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飛行機プラモデルの製作

艦上偵察機 彩雲 (フルスクラッチ 1/32)

by 愛知県在住 作者 清水 栄治




作品について
 この作品は2016年12月~2017年5月にかけて作りました。父親が大戦当時の実際のパイロットであった御子息の方から作成依頼がありました。当初、既成のプラモデルでの作成かと思いましたが話を聞いているうちにもっと大きなサイズを望んでいることがわかりました。いわゆるフルスクラッチです。以前に彩雲ではない1/48サイズのフルスクラッチはやりましたが、更に大きなサイズは経験がありませんでした。 ここはひとつ最大限の力を発揮しようと思い製作を快諾しました。期間の設定において過去の経験から6か月程度はかかると思いました。それには仕事をしながらの作業で週の内、休日が2.5日ありますが働きながらの作業でかなり集中した作業が必要となりました。




キットについて
 今回の製作について参考にしたのがハセガワ製の1/48彩雲と”世界の傑作機 彩雲“でした。幸いに傑作機彩雲には機体の詳細図面が載っており大変重宝しました。まず、図面の作成ですがこれは全て1/32のサイズに変更してコピーを取りました。材料は全てプラ版とプラ棒を使用しました。 今回の機体は大きなサイズなのでプラ材だけでの強度では不安があるため要所々に金属の補強を入れることにしました。胴体の中心部と翼の桁方向に3㎜の中空パイプの中に2㎜のステンレス棒を入れ込み強度向上と乾燥後のねじれや曲がりを防止することを考慮しました。




製作について

 まず主翼からですが、これは実際の飛行機のように桁と翼断面の合成になります。図面に従って胴体から翼先端に向かって2~3cm間隔で翼断面(0.5㎜プラ版)を作成します。
その翼断面に桁を貫通させる3㎜パイプ用の穴をピンバイスで開けてその穴にプラパイプを接着固定していきます。




 翼断面パーツには外周に1㎜のプラ棒を補強接着します。
これは後に翼板を貼る時に接着面積が多くなり強度が増すことを考慮しました。これで左右の翼の骨組みが完成です。




 次にこの骨組みに翼パネルを接着していきます。これは0.5㎜プラ版を使用しますが、プラ版をガラス瓶のR箇所に押し付けて局面の癖をつけて翼の骨組みに翼断面2スパン毎に接着していきます。接着材は全てハンブロールを使用しました。これは速乾性と接合強度の良さから選択しました。 翼は後に筋彫りとリベット打ちを行うために0.5㎜プラバンを2重に接着しました。翼下部を先に貼り、そこへ主脚格納庫を作りこみ補助翼とフラップの切断ができるように補強の部材を入れて翼を作りました。




 翼接着乾燥後、前縁と後縁部はやすりとサンドペーパーで削りだし成形しました。その後補助翼とフラップ部を切断してそれらを別パーツとして後で取り付け可能な部材としました。筋彫りとリベット打ちの前にサフェーサーを吹き付けます。 これはプラ版が真っ白で見づらいことと傷をカバーするためで、その後、筋彫りとリベット(0.4㎜ピンバイス、スッジボリ堂0.15㎜、ファンテックニードル0.15㎜)打ちを行いました。



 胴体も図面に従って各断面を1㎜プラ版で作り中心部を0.3㎜プラパイプで串刺しするように順次接着し、胴体の骨組みを作りました。ここでは水平と垂直を保つために補助として中心部と並行して1㎜の真鍮線を串刺しに通しました。これは接着乾燥後抜き取ります。 骨組みが完成後パネルを0.5㎜のプラ版で翼の要領で貼っていきます。ここも2重に貼りますが、コックピット部は4重に貼りました。これは後で胴体断面を全て切り取り、コクピット内を空洞にするため強度を保つことと、ひずみやねじれを防止するために行いました。





コクピット部は胴体内部の桁とリブを再現するためにパネルを貼りながら断面パーツを切り落としていきます。そのあとに桁とリブを1㎜のプラ棒で再現していきます。 ここではパイロット席の床をあらかじめ加工して定位置にはまるように作りこみました。次にコクピット内をエアブラシと筆塗りで塗装します。最後に胴体にサフェーサーを吹き筋彫りとリベット打ちを行います。






  翼の左右の接合は金属棒(2㎜ステンレス)を所定の角度にまげてプラパイプに差し込み瞬間接着剤で固定します。左右一体の翼は胴体に接着しますが、 それには胴体の下腹部を大きく切り取り、所定の位置に合わせるために簡易の定規で前後左右、水平垂直を調整しました。これでようやく飛行機らしくなりました。



