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特集 艦船、潜水艦、スペースシップ

   Uボート2隻 (ドイツレベル1/72)

by クラキン

 古くは「眼下の敵」、最近では「U571」・・・「潜水艦映画に駄作なし」と言われますが、Uボート映画の決定版は何と言ってもドイツ映画「DasBoot」です。
タイプⅦCのU96をモデルにUボートの全てをリアルに再現した傑作映画です。
 プラモデルの世界でUボートと言えばニチモ1/200を思い浮かべる方が多いと思いますが、バリエーションの豊富と出来の良さという点ではドイツレベルがナンバー1です。
初期の頃は中途半端なスケールで出していましたが、最近は1/144と1/72に統一してラインナップ化しています。



1/72ではⅦ-C、Ⅸ-C、Ⅸ-C/40の3種類
1/144ではⅦ-C、Ⅶ-C/41、Ⅶ-D、Ⅱ-Bなど、多くのキットを揃えています。
どれも素晴らしいキットで、Uボートマニアとしては全部揃えたくなってしまいます。
さて、今回ご紹介するのは1/72のVII-Cの「U-552」と、IX-CのU505です。
(2作共に昨年の静岡モデラーズクラブ合同作品展で「U遊倶楽部」から出品した物です。)




【タイプVII-C U552】

タイプⅦ-Cは第二次大戦全期を通して活躍したUボートの主力タイプで、1940年~44年までに655隻が建造されした。
艦体はシンプルな単殻構造なので、左右のバラストタンクや溶接構造の耐圧殻がむき出しになっています。


 艦としては全長67.1m/全巾6.7mでしたが、人が居住できる耐圧殻は全長50.5m/全巾4.7mしかなく、この狭い閉鎖空間に44名の乗員が何週間も生活していたのですから、その悪環境は想像を絶するものです。(航続距離はなんと16000kmもありました)最大潜航深度は230m。




 武装は、88mm艦砲220発、533mm魚雷14本、対空機銃1門というシンプルなもので、魚雷は貴重品でした。
従って輸送船に対する攻撃は相手方に駆逐艦や軽空母などの護衛が無い限り、浮上して88mm艦砲を使うのがメインだったようです。
魚雷は潜航状態で攻撃を仕掛ける時(相手方に護衛がついている可能性がある場合)にだけ使用したそうです。




完成写真は1940年12月から1942年9月6日までエリッヒ・トップ(1914.7.2‐2005.12.26)が艦長を務めた「U552」です。
赤いデビルマークが印象的です。
エリッヒ・トップ艦長時代に10回の出撃で30隻を撃破又は撃沈し、1941年10月31日にはアメリカ海軍の駆逐艦ルーベン・ジェームズを沈めました。
トップ自身は1940年5月5日~終戦までの間に通算で連合国の船舶35隻/197,460tを撃沈し、Uボート艦長の中でオットー・クレッチマー、ヴォルフガング・リュートに次ぐ第3位の戦績を残しました。
いわゆるUボートエースの一人です。
終戦とともに捕虜となりノルウェーの収容所に拘留されましたが、8月に釈放されました。
しばらくは漁師や建築家をして生計を立てていましたが、1958年にはドイツ連邦海軍に復帰し、少将まで昇進しています。
ドイツ海軍再建やアメリカ合衆国との連絡事務などの功績を賞され、ドイツ連邦共和国功労勲章大十字章を受章し、1969年末に退役しました。
2005年にズューセンで、91歳で死去しました。



 キットは全長93cm程のビッグサイズで、単殻分の溶接痕や非耐圧部分のリベット再現も生々しく、細部のディテールも申し分なしの傑作キットです。
パーツ精度も問題なく、大型キットではありますが、組み立てはスラスラと進みます。
潜望鏡は完成後も伸縮します。
やはり見せ場は塗装とウェザリングです。
これだけの大きさのキットでグレーの濃淡3色だけの塗装なので、単純に塗っただけでは間延びしてしまいます。




下地のシャドウ、塗装後のハイライト、錆表現を中心としたウェザリングに時間を掛けて立体感と疲労感を出します。
サビ表現はエナメルブラウンとタミヤウェザリングマスターの併用です。
フィギュアはドイツレベルから別売されている1/72Uボートクルーセットを使いました。
非常に出来の良いフィギュアで水兵、砲手、艦長、副長までタップリ2隻分が揃っています。
一部エッチングパーツを使用しましたが、ほぼ素組みです。



【タイプIX-C U505】

 Ⅸ型はⅦ型の発展ではなく、Ⅶ以前のIA型の発展型という全く別系統です。
Ⅶ型との大きな違いは艦体構造が複殻式なっていることです。
サイズも大型で全長は76.8mとⅦ型よりも10m近く長くなっています。
その分、燃料搭載量も増えて航続距離はなんと24000kmにもなっています。
無給油でドイツからアメリカ東海岸まで行って戻ってくることができる航続性能です。
武装もⅦ型より強化されており、533mm魚雷は22発に増強。
 連合軍の航空機(アベンジャーやカタリナ等)からの被害増大に対応して対空機関砲が強化されています。
但し建造数はⅦ型より遥かに少なく、54隻だけが就役しています。
日本海軍の呂号第五百潜水艦はこのⅨ-C型のU511を譲り受けたものです。
最大潜航深度は230m、乗員は44名です。



 完成写真は、数々の不運に遭遇し、映画「U571」のモチーフにもなったU505です。
4回目の出撃では英国空軍のハドソン爆撃機の奇襲を受け、当直士官1名が戦死するなどの甚大な被害を受けた上に、「艦の放棄」という艦長指示と「修理して帰港」という乗組員の主張が対立するという問題を起こしましたが、結局、洋上でのほぼ2週間掛りの修理の後、辛うじてロリアンに帰港し、「最も甚大な損傷を受けて帰還したUボート」の栄誉を受けました。
10回目の出撃では英国の駆逐艦に発見され、長時間に渡って爆雷攻撃に晒されたことが原因で艦長が拳銃自殺し、「指揮すべき艦が潜水戦闘中に自殺した歴史上初の(そして恐らく唯一の)潜水艦乗り」として記録されました。
そして最後は連合軍の待ち伏せに遭い、駆逐艦とアベンジャー等から攻撃を受け、自沈することなく鹵獲され、エニグマ暗号機などの独軍の機密情報が連合軍に渡る結果となりました。
現在はシカゴの博物館で修復され大切に屋内展示されています。



 キットは1m越えのビッグキットですが、Ⅶ型同様、組み立てやすい傑作キットです。
複殻式の特長である艦体全面のリベットもリアルに表現されています。

塗装のポイントはⅦ型とほぼ同じですが、新たな試みとして艦体下部に付着した貝殻と藤壺をパテと塗装で表現してみました。
グレーっぽく見えるのがそうです。 まぁまぁの出来映えです。



  艦橋のレーダーのみエッチングパーツに交換しています。フィギュアはⅦ型と同じものを使っています。
Ⅶ型と同様、機銃の銃口などは全てピンバイスで開口しています。




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