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飛行機プラモデルの製作

 X-29A(ハセガワ 1/72)

  by 出戻 十三浪  Demodori Tomio




 X-29Aは説明書によると1985年7月の発売。焼けた感熱紙の値札を凝視すると、今は亡き新宿「カメラのさくらや」で定価600円のところ420円で買っている。 買ったのが何時かは思い出せないが80年代の内だと思う。30年ばかり積んでいたことになる。


 未完成病の病み上がりなので、ハッタリのディテールアップくらいはやるけど、ダイキャストモデルレベルで作る方針だった。
 また、デカールのそこここに茶色い染みが出来ていて我慢出来ず取り寄せた。デカール400円+小為替手数料100円+封書82円だった。

製作について

画像検索で相当写真が集まるので資料には困らないだろう。
 翼-胴はイマイチだったが総じて合いは良い。
ただし、
(1)スジボリはシャープだが浅いから、接着部はヤスリ掛けに備えて彫増しておく。
(2)サフ埋め時はスジボリをマスコルやテープで養生しておきたい。


(3)説明書の5コマ目の主脚庫の「縦の仕切りA13」が問題。整形を考えて先に接着した。が、「左右主脚柱及び基部C4」の接着が実は先なんである。

 気付いたのが「縦の仕切りA13」のサフ埋めサンペ掛けの後だったのでガビ~~ン!「左右主脚柱及び基部C4」の中央、「縦の仕切りA13」に挟み込まれる部分を切り落とせば(3分割して真ん中を捨てる)、無事に取り付けられることが判明してホッとした。


(4)インテークの縁の銀塗装
 銀を塗ってマスクして下地塗装をしたら、銀を隠蔽しきれなかった。マスクして銀を吹くか、メタルックか銀を塗ったストライプデカールを刻んで貼るといい。
 なお、実機のインテークとベーンは、横から見てキットよりもカットの角度が急に見える。
(5)ピトー管の付いた機首先端は合いがイマイチなので、先に胴体に接着して整形すべし。ピトー管を切り離して後付けするか悩んだ。幸い最後まで折れず助かったが、切り落とし取付孔を開けて整形、ピトー管は自作して後付けが正攻法だろう。

ディテールアップについて

(1)コクピット脇両側にあるピトー管を自作。F-4のタオルバーアンテナを刻んだもの。基部を銀で塗って置くべし。忘れてしまったので、銀のストライプデカールを刻んで貼って見た。接着強度が出ないが触んなきゃいいのだ。
(2)機首下にある全温度センサー?をピトー管と同様に作る。
そばにある円形のルーバーも再現すると引き立つだろう。




(3)機首ピトー管横にベーンがモールドされているが下にもあるので自作か流用で取り付ける。
(4)射出座席のマーチン・ベーカー IRQ7AはF-104S用と似ているので、モールドがマシなハセガワF-104Jの余剰部品に変えてみた。
(5)フィギュアを乗せるとグッと感じが出るのでハセガワ 1/72 アメリカ空軍 パイロット & グランドクルー セットから持って来た。飛行服はカーキイエロー。

(6)脚にブレーキパイプの追加と脚扉の作動稈など
 脚扉が内側にあり中央隔壁を中心に庫内がよく見える。配線など再現すべき。F-4Kの首脚から作動稈を切り取って、脚扉の作動稈を表現。また、扉中ほどにも作動稈が見えるので、ジャンクからピトー管を拾い、切り詰めて表現。
 
(7)インテークと胴体の間のステーを自作。
(8)キットには主翼下面にエルロンのバルジがズラリと並んでモールドされているが、実機には外翼にバルジはなく作動稈が剥き出しになっている。また、フラップのフェアリングは後端がなくゴツイ作動稈が剥き出しになっている。が、自作は断念。

(9)機首左右側面にある棘状のものはAOAセンサー。機首側面に貼るライン(のデカール)と被るので、虫ピンの頭ででも作り変えることをお勧めする。もちろん、私はデカールをズラして貼った。
(10)X-29は翼端灯や尾灯が見当たらないが、胴体上下に衝突防止灯があるのでレジンパーツを奢る。上部の衝突防止灯は箱絵のように中心からズレているので、モ-ルドは削り取って整形。また、背部前方にも涙滴型の透明なランプがあるので再現。



(11)キットには表現がないが、グレアシールドにはHUDがあるので投影レンズと投影板を付ける。レンズはウェーブのレンズセットを使うが裏に銀を塗り表にクリアー緑を塗ってみた。レンズは、グレアシールドにピンバイスで孔を開けて嵌め込み接着した。


(12)垂直尾翼基部にはエアスクープがあるので、胴体貼り合わせ前に加工して穴を開ける。
(13)ノズル内部のモールドが淋しいので、ノズルと胴体側に穴を開け、胴体側にフジミF-4のノズルから切り出したアフターバーナー部を取り付け奥行きとディテールを表現。

 