 尾翼(水平、垂直)については日本の技術の素晴らしさがよく解りました。水平尾翼は胴体に固定ではなく2~3度可動できる機能で又垂直尾翼は胴体真上中心線から数度右に傾いています。揚力減退と機体の振動防止を考慮したのではないかと思われます。 ここでは尾翼の方向舵は全て可動とし、水平尾翼は片方だけ上げ下げ可動としました。垂直尾翼は傾けようとしましたが失敗が怖くてほんのわずかな傾きに留まりました。



 エンジンカウルは胴体の作り方と同じ要領で作成しました。先端曲面部はコンパスカッターで円錐台形を細かく切り出し0,5㎜プラバンを2重に貼り付けました。 乾燥後やすりとサンドペーパーで削りだしました。



 最後の難関になりましたがキャノピーは全体を”朴”の木で木型を作り透明プラバンでヒートプレスしました。
これには0.4mmと0.2㎜の選択肢がありましたが、プラバンを家庭用コンロに当て軽くあぶり、柔らかくなりとろけだす前に素早く木型に上から抑え一機に下に引き下げる作業が必要でした。厚さは0.2mmが適切でした。プラバンは熱で一旦収縮し柔らかくなりますが、それを型に押さえつけて引き延ばすため、伸びようとしますが反対に冷却されて縮もうともします。
このために厚みが変化したり溜まりができたりします。ここでは約4日間地獄状態でした。ポイントはプラバンの温め具合と木型を絞り込むスピードです。必要数は8パーツですが失敗作がそれの10倍くらいはあり確率で行けば10%程度でしょうか。ここでは搭乗用窓は全て可動状態にする加工を施しました。





 エンジンはハセガワ製の”紫電改”を流用。プロペラも流用しましたが長さが足りないために中央部を切断しそこに長さ0.5㎜のプラバンを挟み長さを延長し後にペーパーがけして仕上げました。スピナーは0.5㎜角棒を積層にしてやすりで削りだしを行いました。
主脚は0.5㎜プラ棒を削り0.4㎜にして中に0.1㎜の真鍮線を補強のために入れました。機銃、アンテナ支柱、燃料タンク、着艦フックなどフルスクラッチしました。



 塗装に入りますが、デカールは使用せずに、まず、国籍マーク、主翼の識別帯、尾翼の機体番号は白色で下地塗装します。乾燥後黄色塗装、日の丸は縁をマスキングして赤色塗装、機体番号は一文字ずつ数字をマスキングテープで切り出して白色下地に張り付けていきます。 国籍マークと識別帯塗装後それらをマスキングします。その後機体下面色をサラッと塗り筋彫り部をこげ茶色でライン引きし、再度機体下面色を塗ります。ここでは筋彫り部の色が浮き出るようにグラデーションを付けます。その後、各パネル毎に白色を10~15%混ぜた色を塗りパネルにもグラデーションを付けます。



下面色乾燥後下面全体をマスキングして機体上面色を下面と同じ要領で塗っていきます。ここではキャノピーを機体に固定しガラス面をマスキングテープとゾルでマスキングを行いました。 機体の塗装が終了し乾燥後全体に艶有クリアー(ガイア製)を吹き、艶の調整と塗装段差の目隠しを行いました。最後に艶消し85%程度のクリアーを塗装して完了です。





 主脚の取り付けには前後左右の角度が決められており、その角度を確保できるような定規を作り、それにテープで仮固定し主脚根元を接着剤で固定しました。 アンテナ張線は極細の伸ばしランナーを作りエナメル塗装後瞬間接着材で固定しました。後は各補助翼、方向舵、燃料タンクを取り付けて完成です。



全体をとおして
 大変な作業となりました。当初の予定ではリベット打ちは必要最低限。主翼の補助翼、フラップのみ可動。キャノピーは固定でした。しかし作りこんでいくうちに機械的な機能が理解できたことや設計技術面での興味がわいてきて本物に近づいた形を再現してみたいとの思いが募ってきました。 これは必然的なことで欲望に任せて作業を進めてきました。フルスクラッチでは失敗はつきものですが今回の作品ではそれがほとんどありませんでした。約6か月間無我夢中でしたが疲労感はあまりなく、充実した達成感のほうが大きく感じられました。手前みそながら全体のフォルムと特にキャノピー関係はうまく表現できたと思います。



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