　ハリケーンMk.Ⅰ(エアフィックス　1/72)

　　by 加藤　寛之

　何年か前、本Web誌に「ハリケーンMk.Ⅰが欲しい」と書いたのだけれども、今回はエアフィックスから発売されたMk.Ⅰを作る。羽布張り主翼が魅力のタイプだ。
　主脚周りやコックピットのパーツは多すぎるというほどではないが、現代のキットらしく再現度は上がっている。

私は長い年月に亘って飛行機プラモデルを作っているので大丈夫だけれども、小学生では難しい組み込みもある。簡素だけれども子供でも組めるパーツ構成だったレベル・ファイターシリーズの時代のキットと、そこが違う。私は簡単なほど好きだが、贅沢はいえない。

　主翼全体の羽布表現は、なかなか感じがいい。胴体の羽布張り表現もいい。
リブに羽布を張ったらどうなるかというと、これは傘を広げた状態がよく似ている。骨と骨の間の布はピ～～ンと張っているが、骨が曲線を描いていれば少しだけ窪む感じ。だから主翼パーツはリブの間にごく軽いくぼみがある。一方で骨が細かい胴体はパンパンに張った感じで、窪まない。ともにイイカンジだ。では、翼端はどうなるのか。これは『世傑』のような資料本で写真を見て欲しいのだけれども、肝心なことは骨の間が膨らむことはない、ということ。これらは羽布張り構造であれば、例えば日本の九□中練習や九△式水偵･･といった機体でも同じようになる。このキットは、“ここがチョットなぁ”だが、まあいいや。

　と、いうことでキットの主翼表面の羽布の感じは良いのだが、なんとも後縁が厚い。すごく厚い。加えて上下のパーツの形に微妙なズレもある。上下を接着して固まったら、とりあえず前縁から翼端、後縁まで平面形を整える。当然、後縁はさらに厚くなる。それからガリガリと後縁を削り上げて薄くみせる。下面が荒れるが気にしない。完成して置いたときに下面後縁のキズが見えるはずはないからＯＫなのだ。翼端は見なかったことにすればよい。

　胴体へと繋がってほしいフレット後縁は、モグモグとした不整合で、こりゃあイケナい。ここは実機がどうかということよりも、プラモデルとして見栄えがよければＯＫとする。フレットが胴体に馴染む形は機種によってさまざまなのだけれども、特定の機種がどういう形だったのか知っている人は少ない。だから、そこにあるプラモデルが綺麗に整形してあればよいのだ。

　胴体の羽布表現は充分にイイ感じなのだが、どこか全体が弱々しい。どうやら胴体が主翼後縁付近で最も太くて前方にシボリ気味のためと、キャノピーの下あたりのふくらみが僅かに足りないＷ効果のように感じる。実機はコックピット辺りの平面形が最も太くかつ平行だと思うのだが、まあいいか。

　でも、さすがはエアフィックスで凄い部分がある。キャノピーの幅が、前が狭く後ろが広くなっているのだ。分っちゃいるけど、72サイズでちゃんと作っているキットは少ない。古～いエアフィックス24サイズのハリケーンはもちろんちゃんと作ってあったが、72サイズでやってくれたのはうれしい。前上方から見た形が、実にそれらしい。いいぞ、エアフィックス！
　水平尾翼は、特に翼端の厚みがもの足りない。もしかしたら厚いとヒケが出そうで、承知のうえで薄くしたのかもしれないのでＯＫとする。垂直尾翼はちゃんと左に振っている。これで垂直尾翼前縁に“羽布張りらしさ”が加わればずっと良かったのだけれども、それも贅沢な言葉だ。

　主翼前縁の機銃口は、ちょっと凹んでいるだけ。開けたい人は開ければいいが、上に赤いガムテープを貼った状態に作るのならばそのままでいい。そういえばレベル・ファイターシリーズのハリケーンは機銃口がなくて“手抜き！”と思ったのだが、これを再現していたのかもしれないな。
　細かいことをブツブツと書いたが、脚以外は実機重視でなくプラモデルとして組みやすくしているし、ポツポツと組んでいけば、そのうちに形になる。私としては充分にＯＫなキットといえる。

　キットの箱の裏面が、カラー塗装図になっている。細かな塗装指示ではないが、しっかりと左右側面が描かれていてイイ感じ。Mr.カラーで塗る。上面色は、もうすこし緑色とうす茶色がハッキリしていた方が好きだが、まあＯＫだ。主翼前縁の着陸灯は透明パーツになっており、円く窪んでいる内側を銀色に塗って再現する。翼端灯は塗装。いつものように“一瞬、透明に見える”塗り方で済ませ、透明プラへの置き換えなどしない。

　カルトグラフのデカールはちょっと厚めだが、充分にいい。私は細かいものを貼らない。だって、資料本などでは見えないもの。どこまで貼るかは自分で決めればいいことだ。

　完成して眺める。充分にいい。
　こうなると、ハセガワの古いスピットファイアで初期型も作ってみたい。この２社の２つを詰め合わせて２枚ペラと３枚ペラも選べて通常デカール＋特製デカールの「英国守護神セット」なんて発売されたら、英国人なら２セットくらい買っちゃうだろうなぁ･･･と妄想するのである。

じゃあ、私は･･･日本人かどうかに関係なく高いと買わないな、と思うのであった。

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