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ミグ MIG

MIG-21C フィッシュベッド (ハセガワ 1/72)

by  田口博通 Hiromichi Taguchi




 少年時代から いつかは作ってみたかったハセガワ ミグ-21Cフィッシュベッドを遂に作りました。
 この1966年リリースのMIG-21Cはハセガワ1/72世界のジェット機シリーズの2番手としてファントムの次に登場したスケールプラモ黎明期のキットです。
 モデルアート1968年2月号の表紙と製作記事が掲載されており、それ以来の憧れのキットでして、今回 この号を取り出して座右において作りました。皆様も 雑誌掲載の製作記事のように作りたいなと感じたことが きっとあるのではないかと思います。

 右の写真は、1966年の航空情報プラモガイドに掲載された 1/72ジェット機シリーズ開始の告知です。当時はハセガワが「長谷川製作所」だった時代でした。
No.1 F-4ファントムⅡ 4月発売予定
No.2 ミグMIG-21 5月発売となっています。
 国産プラモデル1/72でジェット機がシリーズ化して発売されるのは初めてのことです。
少年時代に「このシリーズを全機作りたい」という大志というか、もはや妄想をいだいたのも 懐かしい思い出であります。
 1966年航空情報プラモガイド 広告ページから




 このハセガワの1/72 MIG-21Cは 今では名物キットと称される存在です。オールドモデラーには良く知られているように、実は、実機には無い胴体のエリアルールが施され、胴体のウエストがくびれ、ヒップが柳腰になっております
 ですから、このハセガワMIG21の胴体のラインはめちゃカッコイイのです。特に側面から見た時に、反射ラインがなまめかしい曲線となり、まるで良き60年代の米空軍機を思わせます。
 対して、エアフィックスのMIG21Cの胴体はずんどうで(外形ラインを重視するAFとしては当然か)、カッコ悪く感じたものです。
 1960年代の事ゆえ 鉄のカーテンの向こう側の赤い国の情報はベールにくるまれ、CIAかジェームスボンド以外知らぬこと。 ましてや 1961年ツカノエアショーで初めて姿を見せたソビエトの最新鋭戦闘機とあっては、日本には実機資料など全く入ってこない時代です。長谷川製作所もおそらく少ない写真からフォルムを割出し、苦労して設計を進めたのでしょう。
 資料不足がもたらした結果でしょうが、超音速を突破するためにMIG-21もアメリカの最新エリアルールの技術情報をスパイが盗乱して適用したうんぬん なんて 当時の少年は単純に信じておりました。

胴体ラインがエリアルールでくびれていて、カッコイイ!



 その本当の真実が明らかになったのが、モデルアート1970年3月号ライバル登場です。 そのページには「A社とH社の正面上から見た写真」が並びまして、少年の純真な心には酷な真実の開示でありました。  で、長谷川製作所謹製MIG-21キットは「買いたいリスト」から「いらないリスト」へと一気に扱いが急降下してしまいました。その後、1988年にハセガワからはカタログ落ちし、1990年にフジミから72 MIG-21の決定版シリーズが登場したことによって、忘れ去られたキットになっておりました。





 長い前置きでしたが、ディテールやフォルムを語っても、全く意味が無い事ゆえ、とにかく少年時代の憧れのままに作ってみたいと思います。

 現代に作ろうとすれば 考証派には噴飯ものでありましょうが、このくびれた胴体のラインがハセガワMIG-21Cの最大の魅力で、現代における「存在意義」といっても過言ではないでしょう。
  このハセガワ1/72 MIG-21Cは幸いなことに最近、MIG-17とコンボ箱で再販がなされ、入手が可能となりました。ご興味のある方はぜひご一緒に作ってみてください。


 右は発売初期のキット箱絵です。赤バックにレッドスター機番37の離陸する姿が描かれており、1966年発売当時は斬新なデザインであったと思われます。
下は 今回使ったキットの箱絵で、同じアングルで同じ構図ながら、エジプト空軍機が離陸する姿が描かれています。
 主要パーツは サンド色でモールドされており、ディテールはラフですが、翼前後縁は薄く仕上げられています。
 
箱絵


主要部品

製作

 前脚式ですので、胴体前部にオモリをつめこんで左右を接着。胴体と主翼、尾翼を接着すれば基本形は完成です。コクピットは床もなく、ヘッドレストは胴体と一体になっています。  機首エアインテークコーンが小さいですが、無視しておきます。機首と主翼前縁ストレーキには胴体と隙間ができるので、パテを使いながら接着継ぎ目を整形し、サフェーサーで表面を整えておきます。




 ガンメタルで下塗りし、その上に、Mrカラー8番シルバーをムラ気味に吹きました。 コクピットは筆をつっこんで黒く塗り、これで塗装は完了。




 キャノピーはキットの塗装ラインのモールドは無視し、実機写真をみながらマスキング後、艶消し黒で下塗りし、8番シルバーを筆塗りしました。実機ではキャノピー後部にも小窓が2つありますが、これもあっさりと無視します。
 デカールはどうしてもソビエト機のレッドスターにしたかったので、適当に他キットから流用しました。
 しかし、完成するとキャノピーの下枠が曲線で実機とイメージが違い、かっこ悪いのです。直線のスジ彫りを入れて袴を直線に見せようとしても、どうにもなりませんでした。



完成したもののキャノピーのハカマが丸く イメージがMIGしていない。



 というわけで、一念発起、キャノピーをとりはずし、下のハカマの部分をやすりで直線にざくっと削り落としました。
 胴体と合わない部分をパテなど使いながらやり直し、面相筆でシルバーを補修塗りしてやっと完成です。
下ハカマの曲線部分を直線に削り落とします。




面相筆で胴体周囲と共に補修塗りをして完成

完成

 なにはともあれ、プラモデルは完成するとその喜びもひとしおです。凸ラインで、ディテールは荒く、各部も実機とは違う所が多いのですが、遠目にみれば、ミグ21です。
 ピトー管とアンテナを金属線に置き換えてありますので、ソビエト機らしく一見シャープに見えます。
 このハセガワMIG-21Cはプラモデルとしては見事に「MIG-21のイメージ」を再現しているのではないでしょうか。
 
 20年前でしたら、フジミの1/72決定版は作れども、まず、このハセガワMIG-21Cには手を出さなかったことと思います。
 偉そうに言ってますが、要するに、自分自身が精密と考証にかぶれた時代には見向きもせず、許容範囲が広くなった最近になって ようやく このキットを作る意義を見出し、やっとモスポールから取り出してきたという訳です。

 前世期の精密と考証を追ったプラモデルのトレンドの流れの中で翻弄されつつ、このキットを作ろうという気になるまで50年の歳月を費やしたといえるかもしれませんね。








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