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特集 試作機、計画機、変な形

(Photo) 異形の実用機

by  コルディッツ
博物館実機写真

 「異形機」というジャンルは、分類する側の主観が大きく左右します。例えば ドルニエDo335をリンドバーク72のキットで知った時、或いはボーイング747を初めてテレビのニュースで見た時は、まぎれもなく「異形機」でした。
 ところが慣れ親しんでしまうと、「Do335」や「ジャンボジェット」のジャンルにピッタリ収まり、異形機とは思いもよらなくなります。
そこで本稿では、簡単ではありますが、異形機を「実際に飛行した、今でも異形と(私が)分類している機体」と定義しました。又実験機や概念実証機は異形が当たり前なので(笑)、実用機に限定してチョイスしました。
 実は「実用機」の定義もアイマイですが、とりあえずある程度の機数が生産されて、ユーザーの手に渡った機体とします。個人的な主観による分類とはいえ、 案外実用異形機が多いー特に農業用機でーのに驚きました。


            フリート 60K フォート 3643
 カナダ軍用機遺産博物館(マウントホープ、ハミルトン郊外)にて
 2006年4月撮影。WWⅡ中に唯一カナダで設計・生産された高等練習機。
 段差つけたタンデム式操縦席という近代性を見せながらも、主翼支柱と
固定脚というアンバランスさから、異形機に分類です。
 ウリは固定脚の上に手動の主脚引込装置をつけ、主脚上部のみを
引き上げられるようにして、訓練生に主脚引込の訓練をさせた運用です。
 固定脚の上部しか上がらないので、訓練生が操作を忘れても安全に
着陸できるという至れり尽くせりの練習機でした。



           ドルニエDo28 A-1 北海道航空 JA5115
 石川県立航空プラザ(小松空港そば)にて      2016年2月撮影
 単発のドルニエDo27を、そのまま双発にしたような機体で、事実初期型は
Do27と同じ胴体内部容積で、乗客は最大6名。大規模な設計変更をしない
双発化のため、エンジンの取り付けが1930年代のフランス機の如く異形で、
見ていて楽しくなります。



          ドルニエDo28 D-2 スカイサーバント 58+68
 ラッツェンーハノーファー航空博物館(ラッツェン)にて   2009年7月撮影
 初期型の胴体を長方形化して拡大し、またエンジンナセルの形状も変更
したもので、最大13人の人員を乗せることが出来ます。それでいながら
STOL性も優れ、このD型からスカイサーバントの名称が付きました。



           ブリストル170フレイターMk.31 VH-ADL
 オーストラリア航空博物館(モーラビアン、メルボルン郊外)にて
 2010年8月撮影。これまで博物館名を「国立オーストラリア航空博物館」と
訳していましたが、Nationalの意味を国立というより、国産又は国で使用した
とする方が良いようなので、変更させていただきました。申し訳ございません。
 イギリスのブリストル社が1945年に初飛行させた双発輸送機。最初は
旅客機として開発されましたが、機首の観音開きのカーゴドアを活かし、
最初から貨物機と生産され、英仏海峡越えの車輛輸送等に従事しました。
 展示機はオーストラリアのエア・エクスプレス社で使用された機体です。



                    カモフKa-26  D-HOAZ
 ドイツ博物館航空機館(オーバーシュトラスハイム)にて 2011年5月撮影
 ソビエトのカモフ設計局の設計・製造による2基のレシプロエンジンによる
ヘリコプター。西側に輸出されFAAの認証を取得した唯一の機体です。
 後部に様々なタイプのモジュールを取り付ける事が出来、軍民問わず
使用されました。



                  PZL M-106 Kurk
 ポーランド空軍博物館(クラコウ)にて          2011年5月撮影
 ポーランドのPZLが開発・生産した農業用機で、1973年に初飛行しました。
 コメコン(懐かしい!)内では農業用機の生産はポーランドの役割だった
ようで、多くの機体が開発・生産されています。機名はワタリガラスの意味で、
275機生産され東側陣営で使用されました。
 農業用機は、その用途から独特の形状をしていて面白いと思います。


      CAC CA-28 セレス VH-WOT
 オーストラリア国産機博物館(モーラビアン、メルボルン郊外)にて
 2010年8月撮影。CACはコモンウェル・エアクラフト・コーポレーションの
頭文字で、第二次世界大戦中はワイラウェイ練習機やブーメラン戦闘機
を開発・生産しています。セレスはワイラウェイを発展させた農業用機で、
21機が生産されました。オーストラリアは農業用機への需要が高いようで、
同国製造のトランスアビアPL-12エアトラックの異形ぶりは半端なく、実機の
写真を撮っていないのが残念です。


      スコティシュ・アビエーション ツインパイオニア XL-993
 王室空軍博物館(コスフォード)にて             2016年4月撮影
 単発のパイオニア連絡機を双発化した機体です。異形機を作る秘訣は、
単発機を双発化することなのでしょうか? 固定脚に主翼の支柱、3枚の
尾翼と古めかしいですが、不整地滑走路でのSTOL性に優れ、マレー危機
に参加しています。87機生産されました。




      ハンブルガーHBF320 ハンザジェット D-CARY
 ラッツェンーハノーファー航空博物館(ラッツェン)にて   2009年7月撮影
 世界で唯一の前進翼の実用機です。双発ジェットエンジンのビジネス機と
して47機製造されました。ドイツ空軍でもVIP輸送機として採用しています。



                  PZL M-15 BELFEGOR 0603
 ポーランド空軍博物館(クラコウ)にて          2011年5月撮影
 仇名のBelfegor(ベルフェゴル)は悪魔の名前とのことです。この特異な外観
からネーミングされたのは一目瞭然ですが、最初に見た時、何のために作られ
たのか、想像出来なかった複葉ジェット機です。答えは農業用機で、PZL社は
アントノフAn-2Rのライセンス生産と輸出を行っていたので、その後継機として
製作されました。
 1974年に初飛行し、1979年までに175機生産されました!農業用にジェット
エンジンは、やはり経費も効率も悪かったようです。展示機は最後の生産機で、
引き取り手がなく、博物館に寄贈された由。
 (ポーランド空軍博物館の英文ガイドブックに基づき記述しました)
 





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