだから凄い。また、1958SCCA National Championshipでも優勝している。

 そして、このカルフォルニアの小さなショップが2台の車をランス・リヴェントロウに販売したのである。
(写真) SCARAB Mk.4 実車



 ランスはイギリス生まれだが、ハンサム、知的、親が超金持ちという絵に描いたような金持ちボンボンレーサーでハリウッド社交界でも良く知られていた。
その理由は母がプア・リトル・リッチ・ガールと呼ばれたバーバラ・ハットン(スーパーマーケットチェーン「ウールワース」の創業者の娘)で、義理父が有名な俳優ゲーリーグラント(Gary Grant)。妻が有名女優ジルセントジョン(Jill St John 「 007ダイヤモンドは永遠に」のボンドガール)だったからだ。


 さて、スカラブMk.4のベースとなったのはスカラブのインターコンチネンタルフォーミュラで、Mk.4のデザインを担当したのはエディー・ミラー、製作を担当したのはフィル・レミントン(Phil Remington)と言われている。
 Mk.4は2座席のスポーツカーに見えるが、基本デザインはフォーミュラシャシーの上にオープンスポーツカータイプの軽量ボディをかぶせたものである。

 シャーシー構造はクロームモリブデン鋼によるマルチチューブラースペースフレームで、サスペンションはフォーミュラそのままのデザインだった。
 エンジンにはシボレーの215cu:inアルミ製V8エンジンを採用し、大幅な軽量化を果たしている。トラコ・エンジニアリングがチューンアップしたレースエンジンは、最高出力を標準190hpから300hpにまでアップされていた。
(写真) スカラブF1 フォーミュラ (1960年)
搭載エンジンはScarab 2.5リッター L4
ランス・リヴェントロウは1960年のF1レース6戦は これに乗って戦っている。

メーコン(Mecom)チームの塗装をしたスカラブMk.4  実車



 完成したスカラブMk.4は1962年秋からランス・リヴェントロウ自身がドライブし、実戦に参戦した。
しかし結果を出す間もなく、すぐ、ランスのジルとの離婚調停など 金銭的な問題により、1962年末でランスのチームは解散してしまうこととなる。

 Reventlow Automobiles Incは残されたレースカーをテキサス ヒューストンの石油王の息子John Mecom, Jr. に売却し、以後はMecomレーシングチームがスカラブMk.4を使いUSRRCに参戦した。
 ドライバーはフォイト(A.J.FOYT)で、1965年頃までUSRRCを走っている。USRRCにはMecomレーシングチームの他、シャパラルやロータス、シェルビーコブラ、フェラーリが参戦し、名勝負を繰り広げ、人気のあるレースシリーズであった。
Bridgehampton-1964 Mecomレーシングチーム
記録写真 引用



キットについて

  モノグラムのSCARAB Mk.4は1960年代のリリースで、スロットレースカーキットとして発売されていた。
スロットレースが廃れた後年に、簡単なシャーシーとタイヤ、コクピットを追加したカーモデルとして発売された。それでも 総部品数が30点に満たない簡単キットだ。
 今でも、スロットカー用のコクピットパーツとホイル部品はしっかりと付属させているのが このキットのまたしぶとい所である。スロットカーマニアには嬉しいキットであろう。

  箱絵


 下は主な部品で、車体は ライトブルーで成型されており、塗装せずとも 楽しめるようになっている。 シャーシーはごくごく簡単なものだが、追加されたコクピットのモールドは さすが、モノグラムだ。

(写真)3体に分割されたボディ
(写真)追加された コクピット
(写真)追加されたシャーシー

製作

ボディの塗装
 ボディは下部前後の部品を接着し、整形したら、すぐ塗装に取り掛かれる。 Mrカラーを調色し、ライトメタリックブルーを作り、吹き付けた。





 元がスロットカーキットだっただけに、後は、デカールを貼り、黒く塗ったコクピットを接着し、ライト部品を取り付けるだけであっけなく完成となった。 ウインドーは端面をライトブルーで塗っておき、手芸用ボンドで取り付けると、汚さずにすむ。


完成

 著しく低い車高でSCALABのフォルムを良く表現している。  非常に綺麗な車である。






スカラブ その後

 ランス・リヴェントロウは1963年にジルとの離婚が成立。その後はカーレースから撤退し 不動産事業にかかわったようである。1972年にコロラドのアスペンにスキーリゾートを作ろうとして、視察中の飛行機事故で死亡している。
 妻だったジルセントジョンは1971年に「 007ダイヤモンドは永遠に」に出演。1990年にロバートワグナーと再婚している。

