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特集 ザ リジェンド the legend

 彩雲 (田宮模型(タミヤ) 1/50)

  by 加藤 寛之




 『プラモ・ガイド 1966』(酣燈社)の「新キット紹介」に、このキットがある。「広く国産キットという点から眺めても最高の部類に入る優秀な」「近来にない傑作キット」と書かれている。表面は濃密な凸モールドに覆われ、動翼や脚が可動で、透明な胴体とカウリングを選択すれば透視モデルとなる1/50スケールの彩雲だ。それは日本のプラモが見本としていたモノグラム社の製品を凌駕する内容であったからこその評価だったが、そのモノグラム社はすでにアッサリとした表面と外観重視の製品へと転換しており、国内を見ても日本模型や小暮模型は日本的縮尺の1/50から1/48や1/72へと変えている時期でもあった。
長谷川製作所もF‐4やMig‐21に始まる1/72シリーズの発売を予告していた。実は田宮模型自身も小スケールを1/72で開発していた。時代は大きく変わろうとしていたのだ。つまり、あっと言う間に新世代キットの時代変わる直前に現れた、しかしそれにもかかわらず傑作であり続けたキット、それが田宮模型の「彩雲」だ。




 今回の製作に使ったキットは、「タミヤモデラーズギャラリー2016」で販売されたイベント限定品で、友人から譲っていただいたもの。今も限定販売されるということは、このキットの評価が依然として高い証拠といえる。よって、製品としては新品だ。金型も丁寧にメンテナンスされているようで、劣化は感じられない。しかもスッキリと透明な胴体が、左右両面入っている。これは魅力的だ。
私はこのキットを組むのは3回目だと思うが、今回は透明パーツとキットパーツを使いながら、表面モールドを活かし、さらに多少は面白みも加えて組むことにした。




 まず主翼から組み始めた。上翼パーツの後縁のフラップ部分が厚い。後端が丸く終わっているので充分には削れないものの、弦長に大きな影響が出ない範囲で裏面から削って薄くする。可動エルヨンは固定するので、ヒンジ部分を大雑把にプラ板で埋め、パテで均す。フラップは下げ状態で固定したが、キットは1枚板なので親子式ファウラーフラップに見えない。そこで分割線で深い溝を付け、腕力でもう1段階曲げる。2か所に細いプラ板を貼ってレールらしくする。当然、下面側は無視する。
主脚は可動をやめ、取り付け位置となる上面パーツの内面にプラパイプの輪切りを貼って台座にする。可動で組むと実機のように主脚が前へ突き出ないのだ。前掲『プラモ・ガイド 1966』の作例も主脚固定して、角度を改善してあるようだ。
主翼上下面を接着後、翼端を下面がせり上がったような形に加工する。下面の角度が変わるところにノコを入れて、上面に影響しないギリギリまで切り進める。そして腕力で持ち上げ、隙間にプラ板を挟んで固定し、なるべく狭い範囲で整形する。上に膨らみ過ぎた部分は削って均す。
エルロンを主翼に接着するときに迷った。実機はフラップを充分に下げると、両翼のエルロンも共に少し下がるというが、増加試作機を後方から見た写真ではそう見えない。そこで通常の中立位置で製作した。
前縁にあるスラットは開位置にした。キットは翼面との境に角があるが、これは模型的限界のため。ここは角を軽く丸めておいた。ついでに書くと、下げたフラップに合わせて水平尾翼の前縁を下げて接着してある。
実機ではここまでに述べた、フラップ、スラット、エルロン、水平尾翼の取付角のいくつかは連動しているのではないかと思うが、私には分らない。




 胴体はキットパーツを指示にそって組めばよい。この時代のキットにしては調整が少なくてすみ、優秀だ。透明な胴体内部側面にパーツを接着すると、接着剤や取り付け方法が見えてスッキリしない。そこでパーツの接着面と、その接着位置の外側も黒く塗ることにした。これで、その部分がまとめて黒くなるので、見苦しくならないと判断した。左右胴体パーツの接着は、合わせてから流し込みタイプを使って固定した。垂直尾翼は面を接着しないことで透明を維持した。胴体は3座のために中間が固定できない。座席間の上部にあるブロックを壁面に接着すると強度が上がる。これを強固にしないと主翼の上反角が決められない。一般的に主翼の上反角は胴体とあわせると微妙に弱くなりやすいが、胴体幅を決めることで上反角を望ましいところで固定できる。主翼と胴体の接着は、目立たないフィレット部分のみとした。  アンテナ柱やピトー管は、キットパーツを使った。その方が、キットの時代感があると判断したから。脚カバーはスッとのびた下部を少々細く削った。これで主脚を突き出した彩雲らしさが表現できる。脚カバー底部も直線的に整形した。最終段階で、キャノピーパーツを付ける。接着は水性ボンドなので強固とは言えないが、普通の取扱いには支障ない。隙間もあるがほとんど見えないので、気にしない。




 透明な胴体と動翼に変化をつけたので、塗装は軽い感じにとどめた。胴体の日の丸デカールは使えなかった。赤い色の下地の白が、向こう側から透けて見えてしまうのだ。いくらなんでも向こう側が白丸なのはまずい。そこでデバイダー(分りやすく説明すると、両足とも針のコンパス)でクルリと丸い傷を付け、中を筆で赤く塗った。昔からある古典的な方法だ。赤は隠ぺい力が低いので塗りムラが目立ちやすくて上手には塗れなかったけれども、まあOK。白丸よりはいい。  完成した姿は、さすがは傑作キットで面白み充分だ。ハセガワの彩雲のキットはもちろん素晴らしいが、この彩雲はそれとは価値のあり方がまったく違うプラモデルだ。田宮の彩雲は、模型としてのワクワク感がバツグンなのだ。


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