塗装について

注意すべき塗り分け(つまり、やらかした) 風防のマスキングについて
(1)ノズルパーツの基部は胴体の一部で白いので、全体を黒鉄色で塗らないこと。なお、保存機はエンジンを外しているので胴体末端が白になってる。
(2)第1風防の枠のうち、下側は艶消し黒である。下地の黒を塗ったら枠をマスクしておくべし。なお、白く塗ってしまった枠のリカバリーには、余った古いデカールの防眩塗装部の凹部を曲ストライプ状に切り抜いて貼ってみた。
(3)主脚庫の天井部分は黄土色っぽいジンクロで内壁は白。首脚庫の内側は銀色である。漫然と白く塗ってしまった。
 カット済みマスクを通販で購入。送料込みで300円弱である。曲面に合わせるためにマスクが左右割になっているので、合わせ目には薄めたマスコルを流している。
 なお、第1風防は裏面をコーティングポリマーとモデリングワックスで裏面を磨いてから胴体に接着した。さらに、周囲をテープで養生し黒を流した後、サフで隙間を埋めサンペ・コンパウンドで仕上げてからマスクした。


全体塗装について
 透けやすいラッカー塗料による全面艶有白というのは下地の影響を受け易く難しい。
(1)サーフェーサーを吹く
(2)ベースホワイト・白サフ・ファンデーションホワイト・艶消し白・クリアーを捨てて顔料を濃くした白などを吹く。
(3)艶有白で本塗
今回は、(1)を白サフに灰サフを混ぜてベトナム迷彩の下面白程度にしたものを(2)はベースホワイト、(3)は今は亡きモデラーズのスーパーホワイト(積みスプレー!)の中身を取り出して使った。

 
(1)のサフを吹いたが、継ぎ目の灰サフがなかなか隠蔽できず往生した。第2風防の下塗り黒はこれを吹くと白くなったので、もう少し暗く調色したサフを全体に吹いた方が良かったかもしれない。また、明るい艶消しサフは隙間や傷を目立たせないので、艶有白で本塗したら胴-翼に大きな隙間があって息が止まった。
(2)ベースホワイトで更に白くする。スプレーがあったので、中身を取り出して少し薄めて吹いた。
(3)は上述のスーパーホワイトだが、X-1で味をしめたのでクレオスのリターダーマイルドで薄めて吹いてみたらいい感じにツヤツヤに出来た。
 
デカール貼りについて
 曲面に長いデカールを貼るので、やはり微妙に辻褄が合わないので仮合わせをすべき。
 また、デカールの縁の透明部切りは必須。
 デカールを定着させるためには、入り組んだところや角度が急な部分が目立つので細い綿棒や先の尖った綿棒が必要。

(1)カナードのライン
 デカール1枚で上下を挟むようになっているが、嫌な感じがしたので上下に分割して縁を切った。カナード前縁にスジボリがあるのでそれに沿って貼ればよい。ただ、パーツに当ててみると意外に迷ったから、ドライフィッティングで向きを確認してから貼るべし。
(2)首脚扉の注意書きと脚扉裏・主脚柱の銘板追加
 本来なら縁切で3分割だが、周囲だけ切ってオシマイにしてしまった。扉の裏側には銘板らしき黒や銀の四角が見える。黒や銀の余剰デカールを刻んで貼った。白文字の注意書きデカールを重ねれば完璧だ。
主脚扉の内側、主脚柱にも銘板があるので余剰デカールを刻んで貼って見た。
 


(3)機体裏のライン
 機体裏は胴体後部から主翼に掛けて3分割されている。片側ずつやって調子を見たり、養生しよう。
 まず、胴体裏側のラインから貼って見た。このデカールの先端は翼のバルジの手前で終わる。イマイチしっくりこないがこんなものか。バルジに貼るデカールは後に回す。
 先に翼裏にラインのデカールを貼る。デカールの先端、翼の前縁に接する部分は翼の上面に向けて巻き込む形にデザインされている。そのまま貼って見たら、フィルムが硬くてデカールソフターを使っても上縁に巻かず定着しなかった。「バッキャロー」と無駄に強力なモデラーズのデカールフィットを使ったら溶けて表面を汚してしまった(はい、ソフターで薄めるべきでした)。
よってデカールの先端の矢印状の部分をすっぱり切り落とした方が良いだろう。翼前縁がシャープなので、デカールの切れ目が目立つことはあるまい
 最後に、バルジにデカールを貼ったが、曲面なので表面に馴染まないし辻褄も上手くない。ソフターも使ったが合わなかった。蒸しタオルや蒸し綿棒で合わせるのかもしれないが妥協。
 更に、機番2003を貼る。で、残りの片側で繰り返すと。追加として、機体裏に四角く黒く見える部分があるのでストックデカールから切り出して表現(本当は、穴が開いている)。