 スカラブショップは、1962年末にランスのチームが解散後、Phil Remingtonなど主要なメンバーがキャロル シェルビーと合流。
 シェルビーアメリカンで シェルビー コブラ等にかかわっていく。シェルビーの中でスカラブの伝統は今日まで脈々と受け継がれていくのである。


(写真)シェルビー コブラ427 (モノグラム1/24)
 Mecomレーシングチームは譲り受けたスカラブの他、ローラT70などを使いながら、シャパラルやロータス、シェルビーコブラ、フェラーりなどと白熱のレースを繰り広げていく。
A.J.FOYTは327 ChevyエンジンV8に換装したスカラブMk.4で Nassauレースで2勝を挙げている。

1960年代は2座席レーシングスポーツカーの熱い時代だったのだ。
Daytona-1964 Mecomレーシングチーム
記録写真 引用 A.J. Foyt's Daytona winner


  スカラブMk.4の2013年以後の持ち主はスカラブ最後のワークスドライバーでもあったAugie Pabst で下にその雑誌の記事がある。写真では公道を立派に走っているようだ。
 
 Pabstは今でもスカラブを整備しヒストリックカーレースを戦っている。現エンジンはシボレースモールブロック改368cu:inで、最高出力は500hp。1960年代よりも更に出力アップされ、往年そのままのレーシングパフォーマンスを維持しているとのことである。
 さて、1980年代後半、キャロル・シェルビーと彼の周辺企業はシェルビー認可付きオリジナルACボディ及びシェルビー・コブラ・シリーズを(道楽的に)製作するコンセプト"Continuation Cars"(直訳:後継車)を立ち上げ、427S/Cコブラの復刻版を1000台以上生産している。

 21世紀になり、アメリカでは更にヒストリックカーレースとContinuation Carが流行してきたため、近年、シェルビーは25台以上のChevyエンジン搭載スカラブの復刻版レプリカを作り、販売をしている。
 入手できた幸運な人たちは スカラブやコブラといった往年のレーシングスポーツカーを今でもアメリカの公道やサーキットで走ることができるのである。
 さすが、車大国 アメリカ。奥が広い。 






ビンテージ・ガレージ バックナンバー
4th
シーズン
2016年11月号 第19回 マクラーレンM8A 1968(タミヤ 1/18)
  Mclaren M8A (TAMIYA )
3rd
シーズン
2016年2月号 第18回 ポルシェ356Aスピードスター (トミー 1/32)
PORSCHE 356A SPEEDSTER(TOMY 1/32)
2016年1月号 第17回 ブガッティT55スーパースポーツ(バンダイ 1/20)  
Bugatti model 1932 type 55 Super Sport (Bandai 1/20)
2015年12月号 第16回 フェラーリ 250 テスタロッサ(ハセガワ 1/24)
Ferrari 250 Testa Rossa (Hasegawa 1/24)
2015年10月号 第15回 シトロエン DS19 (エブロ 1/24)
CITROEN DS19 (EBBRO 1/24)
 
2015年9月号 第14回 フォルクスワーゲン カルマン・ギア 1963年型 (GCIクレオス 1/24)
 Volkswagen Karmann Ghia 1963
2015年8月号 第13回 メルセデス ベンツ 300SL (タミヤ 1/24)
Mercedes Benz 300SL (Tamiya 1/24)

2nd
シーズン
2014年12月号 第12回 オースチン ヒーレー 100-6 (レベル1/25)
AUSTIN HEALEY 100-SIX (Revell 1/25)
2014年11月号 第11回 リンカーン・フューチュラ(レベル1/25) 
LINCOLN Futura (Revell 1/25)
2014年10月号 第10回 メルセデス・ベンツ540K(モノグラム1/24)
MERCEDES-BENZ540K (Monogram 1/24)
2014年9月号 第9回 デユーセンバーグ・モデルSJ(モノグラム1/24) 
DUESENBERG SJ (Monogram 1/24) 
2014年8月号 第8回 ド・ディオン・ブートン (1904年型)(ユニオン 1/16)
DE DION BOUTON 1904 (UNION 1/16 )
2014年7月号 第7回 アルファロメオ2300 トゥーリング(1932)(ブラーゴメタルキット 1/18)
ALFA ROMEO 2300 TOURING(Burago Metal Kit 1/18)
1st
シーズン
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回 ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)


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