(4)機体の表のライン
 片側ずつ貼っていく。
(あ)主翼のラインから貼ってみる。ビチャビチャと翼表面を筆で濡らし、台紙を慎重に置いてデカールをさらに慎重にスライドさせて貼る。
(い)側面のラインは機首側から貼った。
 ビチャビチャと機首から側面まで表面を筆で濡らし、台紙を慎重に置いてデカールをさらに慎重にスライドさせて貼る。機首上面の曲面には馴染みが悪いのでマークソフターを使い、綿棒を使って歪みを側面に逃がしていく。歪みは境界層分離板の陰の機首側面に逃げていくことになる。機首上面で右左のデカールとの間にわずかな隙間が出来てしまった。これは、古いデカールの赤い部分を刻んで貼って埋めた。次に胴体側面を貼った。続いて境界層分離版に貼ったが、機首と胴体のラインを良い感じで結んでくれた。だが、しげしげと見ると機首側面の赤ラインが痩せてしまって繋がりが悪い。フチ切りの時に赤ラインに切り込んだようだ。これも古デカールの赤ストライプ部を刻んで貼ってみた。 
(5)機首
 一晩養生してAOAセンサー上の注意書きをストライプの紺の上に貼る。次に、グラマンマークを第2風防の下に当たる胴体に貼る。
 そして、防眩塗装の黒デカールを貼る。艶消しクリアーを吹いておいたのだが、裏にクリアーが回っていて台紙の一部に水が滲み込まず、剥がそうとしたら千切れてしまった。
 艶消しクリアー(に限らないが)をデカールの上に吹く場合は台紙の余白を十分確保すること、裏に回らないようにデカールを置く台を大きくすることが必要なようだ。
 もっとも十分に水に浸していたら、台紙にくっ付いていた部分もノリが溶けて剥がれた。短気は損気である。
 一部の欠けてしまった分は、古デカールを刻んで埋める。
 第2風防をコーティングポリマーとモデリングワックスで磨く。終わったら、パイロット名のデカールを貼っておく。


(6)注意書きの追加
 実験機のせいか注意書きが目立たないが一部の記録写真では見られるので何枚か貼って見た。

 
(7)垂直尾翼
 デカール貼りでは持ち手が残るように貼る順番を考える。垂直尾翼を残していたので、ここが最後である。「X-29」と「DARPA」を左右に貼ってオシマイ。
 と思ってたら、垂直尾翼基部にあるアウトレットの内側に銀を差していなかったことに気付き余りデカールにやや燻んだ銀を塗り、刻んで貼り付けた。

 最終組み立て

(1)コクピット周り
 パイロットフィギュアの手に操縦桿を接着、邪魔になる下の部分を切り落とす。シートをコクピットに接着する。フィギュアを座らせて風防と仮組するがシックリしないので、お尻や腿を削り足首を切り落とし、風防内枠を外したら漸くちゃんと風防と合った(オリジナルのシートなら大丈夫?)。で、フィギュアをシートに接着。接着剤の溶剤が飛ぶのを気長に待つ。自作したピトー管をコクピット脇左右に瞬着で接着する。
 裏返して、
(2)機首ピトー管の裏に、用意した垂直ベーンを接着する。
(3)首脚周り
 自作した全温度センサーを接着する。次に脚扉を接着する。白く塗った極細プラ棒を最前部に接着し、脚扉作動稈を表現する。次に首脚を接着する



(4)主脚を接着する。次に脚扉を接着するが角度に注意。ま、脚に当たるまで開けばいい。自作した脚扉作動稈を取り付ける。
(5)養生した後、機体を表に返してまた、折ってしまった背部のアンテナを自作、接着(実機ではない時期もある)。


(6)カナードの取り付け 
「差し込めば止まるべ」と思って、事前に仮組したら片側が最後まで差し込めない。しばし悩んで「軸が長すぎて突っ掛かるのでは」と思い付き、軸を詰めた。詰めたら、何故かユルユルになり呆然(受けの穴が奥にあり、そこに軸の先が上手く入っていなかったのだろう)。
緩い方にだけ、取付穴の内側に面相筆でGクリアボンドのラッカーシンナー割りを塗ってカナードを留める。

(7)胴体側の縁に面相筆で接着剤を塗って第2風防を機体に接着、の積りだったが汚すのが怖くなって載せるだけに。

 
 キットのパーツ数は36だが、使ったのはわずか30個だけ。多少手を入れたし並行製作もしたが3か月も掛かってしまった。
 ま、「素組でいいや」「裏は見ないことにする」とか思って始めダラダラ作っていると、だんだん実機のディテールに詳しくなったり気づきがあって「アレもすればよかった、これも出来たのに」と後悔することになる。プラモ作りは拙速を尊ぶか、ジックリ行くかの2極なんだろう。小生はプラモについてはどうやらジックリ型らしい。

 さて、X-29の組説では数機のジェット機の平面図を並べ、翼型を比較している。それに倣って手持ちの超音速機を幾つか並べて終わりとしたい。
 X-1(スパンの短い極薄直線翼)、F-100D(後退翼)、ファントムFGR.2(尾翼付き切り落とし三角翼)、X-29A(前進翼)





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